第7話 覚悟は決めていたから、大丈夫なはず。

 午前の休み時間。

 僕はヒカリに、昨日と同じ空き教室へ呼び出された。

「鍵はまた職員室から?」

「少し改ざんした。空き教室の鍵自体、盗まれた事実はなかったことにするから」

 ヒカリは口にすると、持っていた鍵を制服のスカートにあるポケットにしまい込んだ。

「神様に聞きに行くこと自体、けっこう厄介かもしれない」

「厄介?」

「神様の周りをとある勢力が取り囲んでる」

「それって、君と敵対してるグループとか?」

「そう。彼らは神様を守るという口実で、わたしみたいな存在を近づけないようにしている」

「目的は?」

「世界の滅亡」

「えっ?」

 僕はヒカリが発した言葉の意味がわからなかった。

「世界の滅亡って、そんなことして、何の得が」

「彼らは世界に対して、幻滅してるからかもしれない。いつかは世界を滅ぼそうと密かに企んでいて、その機会が今回の世界の分裂だったのかもしれない」

 ヒカリは難しそうな表情を浮かべるも、僕にとっては、軽く受け流せるものではなかった。ただでさえ、美鈴と別れてしまったというのに。世界がなくなってしまえば、美鈴どころか、自分の存在すら消え失せてしまう。

「そのグループって、もしかしてだけど、君と同じ神様に仕える者たち?」

 僕の質問に対して、ヒカリは黙ったまま、首を縦に振った。

「少しは怪しいと思っていたけど、ここでこういう行動を取るなんて、予想外だった」

「それで、その、僕を呼んだ理由は?」

「わたしと一緒に来て」

 ヒカリは目を合わせてきた。

 対して、僕は銀髪の美少女に見つめられ、どぎまぎしてしまう。

「時也?」

「いや、その、別に……」

「何か気になることがあったら、言って」

「大丈夫、大丈夫。そもそも、僕はもう、覚悟とか決めてるはずだから」

 僕は自分に言い聞かせる形で答えると、何度もうなずく。

 ヒカリは首を傾げたものの、それ以上、突っ込もうとはしなかった。



 空き教室を出る時、ヒカリは扉を閉め、鍵を手渡してきた。

「僕に?」

「そう。ここはほとんど利用されることがないから、職員室になくても、問題ないと思う」

「いや、鍵がなかったら、少しは気づくって、もしかして、そこは職員室の先生の記憶とかを少し改ざんするってこと?」

「あまりやり過ぎない程度に」

「そっか……」

 どうも、ヒカリは色々な人の記憶を改ざんしている気がするけど。

 ひとまず、僕は鍵を受け取ることにした。

「何かあったら、わたしはここで時也と話をする」

「わかった」

 僕は鍵を制服のズボンにあるポケットにしまい込む。

 そして、足を進ませていくヒカリの後についていった。

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