第54話 幕間1
あの日。
帰宅して何時ものようにパソコンを立ち上げると、悲惨なニュースが目に留まった。
「靖国神社で、爆破テロか……」
被害者は、十八才の少年。この春、工業高校を出たばかりだと書かれていた。
まさに、これからの人生なのに。さぞや無念だろう。ご両親も気の毒としか言いようがない。
検索すると、続報があった。
「母一人子一人の母子家庭か。辛すぎるな」
とは言え、赤の他人に何か出来るわけでもなく、買ってきたコンビニ弁当を食べてその日は寝てしまった。
そして、夢を見た。
あたりは一面の霧。それが晴れると、山水画のような山と川に囲まれた村が現れた。
その水車小屋の建設現場に佇む、幼い男の子。
なぜかは分らない。彼こそがテロで非業の死を遂げたあの少年だと分った。傍らに立つ、同じ年ごろの女の子は、狼のような耳と尻尾を持っていた。
ふと、男の子は空を見上げた。その心の声が響いて来る。
……お母さん。僕は、ここで生きています。
ああ、ここは異世界なのだ。そこに彼は生まれ変わり、懸命に生きているのだ。
そう納得し、目が覚めた。
不思議な夢だ。私の中の無念な思い、やるせなさが見せたものだろう。
なぜかは分らないが、忘れたくなかった。だから、PCを起動して、思い出せる限りの内容を書き出した。
それを保存し、今度は夢も見ず眠った。
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