第2話 突きつけられる現実

「そういえばこの前のテストの結果は?」

「この前のテストって?」なに知らぬ顔で答えたが、相手はお母さんだ。俺のことは全部わかっている。

「夏休み明けテストに決まってるでしょ?隠してないで早く出しなさい。」

 声の大きさに驚き、俺はすぐに通学かばんに手を伸ばした。そしてテスト結果を取り出し、恐る恐る差し出す。

「ちょっとなによこれ。」

 あぁ怒られる・・・そう思った瞬間怒鳴られた…

 怒られてる最中、頭の中にいくつかの言い訳が思い浮かぶ。だが言い訳を言ったところでなにも変わらない。悪い点数を取った俺が悪い。

「もう塾に行ってもらうから。」

 何時間にも感じたお母さんの説教はこの言葉で終わった。

 そして土曜日、お母さんが数日間で見つけた塾に行くことになった。塾に着き、中に入ると受付から女の先生が出てきた。

「こんにちはー」

 極度の人見知りの俺は塾の先生と目を合わせずに挨拶を返す。

「こ、こんにちは…」

 先生が俺を教室に案内してくれた。教室には誰もいなく、俺は教卓の前に座る。先生は教卓のところで何か資料を見ながら話を始めた。

「和亜樹くんは川上中学校なんだね!和亜樹くんは毎週木曜日に個別教室というのに通ってもらいます。これは先生と2人っきりで勉強する教室になります。分からないことは気軽に質問してくださいね。それで、まず和亜樹くんがどのくらい勉強できるのか知りたいので五教科テストを受けてもらいます。それと最後に進路希望を書いてください。」

「はい。分かりました・・・」

 乗り気じゃない俺は声のトーンが低くなる。

 そしてテストは国語、数学、理科、社会と順調に終わり。進路希望には裕希菜との楽しい高校ライフを想いながらしっかりと「南高校普通科」と書いた。

 そしてテストは終わった。

 時間になり先生が入ってきて「お疲れ様〜じゃ回収するね〜結果は数日後に出るからね〜」そう言ってテストと進路希望用紙は回収され、俺は家に帰った。

 

 数日後また塾に行った。先生が出てきてまた教室に案内され、この前と同じ席に座る。

「じゃー和亜樹くん。この前のテストの結果を一緒に見て行こうか。」そう言ってテストの結果を渡して来た。

「今回受けてもらったのは模試というもので、他の人と比べて、自分に今どのくらいの学力があるのかを知るためのテストです。じゃー早速見て行こうか。」

「は、はい…」

「まずは五教科科の合計ねー。えーーっと、二百二十三点…です。」

 とてもいいずらそうな言い方だ。

「それで和亜樹くんの総偏差値は…えーーーっと四十二ですね。」少し大きめの文字で書かれた四十二という数字を指差して言った。

 俺は何のことなのかよく分からなかった。四十二?だからなに?という感じだ。

 先生は結果用紙を裏返す。

「で、次に進路希望書いてもらったよね。和亜樹くんは南高校の普通科を志望しているようだけども、ここの評価というところにEって書いてあるよね。ここの四角の中にはA、B、C、D、Eのいずれかのローマ字が入ります。で、このローマ字が示すことは、下に書いてあります。和亜樹くんは第1志望校の南高校はE判定。進路変更をお勧めします……になります。」

 俺は理解できなかったから素直に聞いた。

「つまり行けないということですか?」初めて先生と目が合った。

「そうだね。今の状態だと行けないね。でも今は中学校二年生の十月だよね?まだ一年と少しある。諦めずにやれば合格できるかもしれないよ。」先生の言葉を聞いて特に落ち込んだりはしなかった。でも裕希菜と同じ高校には行きたい。絶対に。


 その日、俺は家に帰ってからもう一度テスト結果を見返して整理する。


 五教科合計が二百二十三点。俺の偏差値が四十二。南高校普通科はE判定。今のままだといけない。そして滑り止めで受けようか悩んでいた東洋高校。行けないと言われているが・・・その高校もE判定。書いた高校四校全てE判定。俺はため息をついたり、俺、バカすぎるなーと思って笑ったり、このままでは裕希菜と同じ高校に行けない・・・と思って悲しんだり、今からやればまだ間に合う。と張りきったり・・・様々な感情が混ざり合い、疲れて、この日は机の上に伏せたまま眠ってしまっていた。起きたのは翌日の昼間だった。土曜日で休みとはいえ昼間まで寝てしまったことに後悔した。

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