第?話 欄外メモより
〝壁抜き〟は成功した。だがおれたちが地上に出ることが出来たのは、それから6日後のことになる。
その6日間で起こった数々の出来事を、地上に戻ったあと、おれなりに整理した結果、おそらくこれはカレンシアの、いやヴンダール迷宮の……延いてはこの物語の核心に迫る事象だったのではないかという結論に至った。
そして、こういう結果になってしまったことを非常に残念に思うし、今後このようなことがないよう注意するつもりではいるが……。
〝壁抜き〟から地上へ帰還するまでの6日間の詳細を、今回に限って。おれの心の中だけに留めることを許してほしい。
この時点で事実を話してしまえば、おそらく多くの人間は彼女に対して間違った印象を抱いてしまうだろう。
だが分かってくれ。一方面から見た事実が、そのまま真実とは限らないってことを。
若い女性の横顔だと思っていたものが老婆だったり。
盃だと思っていたものが人の顔だったり。
過去だと思っていたものが、未来だったり。
男だと思っていた者が女だったり。
真実ってのはいつも、そんなふうに巧妙に本質を隠されているもんだ。
それこそ、まるでこの迷宮のように……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます