エピローグ#風船牧場犬
「あった!!」
シェルティーの牧場犬ルーキーは、牧場じゅうに散らばった風船を次々と拾いまくった。
・・・本当はこんなことしたくないんだけどなあ・・・
・・・僕、牧場の動物達と風船で遊びたかったんだよな・・・
・・・だって、牧場の動物達は柵の中で窮屈そうだったから少しでも、牧場の動物達と愉しい事をしたかったんだ・・・
・・・あのバイトの人には申し訳ないんだけど、利用させて貰ったよ・・・
・・・あー楽しかった・・・!!
・・・この牧場でお客さんに風船を配るのは年末年始とかゴールデンウィークとか夏休みとか人間達が長い休暇になる、かきいれ時だからなあ・・・
「やあ、ルーキー。牧場じゅうの風船取ってきたんだ。いやいやご苦労様。」
・・・ぎく・・・
・・・この風船騒動の主犯格が、僕だという事をスタッフさんに気付いたら・・・僕・・・
ひっし!!
・・・やべぇ・・・
・・・スタッフさんに捕まれた・・・!?
「いやぁ!!マイク!!牧場の動物達が風船と戯れて、見ている人々は「可愛い!!」とか大好評だったよ!」
・・・えっ・・・?
牧羊犬のルーキーは目が点になった。
「あ、心配しないで。あのアルバイトさんもちょっとドジ踏んで風船飛ばしちゃったけど別にクビにはしないし、今度は新しいイベントの手伝いをしないか?と聞いたら、快くOKしてくれたから。
ここだけの話将来、この牧場で一緒にスタッフとして働く事が内定してるから。あのアルバイトさん。」
・・・何だかよく分からないけど・・・結果オーライですか・・・?
更に牧場スタッフが、牧羊犬のルーキーを撫で回してこう告げた。
「その新たなイベントはね・・・」
牧場スタッフは、徐にポケットから萎んだゴム風船を取り出すと、牧羊犬のルーキーの口に風船の吹き口を宛がった。
・・・僕にこの風船を僕に膨らませろ・・・て・・・?
シェルティ牧羊犬のルーキーは、息を深く吸い込んで口に宛がられた風船を膨らませようと頬を孕ませた瞬間・・・
ぷぅーーーーーーーっ!!
「ぜえぜえ。」
・・・えっ・・・スタッフさんそりゃねーよ・・・!!
牧場のスタッフがその風船を膨らませてしまい、風船を口で膨らませようとした牧羊犬のルーキーは空振りしてズッコケた。
「『風船ファームフェスティバル』とか企画しちゃおうと思って!!
無論、君!ルーキーちゃんも主役だよ!!」
牧場のスタッフが膨らませた風船には、牧羊犬のルーキーの似顔絵がプリントされていた。
・・・げっ・・・!!
その自分の顔の風船に恥ずかしくて顔が真っ赤になった牧羊犬のルーキーをよそに、牧場のスタッフはパンパンに膨らませた風船の吹き口を結ぶと、ぽーーーん!と牧羊犬のルーキーの上に放り投げた。
「はずかしいっ!!」
ぽーーーん!
牧羊犬のルーキーは、鼻でその風船を突いた。
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
自分の似顔絵の風船がふわふわと舞う。
「はずかしいっ!!」
その舞う風船を、牧羊犬のルーキーがジャンプしてぽーーーん!と突く。
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
「あっ!あのわんこの風船だ!!」
「ルーキーさんの風船だ!!」
「ワン公の風船をワン公が突いて遊んでる!!」
「頑張れーー!!ワンちゃん!!」
牧場じゅうをまわって風船を突く牧羊犬のルーキーに、牧場の仲間達はやんややんやと歓声をあげた。
「ワン公!!」
「ワンちゃん!!」
「ルーキー!!」
「ルーキー頑張ってー!!」
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
ぽーーーん!
「皆の視線・・・まあいいや・・・!!」
牧羊犬のルーキーは何を思ったか、高くジャンプして思いっきり風船を突き上げようとした。
ぷすっ。
「やべっ!!風船が牙に刺さった!!」
ばぁーーーーーーーーん!!
「臭っせぇーーーーーー!!何この匂い!!スタッフさん何食べたんだ!!」
割れた風船から飛び出した、牧場のスタッフの吐息に思わず鼻を抑えてのたうち回る牧羊犬のルーキーに、牧場の動物達は一斉に笑い転げた。
太陽が燦々と豊かな牧草を照らし、皆朗らかなこの愉快な観光牧場から、ひとつの風船が空へ舞い上がっていっ・・・
た・・・
あれ?????
ぷしゅーーーーーーー!!ぶおおおおおおおおおーーーー!!しゅるしゅるしゅる!!
「きゃいん!!やべえ!!風船の栓抜けちゃったワン!!」
『風船ファームフェスティバル』に向けてヘリウム風船をボンベで膨らます訓練をしていた牧羊犬のルーキーは、青ざめてきゃいん!きゃいん!と吼えていた。
「スタッフさん、本番は僕が口で風船を膨らませていい?」
~牧場は風船パラダイス!!~
~fin~
牧場は風船パラタイス!! アほリ @ahori1970
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