第15話 どこにも、もう

雹混じりの、存外冷たい春の雨の中を

私はゆっくり歩いて行く


急いで家に帰っても あの子はいないから


微かな涙は雨で誤魔化される


これでも大分マシになったのだ

それでも まだ あの子の不在に打ちのめされるけど


ふわふわに見えて、案外硬い毛と

小さなしじみのような目と

感情を表していた尻尾と


ああ、そうだ


どこにも、もう あの子はいないのだ

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とてとてた 福倉 真世 @mayoi_cat

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