【高校文化祭用寸劇台本】脚フェチ王子と人魚姫
海玉
脚フェチ王子と人魚姫
むかしむかしあるところに、人魚の王国がありました。そこには人魚の王様と王妃様と、お姫様たちが暮らしていました。
(姫登場)
(なにかをかざして見る)
姫「なんて綺麗なのかしら!」
このお姫様は末のお姫様です。末のお姫様は姉のお姫様たちがうっとりするような、色鮮やかな海藻、美しい貝殻などには目もくれず、海の奥から拾ってきた宝石や、金の延べ棒や、人間の使うものばかりが好きでした。
お姫様は、人間の世界にはもっともっと宝石や金銀財宝がもっとあることを知っていました。なので、どうしても陸に上がりたかったのですが、16歳になるまでは王国の外へ出てはいけないというきまりでしたので、人間を見ることもできませんでした。
しかし、今日はお姫様の誕生日です。16歳になったお姫様は初めて、波の上に行くことを許されたのでした。
夜になると、お姫様は波の上に泳いでいきました。
姫「あれが月かしら? うーん、ダイヤモンドのほうが綺麗ね」
お姫様があたりを見渡すと、そこに、大きな船がありました。実は、この日は陸の国の王子様の誕生日でもあったので、船の上でパーティをしていたのです。
お姫様は船に近づきました。すると、船べりに座っている人間の姿がみえました。
王子「女性に履かせるのは黒ストッキングと網タイツ、どっちがいいかって? 馬鹿だなあ、最高なのは150デニール以上の黒タイツに決まってるだろ!!」
そう、この王子は重度の足フェチでした。
その後も王子はいかに透けないタイツが素晴らしいのか、ニーハイは邪道だが邪道なりの良さがあるとか、足についてのフェチズムをひたすら語っていましたが、人魚姫は全く聞いていませんでした。なぜなら、王子の服についている宝石たちに見とれていたからです。
姫「ああ、あの宝石が手に入ったらいいのに! うーん、一番いい方法は結婚することよね。なにか出会いのきっかけがほしいわ……そうよ、あの男は人間の王子だから、きっと命でも救ってやれば、感謝してプロポーズしてくれるに違いないわ!」
人魚姫は早速船の下に潜ると、人魚、もとい半魚人パワーで船をひっくり返しました。
王子「助けてくれー!」
足フェチ同好会の友人たちには目もくれず、人魚姫は王子だけを救出しました。
(姫、気を失った王子を往復ビンタ)
王子「ごほっ、ごほっ……あれ、ここは?」
姫「気がつきましたのね。わたしは人魚姫。溺れたあなたをお救い申し上げました」
人魚姫は、王子がいかに窮地に立たされていたのか、王子を救うためにいかに自分が頑張ったかを、恩着せがましく語りました
しかし、王子はずっと難しい顔で人魚姫の尾ビレを眺めていました。
姫「なので、王子様からわたしに、ちょーっとくらいお礼があってもよろしいと思いますの。たとえばけ・っ・こ・ん❤︎とか」
(王子、首を横に振って)
王子「いや、無いな」
姫「どうしてですか!? だってわたし、こーんなに可愛いのに(ぶりっこ)」
王子「だって、君、脚がないじゃないか」
なんということでしょう。王子の中では脚が無い時点で顔も胸もお尻も関係なくアウトオブ眼中。
人魚姫がびっくりしているうちに、王子は自分の城へ帰ってゆきました。
海に帰った人魚姫は、王国のはずれにある魔女の館へ向かいました。
魔女「お客さんかい?」
(人魚姫登場)
魔女「おやおや、あんたは末のお姫様じゃないか。なんの用だい?」
人魚姫「この尾ビレのかわりに脚がほしいの」
(魔女考える)
魔女「できなくはないね。でも、タダでとはいかないよ」
姫「何をあげたらいいの?」
魔女「おまえの声さ」
実はこの魔女、残り少ないババアの余生をカラオケに費やしているのですが、どうしてもしわがれた声では思うように歌えず、伸び悩んでいました。人魚姫の声で大ヒットソング『千の泡になって』を歌えば拍手喝采、聴衆大号泣、シンガーソングライターデビューもかくやと考えたのです。
(姫、千の風になっての替え歌を歌う)
姫「……わかったわ。声をあげる」
魔女「交渉成立だ。どんな足にしたいか、ご希望はあるかい?」
姫「じゃあ、この足をつけてほしいの」
(姫、魔女に写真を渡す)
何かの役に立つかもと、王子の懐からスリとってきた写真がいま役に立ちました。備えあれば憂い無しですね☆
魔女「わかった。じゃあ呪文をかけるよ」
(両手をうにゃうにゃさせる)
魔女「テクマクマヤコン テクマクマヤコン」
(姫倒れる)
姫の声だけあてた魔女「やったー! これで次の人魚のど自慢大会は優勝間違い無し!!」
(人魚姫起きて口をパクパクさせる。尾ビレは足に変わっている)
悲しむ人魚姫の心に、奇妙な心が湧いてきました。そう、それは……戦いたい、という感情。
(姫、飛び起きて、喜んでいる魔女の背中に回し蹴り)
魔女「ぐあっ」
(その後足技で魔女を攻撃。最後は魔女を踏みつける)
(上記の動きのバックでナレーション)
震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!!
