かてー部に会う前に~恋して~

同日 朝

目が覚めた。時計を見ると、起きる予定よりも三分早かった。ちょうど良い。そう思ってアラームを止めよ…、


あれっ、おかしいな?昨日セットしたはずなのに…。忘れてたのかな??


わたしは、頭の中がハテナマークで満たされそうになった気がしたけど、頭を振って昨日アラームをセットし忘れたんだと、自分に言い聞かせた。


でもちゃんと起きれて本当に良かった。今日は午後から大事な人に会うから。周りの人にとっては些細で、どうでもいい人でも、わたしにとっては繊細で、とっても大切な人。


「れいかー!」


お母さんがわたしを呼ぶ。朝ごはんかな?おなかがすいていたので、急いで階段を降りた。


「麗夏、朝ごはんよ。」




やっぱり当たっていた。わたしの家にはお父さん、お母さんにわたし――ちなみに、大学院に行ってるお兄ちゃんは一人暮らし。みんな仕事や学校で忙しいけど、朝ごはんだけは一緒に食べるの。最後の方まで家に残っているわたしとお父さんが、先の二人に合わせてで。


今日の朝ごはんは…洋風――【パン】に【ベーコンとアスパラのソテー】。さらに【コールスローサラダ】と【オニオンスープ】も。


これって【パン】は買ったのだけど、ほかの三つはお母さんの手作り。朝から夜まで仕事で忙しいのに、朝ごはんもしっかり作ってくれるお母さんを尊敬しています。わたしもお母さんみたいになりたい…


けど…、けどね。朝から夜までずっと仕事って言うのもね、すこし淋しかったりするのです。


本当はお母さんの職場は、優しい人たちばかりで、子供がいるお母さんたちには、無理して『朝早くから夜遅くまで仕事』じゃなくていいですよって、してくれている。


だけどお母さんは、周りには迷惑をかけられないって、それを断ったって。まあ、もう高校二年生だしね。


わたしもとりあえずいいかなって思うし、別に今は楽しいこととか、やりたいことだってたくさんあるから…。ただちょっとアレなだけ。


おっと。もう食べないとね。用事は放課後だけど、楽しみすぎて家を早く出ようと思っています。


「いただきます。」




朝ごはんも食べ終わって、準備とかいろいろ――化粧とかはまだしないけど、髪整えたり、女の子にはすることが多いのです。――終わってしまった。少し早いけど登校してしまおう。


「いってきまぁす!」


「いってらっしゃぁい。って、ちょっと待って。お弁当忘れてる。」


「あっ、本当ホントだ。ありがとうお母さん。」


お弁当忘れてしまうとこだった。いくらなんでも浮かれちゃってるかな?


あっ、でもあえて忘れて、少し分けてくれない?と話しかける口実を…。でも、そんな声をかける勇気とかないかぁ…。いつかこの気持ちを伝えられたらなぁ…。


では気を取り直して、出掛けますか…。


「ねえ、麗夏。」


「なに?」


まだ忘れ物あるかな?


「あなた今好きな人いるでしょ?」


「えっ?」


なんで急にそんなことを?


「いいから。いるでしょ、好きな人。」


「いっ、いないよ。そんなぁ…。」


氷鳥くんは、そんなんと違うから…多分…。


「見てたら分かるのよ、お母さんには。それに今だってわざとお弁当忘れようか迷ってたじゃない。お母さんには分かるの。」


どっ、読心術?好きかぁ。わたしは氷鳥くんが好きなのかなぁ?


『わたしは氷鳥くんが好き。』

『わたしは氷鳥くんの彼女。』

『わたしと氷鳥くんが結婚。』


少しこんなことを想像したら、あたまの中がショートしてしまった気がした。


「ちょっと、麗夏?れ~い~か~!でどうなの?」


「えーっとねぇ…、好きなのかもしれないかもね。」


気持ちが追い付かず、変な感じで答えてしまった。


これが、わたしが自身の恋愛感情――初恋に、気づいた瞬間だった。


「そっか、じゃあ早くその子を恋人として連れてきてね!」


お母さんはいつもみたいに優しく応援してくれた。


「うん…。じゃあ、いってきます。」


ドアを開けると、きれいな青が空一面に広がっていた。清々しくなって、今日頑張ろうってなった。




それは『わたしの初恋が芽生える』瞬間から少したったあとだった。

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かてー部にっし!! 木目 ⑦日 @Narren

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