隣の芝生は青い
赤丸ケネ
隣の芝生は青い
僕には幼馴染がいる。
彼の名前は芝 葵。
昔から勉強も運動もカンペキで、碧眼のイケメンという全男子の敵のような男だ。
しかし、彼には唯一の欠点がある。
彼の家は僕の家の隣だ。
日本には「隣の芝生は青い」ということわざがあるが、彼の家の庭の芝生は青い。
広さはうちの庭の倍はあるし、手入れも完璧にされている。
比喩的な意味でまさに真っ青なのだ。
しかし、実際にその色は緑色から黄色をキレイに抜き取ったような色をしている。
彼の家も、青い。
庭が青いくせに屋根も壁も青いインクで塗られている。
塗られているというよりは、青い木材を使って作られたように思われるほどだ。
僕は一度、彼に何故こんなに青を好むのか聞いたことがある。しかし彼は、自分の家は青くなどない、むしろ所々赤かったり黄色かったりするじゃないか、と答えたのだ。
小学生だった僕は困惑した。
僕たちは高校に入って、自転車登校をしている。
もちろん、彼の自転車は真っ青。
通学カバンもなぜか青。
塗ったの?と聞くと、塗ってないと答える。
僕はその返答にもはや何の疑問も持たなくなっていた。
さて、彼の唯一の欠点の話に戻ろう。
もう察しがついてる人もいるかもしれない。
そう、彼自身も青いのだ。
碧眼といったが、それだけではない。
碧髪であり、碧肌であり、碧歯でさえあるのだ。
彼の父親も母親も妹も、全員青い。
僕が物心ついた頃はまだ普通の色だった記憶があるが、いつの間にか全身青くなっていた。
彼は完璧超人であるにもかかわらず、彼女がいたことがない。ましてや、友達と呼べる者もおそらく僕ぐらいのものだ。
彼はその性格と顔立ちに比べて悲惨な十八年間を送ってきたと言えよう。
思うに、彼が青くなったのは多分に比喩的な表現が何らかの原理によって人々から視認されるようになったためなのではないか。
つまり、周囲の人々が彼を、そして彼の家庭を羨望の目で見つめ、そして妬み、嫉んだことで、彼らは人々の脳の中で真に青くなってしまったのだ。
そんなことは有り得ないと思ってる人もいるかもしれない。
そんな人に一つ言いたいことがある。
なぜ僕は肌が真っ青で世間から忌み嫌われている彼と十八年間仲良くしてこれたのか。
それは彼が頭がいいからとか、運動ができるからとか、そんなことが理由ではない。
僕が彼と仲良くしてこられたのは、僕は青いことを嫌なことだとか気持ちの悪いことだとかは少しも思わないからだ。
なぜって?
それは、僕には自分以外のすべてのものが真っ青に見えているからなんだよ。
隣の芝生は青い 赤丸ケネ @akamarukene
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