第14話 搦め手 ②
「燈の馬は各月ごとに帝国から金が送られてくるまで、基本的にはツケで探索物資の買い入れを行う。そして帝国から金が入ると、そのほとんどをクラン員の給料や溜まったツケの支払いに使っている」
「そこが狙い目ってことか」
「ああ、まずはそのツケ払いを阻止したい」
「具体的には?」
「燈の馬ほどの大所帯になると、消耗品や備品だけでもかなりの量が必要になる。しかも帝国からの送金は2か月に1回。それだけの間ずっとツケで融通できる卸業者なんて片手で数えるほどしかいない」
「俺たちが抑えるのはそっちってわけか」
「そう、その中でもさらに、一般人は使わず探索者だけが使う物資を取り扱ってる卸業者だ」
スピレウスは門扉のシーフガードを眺めながら少し思案したあと「つまり?」と尋ねた。
おれはその質問には答えず、ニヤリと横目でスピレウスを見ると、門扉を守る奴隷に主人への取り次ぎを頼んだ。
「どちらにせよ、彼女の協力なしでは何もできないからな」
門が開かれる。
質問に答えろよ、と文句を言うスピレウスを引き連れながら、おれはカッシウス邸へと進んだ。
※※※
テリアはおれの考えた計画における初期投資の額に眉をひそめた。
おれとしてはその金はのちのち燈の馬から回収可能だと踏んでいたため投資と表現していたが、テリアにとっては恵与としか思えなかったらしい。
それでもこのまま燈の馬を野放しにすれば下層へ行くことはできないというおれの主張を認め、この投資をせめて下層へ行くためのものだと自分自身を納得させることに成功したようだ。
おれたちはテリアから資金援助を取り付けたその足で、次はカピナ商業施設の1階にある、探索用の武具を取り扱う卸業者のところへ向かった。
そこでも大歓迎されることとなる。もちろんおれたちがとんでもない金ヅルだと分かってからの話だが。
「欲しいのは鉄製の剣と、鉄製の脛当て、ブーツの先端を守る鉄製のカバー。あとは修理用に予備の革紐を少々、できるだけ頑丈なやつを頼む」
おれの言葉に業者の一人がピクリと眉を動かした。もちろんこの業者が燈の馬と懇意にしていることはあらかじめ調べが付いて居るし、今頼んだ物が燈の馬との主要な取引商品だということも知っている。
「ええ、在庫はありますが、お幾つほどご用意すればよろしいでしょうか」
「そうだなあ、剣を30、脛当てとブーツカバーは50ずつ、革紐は大量に必要だから、100キログラム分ほど貰おうかな」
「……少々お待ちください」
業者は平静を装ったまま奥に引っ込むと、何やら誰かと話し始めた。
数分ほどして奥から出てきたのは、先ほど話していた奴より一回り年輩の男だった。
「どうもロドリック様、御無沙汰しております」
「ああ、久しぶりだな」
こいつがここの店長だ。おれが燈の馬に在籍していたころから懇意にしてもらっていた。ちなみに上の階でがらくた専門店を構えているキルケの遠い親戚でもある。
「ここでは何ですので、どうぞ奥で話をしませんか? つもる話もあるでしょう」
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