これは人魚姫も知らないことでしたが、写真の脚の持ち主は、ムエタイの女子世界王者でした。美脚に込められた戦士の魂が、人魚姫に戦う手段を与えたのです。
人魚姫の声の魔女「た、助けてくれー」
(姫、喉を指さす)
人魚姫声の魔女「わ、わかったよ……ムー〇プリズムパワー」
(魔女、ばたりと突っ伏)
人魚「ふ……つまらぬものを蹴ってしまった」
そうして人魚姫は、150デニールのタイツとミニスカートを履いて、再び王子のもとへ向かいました。
ちょうどその日、王子は隣の国の王女様と結婚式を挙げていました。
(花嫁がわりの抱き枕的なものを抱えた王子登場)
王子「さあ、君の美脚に永遠の愛を誓おう──」
人魚姫「待ちなさい!」
(♪ちょっ〇待って~~、プ〇イバック プレ〇バック♪)
王子「き、君は──」
(人魚姫、セクシーポーズ)
王子様はどこかで見たことのある顔だな、と思いましたが、人魚姫の足を見た瞬間に、すべてどうでもよくなりました。
王子「素晴らしい脚だ! 僕と結婚してください」
人魚姫「はい❤︎」
花嫁(王子裏声)「ちょっとあんた、急になんなのよ──」
人魚姫「まあ、王子さまとわたしの真実の愛を引き裂くなんて、許されないわ! そんなあなたに、スペシャルマーメイドキーック!!」
(花嫁ととばっちりを食らった王子、舞台袖まで吹っ飛ばされる)
(その後王子だけ戻ってくる)
邪魔者もいなくなったところで、王子と人魚姫は結婚しました。
結婚式の夜
姫「素晴らしいわ! これがぜーんぶ私のものなのね!」
いくら足フェチだろうと王子は王子。ありあまるほどお宝を持っていました。
人魚姫が財宝に見とれていると。
王子「ねえ、人魚姫、お願いがあるんだけど……」
姫「いま忙しいの。あとにして」
王子「さっきの結婚式から、胸がドキドキして鳴り止まないんだ。これって、もしかして……」
(王子、ハイヒールを差し出して)
王子「頼む、ぼくをその美脚で踏みつけてくれ!!」
なんと、王子は人魚姫のキックを受けて、足フェチに加えてドMも開花させてしまったのです。
そして、人魚姫も。
(ハイヒールをひったくって)
姫「踏んでくれぇ? 言葉がなってないんじゃない?」
王子「おねがいします踏んでくださいぃぃいいいい!!!!」
生まれて初めて”蹴りつける”という快感を覚えた人魚姫は、ドSの才能を発揮したのです。
まさしく需要と供給の一致。こうして人魚姫は二重の意味で”女王様”として君臨したのでした。
めでたしめでたし
【高校文化祭用寸劇台本】脚フェチ王子と人魚姫 海玉 @lylicallily
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます