感情女と理屈男

レッド

1、最悪な運命の出会い方

「友達」とは、一緒に何かを行い親しくする関係。


「友情」とは、共感や信頼を互いに肯定する関係。


「親友」とは、心から理解し合い信頼できる関係。



「なんだよ、これ。意味わかんねぇ」

可愛い犬の絵が描かれている絵本。興味本位で手に取ってみたが、最初の1ページ目を読んで俺は持っていた本をすぐさま戻す。

薄い背表紙には【あなたの心を軽くする本】と書かれていいるが、俺の心は重いままである。

早く心のプリキュアを呼んで、俺の心をキュアしてほしいものだ。


そんな現実離れた妄想をしつつ、俺は持ってきていたライトノベルと一緒に一番奥の一番すみの席に座る。


結局いつも通り、昼休みになれば図書室へ赴き。興味を引かれたならば手に取り。面白かったら読む。


元々、本は持参しているので暇をすることは無い。


茶色い紙製のカバーに、角が少し曲がっている紙のしおり。読みかけの小説と図書館特有の謎の香り。

冷房の効いたこの不思議な空間は、俺が素を出すことができる数少ない場所の一つだ。


薄い本を開き、俺は読む態勢に入る。


「確かこの辺りから…エリンが可愛いシーン。あれ、違ったっけ?」

久々に読むと前の話までを意外と忘れていたりする。そのため、1人でブツブツ喋り思い出しているのだ。けして、ぼっち過ぎて喋る人がいないとかそんなんじゃない。


「はぁ、この自虐癖も治んねぇかなぁ。なんなら、顔もイケメンに治らないかな。まぁ、友達いないのも事実だしいいか」

「友達いないの?」

「あ?」


そんな綺麗な声で突然話しかけられるとびっくりするじゃないですかーお嬢さん、つい反射的に返事しちゃったよお嬢さん。…お嬢さん⁉︎


「あ、お前!」

顔を上げるとそこには天空から舞い降りた天使がいた。周囲には光が降り注ぎ花たちは綺麗に咲き誇…おっといけねぇ、危ない、危ない、もう少しでダークサイド行きだったぜ。


ラノベ主人公は美少女を見ると固唾を飲んで黙ってしまうと聞くが、思考が停止してないあたり俺の思考力の方が上のようだ。


てか、なんでこんな事起きてるの?ドユコト?ナニコレ?ホワイ?カズナリイミワカンナイ!!


俺が軽く思考停止していると、少女は口を開く。


「私のこと知っているの⁈じゃあ、私と友達になりましょう!」

「ちょ、うるせぇよ、静かにしろよ。ここ図書館だから」

「なっ、うるさい だなんて…せっかく友達になろうとしてるのにそんな事言うのね!」

「だから、うるせぇって!とりあえず落ち着け!」

「友達もいない男子が調子乗らないでよねっ!どうせ彼女もできた事ないんでしょ!恥ずかしい」


ブチ。


俺の中で何かが切れた瞬間である。恐らく日頃の日常のストレスが解放されたのだろう。


「んだとてめぇ!今のは流石の俺でも切れるぞ!誰がお前なんかと友達になるかよ!てか気安く喋りかけてんじゃねぇよ、この尻軽女が!」


ダムのように流れる罵倒は止まることを知らない水の様である。


「だいたいなぁ!お前俺の何なんだよ、急に出てきて俺の大切な時間を奪って、終いには友達になれだ?ふざけんな、さっさと帰れ!」


言い切ったとばかりに息を荒げる俺。つい感情的になっちまったが、日頃から運動をしないだけでここまで疲れるのか?てかヤバいこと言っちゃったよ。いま我にかえったけどヤバい…どうしよう。


そして…数秒の沈黙が流れる。

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感情女と理屈男 レッド @hitoraku

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