2016年 3月

第4話 無駄な時間

 二学期が終わり、冬休みが終わり、三学期に入った。裕希菜が彼氏とクリスマスデートをしたという噂が流れてきた。俺は完全に裕希菜を諦めていた。自分にはどうすることもできない。裕希菜が決めることだ。と自分に言い聞かせた。

 十二月から三月の間、俺はインターネットを使って「逆転合格の体験談」や「一年で偏差値二十上げる方法」とか「成績が上がる方法」をずっと調べて真似していた。そのおかげなのか俺は、少しずつだが勉強するようになっていた。


 三月十二日(土曜日)学校から帰って少しのんびりしてから勉強机に向かう。この日から俺は日記をつけることにした。理由はストレス発散というところだ。裕希菜に対する気持ちや、塾、勉強について書こうと思う。俺はノートの1ページ目を開き、手に力を入れ書き始める。


 三月十二日(金曜日)今日は中学2年最後の期末テストが帰ってきた。

 数学七十七点

 社会三十六点

 英語三十点

 理科五十二点

 国語三十点

 技術五十五点

 音楽二十一点

 数学めっちゃ出来た! 

 じゅんいは百人ちゅう八十一番

 インフルエンザにかかっていたからしょうがない、と周りにはいっているが前の期末と全然変わらない。

 今度の火曜日に英単語テストがある。毎日五ページ以上はかいてる。百点取りたいなー…


 書き終わってシャーペンを置き、読み返してみる。低い数字、字の汚さ、ひらがなばかりの文になんだか恥ずかしくなった。俺は漢字練習というものが嫌いなので漢字が書けない。だから俺が書く文章はどれも、ひらがなばかりだった。

 この日記は誰にも見せられないなと思い、俺は静かに引き出しの奥にしまった。そして単語ノートを開き単語練習を始める。書いてる途中俺はふと思った。

「あれ?俺、勉強するようになってる…」

 なんだか自分が偉いように思った。

 自分が成長しているのではないか。とワクワクした。

 単語テストの目標は百点だ。今までテストで百点という数字を取ったことがない。そもそも定期テストでは毎回低い点数の俺にとって、百点という数字は大きな目標だった。

 単語を見開き5ページを書き終えた。ふぅーーと大きくため息をつき、背伸びをした。今日もしっかり書けたという達成感に浸っているその時、

「和亜樹ー」ご飯が出来たようだ。お母さんはご飯ができると名前を呼んで知らせてくる。

「はーーーーーい。」叫ぶように返事をして俺は階段を降りる。








 俺は少し成長していた。




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