2015年 11月

第3話 目標を見失う

 キーンコーンカーンコーン

 四時間目の終了を告げるチャイムがなり、給食の時間になる。給食は俺が学校で1番楽しみな時間だ。午前中はこの時間のために頑張ってると言っても過言ではない。俺は隣の席の裕希菜と机を向き合わせる。後ろの席も席を合わせ班の形になり、みんなで楽しく食べる。これが日常。だがこの日は裕希菜の様子がいつもと違った。やけにニヤニヤしていて、全然ご飯が進んでいない。心配になった俺は聞いた。

「おまえ、なんかあった?」裕希菜はまたニヤニヤした。

「何でそんなニヤニヤしてんの?好きな人でもできた?」と聞きながら俺までニヤニヤしてしまった。裕希菜はご飯が進まないようだ。時々顔を下げ何か悩んでるように見え、時々ニヤケ、の繰り返しだった。裕希菜は俺と目が合うとニヤニヤする。だから、まさか俺こと好きになってくれたのでは?と勝手に妄想が膨らませながらパンを食べていた。その時、裕希菜の友達が遠くの席から、裕希菜にジェスチャーで何かを訴えてるのが目に入って来た。なにやら小指を立てている。それを見た裕希菜はニヤニヤしながらやめて、という感じに手を払う仕草をした。俺は嫌な予感がした。怖くて聞けなかった。だから裕希菜の後ろの席のあおいに聞いた。

「裕希菜好きな人でもできた?めっちゃさっきからニヤニヤしてるし。」裕希菜に聞こえていたのだろう。ニヤニヤしながら小さい声で「うるせーよ」と言われた。こんな状況でも可愛いと思ってしまう自分がいた。

「まったく!女の子にそーゆこと聞かないのー!ゆーちゃんは恋で悩んでるんだから。ねーゆーちゃんはいいなー青春しててーーー」

 それは好きな人ができた。にさらにプラスされ、彼氏が出来た。という大事件だった。

 俺に大きな葛藤が生まれた。好きな子に好きな人がいる。応援してあげるべきか。それとも早く別れろぉぉぉぉと、願うべきか。優柔不断な俺は悩む。

「ごちそうさまでした。」といつの間にか給食は終わった。残飯を片付けに行こうと裕希菜が立ち上がったとき。裕希菜は呟いた。「あーーー全然食べれなかったーー」どうやら相当悩んでいるらしい。裕希菜は普段悩んだりしない明るい子だ。こんなに悩んでいるのは初めて見た。裕希菜は幸せな日なのだろうが、俺にとっては悲しい日だった。気になって気になって授業など耳に入ってこなかった。

 ただ、裕希菜に彼氏ができたという現実を受け入れるしかなかった。

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