第18話 危局 ②
おれと共になし崩し的にフォッサ旅団に加入することになったシェーリは、その可愛らしい風貌から時おり垣間見る小生意気な態度が、その若さと相まって人気を博し、入隊から一週間もしない間にフォッサ旅団のマスコット的立ち位置を確立していた。
シェーリを引き取った補給部隊の第3班なんかは、兄を探すというシェーリの要望に応えるべく、北塔までの道のりを毎回少しずつ変えながら往復してやるなど、ありとあらゆる協力を惜しみなく行っていた。その矢先の出来事がこれというわけだ。
「今すぐにでも助けに行きましょう!」
血気盛んな男どもがおれに詰め寄った。
今行けば燈の馬との戦闘は避けられない。だからといってここで手招いている間に、ギルドの介入を受けて和解することになっても腹立たしい。どうするべきか逡巡した結果、おれはレンに対してもうひと仕事頼むことにした。
「今すぐダルムントとカレンシアを呼んできてくれ」
各班から寄せ集めてきたこいつら専属部隊の実力を疑うわけではなかったが、相手だって馬鹿じゃない、おれたちがすぐやり返しに来ることだって予想しているだろう。となればこちらもできうる限りの戦力を用意しておきたかった。
「わかりました!」
二つ返事でレンは部屋を飛び出した。日ごろから地上での活動が多い第4班の班員だ。カレンシアやダルムントの居所についても心当たりがあるのだろう。
「お前らも今のうちに準備を済ませろ。そんで覚悟を決めた奴から席に着け、相手は燈の馬だ、はいそうですかと退いてくれる奴らじゃないぞ」
おれは浮き立っている奴らのケツを引っぱたき、カレンシアとダルムントが来る間に、おおよそ想定される状況とその対応策、そして報復に関しての方針を説明した。
そしておつむの足りない最後の一人がようやくおれの言わんとすることを理解した頃、レンに連れられたカレンシアとダルムント、そしてニーナが姿を現した。
「事情は聞いた、私もついていくから」
おれが口を開く前にニーナが言い放った。
「だめだ、奴らは本気だ。待ち伏せされてる可能性だってある。そんな危険な場所に君は連れて行けない」
「今更何言ってるの? いつも危ない目に合わせてきたくせに」
ニーナは鼻で笑った。いつだってごねればおれが折れると思っているのだろうが、今日は違うぞ。
「何と言おうと連れて行く気はない、嫌な予感がするんだ」
「エーテルの囁き?」
「ああ」
「そんなの貴方だって本気で信じているわけじゃないでしょ?」
おれは何も答えなかった。その代わり入口前に立つソニアに目配せする。
「ニーナさん、私と一緒に待ちましょう」
ソニアがニーナの肩にそっと手伸ばす。
「触んないで! 私も行くの!」
ニーナが抵抗を見せるも、元々争いを好まない女だ、ソニアのことを振り切れるわけもなかった。
「安心してください、ロドリックさんは私が責任をもって守りますから」
そんなニーナをカレンシアが宥めるように言った。女に守られるってのも何だかこそばゆいが、こうも美女に言い寄られるのも悪い気はしない。
「お前ら、行くぞ」
恨めしそうにこちらを睨むニーナをソニアらに託すと、おれたちは部屋を後にした。
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