第14話 大切な仔が死んだとき

大切な仔が死んだとき

私は間に合わなかった

酸素の詰まった檻の中で

大切な仔は硬くなって

体温を喪っていった


大切な仔が死んだとき

私にとっては聖骸になるような

そのなきがらを

何枚かの諭吉と引き替えに渡された


大切な仔が死んだとき

安らかに、などと祈れずに

小さなあどけないその体に己が身を添わせて

私はとめどなく泣いた


帰ってきて

かえってきて

君じゃなきゃ駄目なんだ

お願いだから頼むから……と


なんて浅ましい

なんて醜い

自分のことしか考えていない

考えられない


身体が空っぽになるような哀しみが身を貫いて

手が震えた

手向けられた花に埋もれた大切な仔は

とてつもなくどこまでも冷たくて

それでも最後だからと沢山抱きしめた


大切な仔が死んだとき

そのからだを

いつものキャリー入れて運んだ


そして


お骨になって帰ってくる大切な仔を

いつものキャリーで迎えに行った


渡されたのは、おもちゃみたいに小さな骨壺

キャリーなんていらなかったのに


大切な仔が死んだとき

等価な何かが返ってくると信じた


けれど、傷が塞がる材料などなく

私はただただぼうっと空を眺める

あの仔を焼いた煙が消えていったはずの空に

ひたすら見つからない虹を探して

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