第9話
私はいつの間にか動くようになった足でゆっくりととぼとぼと歩いて行った。
「ここはどこ?私は一体どこに向かって歩いているの?」
少しづつではあるが、ぼんやりとしていたころよりは意識を取り戻し始めていた私ではあったけれど、目の前、いや周囲の光景に驚愕していた。
とても薄暗くてはっきりとは見えないが、高さ3メートルほどのごつごつとした岩壁に周囲を囲われていて、どこか洞窟のような印象を感じる。薄暗くて尚且つ少しばかり冷えているこの異様な雰囲気に私でさえもどこか身震いのする様である。
いつどうやってこんなところに入ってきたのだろう。バッツさんや他の隊のみんなはどうしたのだろう、そんな風に悪びれる様子もなく思った私であったが、たった先程起きた悲劇をだんだんとだが思い出していき、私の顔はどんどん真っ青になっていった。なんだか体の芯から手や足の指先までひんやりとしてきた。これはただ洞窟内の気温が低いというだけではないのだろう。
みんなのことを思い出すととてもこの先に一人進む気には到底なれない。どうして私は一人残ってしまったのか、いやなぜ私なのか、考えても考えても一向に思考は進まない。まあ冷静に考えてみれば当たり前のことじゃない。だってそもそもここ誰も踏み込んだことのない未開の土地だし。
でも、それが頭の中でいったん終止符を打てたとしてもみんなは戻ってこない。一体家族の方にはどんな顔を見せていいのか、まあそもそも見せる私の顔を見せることすら不可能な気もするけど・・・。こんな時に限って私はネガティブになってしまう、本当の私は「やろうと思えば何でもできる!」とか胸を張って言うのは柄に合わないような性格なのだ。いくらここで立ち止まってぶつぶつと言っても誰も聞いてくれないし答えてくれない、そんなことはとうにわかっている。それでも、そうでもしていないとやるせない気持ちで押しつぶされてしまいそうなのだ。
ここで立ち止まっていても何も始まらないので、私は目元を真っ赤にしながら必死に自分を鼓舞してとぼとぼと歩き始めるのだった。
道はとても入り組んでいて、何度も何度も右、左、時に直進、など何度も枝分かれをしていた。いつもだったら印をつけたり、記録を取ったりといった工夫をしながら進むのだが、今回は違った。
では、どうしたのか、そう直感だ!
そんなどや顔で言えるようなことではないのかもしれないけれど、やっぱり今回ばかりは違った。最初は隊のみんなを思い出して、すすり泣きながら歩いていたからか印をつけることなど頭の片隅にも残っていなかったから今さら勘しか頼るものがないというのもあるのだが、やっぱり、私は今この瞬間が楽しいのだ。みんながいなくて辛くて辛くて仕方がなくても、私は私なのだ。そう思うと、今なら何でもできる気がした。
もうどうなってもいい、そんな諦めからきたものなんかでは勿論ない。みんなのことはどうやっても何があっても忘れることはできないだろう。でも私は忘れることにした。みんなのために、私のために。
だから、この先何が私を待っているんだろう、私は何を識ることができるんだろう、そう創造の輪を膨らませていると私の足取りはだんだんと軽いものへと変わっていた。
そんな風に足を前へ前へと運ばせていた矢先、パチパチッとまばたきを二、三度して目を開くいた瞬間私の眼に一気に光が差し込み、私は思わずおもいっきり目をつぶってしまっていた。
手をかざしながら、ゆっくりと奥に奥にと進んでいくと私は目の前の光景にもかかわらず、思わず二度見してしまった。
いつかまた出会える日まで @rinrim
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