第24話 危局 ⑧

 戦いはダルムントとカレンシアの働きがあったこともあり、なんとか勝利することができた。こちら側も満身創痍の状態だったが、最終的に逃げ帰ったのは燈の馬の連中だ。


「シェーリとテオの居場所はわかるか?」


 仲間たちの応急処置が行われていく中、おれはぐらつく差し歯を指で押し込みながら班員の捜索手順についてドルミドと話し合っていた。


「一応、キャンプ郊外に緊急時の隠れ場所をいくつか用意してありますんで、そっちを中心に捜索しようかと」


「まだ次の日の出までには十分時間がある。動ける奴らは全員捜索部隊に回そう」


「南区画に設置した隠れ家は全部で3つあるんすけど。手分けして当たるってことでいいっすか?」


「いや、一つずつ回る、これ以上戦力を分散したくない」


 キャンプ内もそうだが、外にもまだ燈の馬の連中が潜んでいる可能性が高い。時間はかかるが少しでも戦力を確保するために集団で行動したほうがいいだろう。


「わかりました」


 ドルミドは場を取り仕切り、地上へ帰す重傷者とこのまま捜索を行える者とを選別し始めた。そして下りてきた昇降装置に積まれた武具と入れ替える形で重傷者を地上へ送り返す。


「兄貴、一番近い場所はキャンプ郊外西側の隠れ家です、そっから行きましょう」


 ドルミドが言った。この時点で残ったメンバーは、ダルムントとカレンシアを含めて6人だけだ。南区画のキャンプ周辺で魔獣や妖精種と鉢合わせることはあまりないが、全くないわけではない。

 おれたちは燈の馬からの襲撃と魔獣どもからの襲撃、二重に警戒しつつテオとシェーリを捜索しなければならなかった。しかもついてないことに最初に訪れた隠れ家で、探し人を見つけることは叶わなかった。


「シェーリは魔術師だ。見えない痕跡が残っているかもしれない」


 裏通りに面した建屋の中に、誰も居ないことを確認しながらおれは言った。


「見てみますね」


 カレンシアが隠れ家である建屋内部のエーテルに目を凝らし、くまなく痕跡を探って回った。その間にちゃっかりついてきていたレンが、室内に備え付けている保存食や備品などを手に取って確認していた。


「どうかしたのか?」


「いえ、こういう拠点の備品や消耗品の管理は、3班だけじゃなく4班の仕事でもあるので」


 レンは首を横に振った。


「でも、個数はどれも前回の確認時から変わっていませんね。シェーリとテオさんが居たのなら、何かしら持っていったはずですし、やっぱりここには来なかったのかもしれません」


「私のほうも、これといった痕跡は見つけられませんでした」


 カレンシアも同じ意見のようだ。


「次へ行こう」


 おれの判断に、ドルミドが難しい顔で助言を呈した。


「次はここからなら、中央区画へ続く大通りの脇道に面した隠れ家が近いんすけど、この状況でわざわざあいつらが燈の馬の本拠地に続く方向へ逃げるとも思えないんで、先にキャンプを跨いで東側にある隠れ家に行ってみません?」


「わかった。それでいこう」


 拒否する理由も無いため同意したが、それがまたしても裏目に出ることになってしまった。つまり、二つ目の隠れ家にもシェーリとテオは居なかったのだ。

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