中学3年生

2016年 4月

第6話 友との再会。

「いってきまーす」

 今日はあまり気が乗らない。雨が降っているからだろうか。それとも…学級発表だからだろうか…脚が重い。今日から俺は三年になる。雨の匂いに混じって微かに春の香りがした。

 一番心配だったのは裕希菜のことだ。違うクラスになってしまったらと考えるだけでさらに脚が重くなる。今日はいつもより数分遅れて学校に着いた。下駄箱付近の窓ガラスに四枚の紙が貼ってあった。さっそく一番左に貼られている一組の方から見ていこうとした時。

「また同じクラスだねーよろしく!」

 あおいが背後から話しかけてきた。どうやら、また同じクラスになったらしい。朝から元気だな…いつもは思われる立場の俺が思った。

「俺なん組だったーー?」

「四組だよ!一番右に貼ってあるよー」蒼が教えてくれた一番右に貼られた四組のメンバー表を見る。上から見ていくと、そこには[明江 裕希菜]《あきえ ゆきな》の名前と[津田 和亜樹]《つだ かずあき》、俺の名前があった。心の中でこれは運命だな。と勝手に思い高鳴る気持ちを抑えた。他のクラスメイトの名前は目に入らなかった。

 三階の一番奥のにある四組の教室に入る。そこには俊佑しゅんすけがいた。「よーーーーー!同じクラスとか小学校以来だな‼︎よろーーーーー」俊佑とハイタッチをする。

「和亜樹の席、俺の前やで‼︎」俊佑の前の席が空いていた。俺はそこに座り、後ろを向いて俊佑と受験の話をした。

 時刻は午前八時を過ぎたところ。廊下から騒がしい声が聞こえてきた。「ねーうち、ゆうちゃんと同じクラスでほんとよかったーーーーーもー大好き!」声の主は蒼で、裕希菜と一緒に来たというのが声だけで分かった。そして教室に入ってくる。「あ、どこの席か書いてあるよ!ほら!黒板に貼ってあるー」

「ほんとだー!あ、あそこかな」

 振り返って見てみるとこっちを指差していた。まさかとは思ったがどうやらそのまさからしい。二人は俺と俊佑の隣の席だった。そしてラッキーなことに裕希菜が俺の隣の席になった。裕希菜とは普通に喋れる仲だが、こんなに近くに座ったのは初めてだったので今までで一番緊張した。

「ここみんな同じ小学校出身だねー!」蒼が言う。

「あーー確かに!しかも小六の時同じクラスだったよね!ちょー久しぶりじゃん!」嬉しそうに裕希菜が言った。俺は朝のテンションの低さとは一変し、テンションが上がっていた。

 時刻は八時二十分。始業のチャイムが鳴った。「はいじゃー出席とるぞー」先生が入ってきた。一人一人の名前を呼び始めたその時、教室の前のドアが開いた。

「すいません遅れましたぁぁぁあ」息を切らしながら入ってきたのは宏人ひろとだ。

「おいおい、初日から遅刻かー?まー今回は許してやるけどな」

「優しい先生でよかったな!宏人、こっちこっち、俺の後ろやでー!」俊佑が声をかけた。

「はい。じゃー全員揃ったな。これから始業式と、担任の先生の発表があるからなー。身だしなみをしっかり整えて式に望むように。はい。じゃー廊下に出てー整列しろー」

 俺は今、幸せへの一歩を踏み出したのではないかと思った。廊下に出て番号順に並ぶ。

 

 そして、襟をただして式に臨んだ。









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