👻{おまけ)


 皆さんはカップルで訪れると必ず?別れてしまうという伝説の心霊スポットをご存知でしょうか?


 これは怖がりなのに健気にもそこで頑張っている、僕のオバ友Mちゃんのお話です。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 僕の隣にいるのは、幽霊になってから2年越しの頑張りによって先ほど見事なデビュー戦を終えたばかりのオバ友オバケ友達のMちゃん。


 フンスフンスと『お次も頑張るぞぃ』ってヤル気満々なご様子。


 ふたりとも透明になって、上空からターゲットを確認していたところ、さっそく次のカップルが現れたようだ。


「キミならさっきみたいに絶対成功するよ!」


「……はぅっ」


 チラとMちゃんの顔を覗き見たら『あわわわわ』とおっかない顔になっていた。


「あんなの絶対ムリですよぉ!両方ともめっちゃ体育会系ですもん!!ゲームだったら四天王クラスですよっ!」


 体育会系は四天王クラスなのか。


「いやいや、大丈夫だって。最悪バトルになっても、彼らは僕たち幽霊に触ることが出来ないから少なくとも肉弾戦にはならないよ」


「でもでも、あんなごりごりマッチョなカレシさんに『がおー』って言われたら、私なんて一発でお陀仏だぶつしちゃいますよっ」


 既に死んじゃってるんだけどね。


 でも確かにMちゃんなら犬に吠えられただけで『ちーん』って一発で成仏じょうぶつしちゃいそうだから心配だ。



 ということで一回見送り。


 結局そのカップルは『んだコラ!結局何も起きねえじゃねえか!』と彼氏がご立腹だった。



 あ、次が来た。


「じゃあ、あの人たちはどう?」


「あれは……無理ですね。だって、なんか武器持ってますもん」


 団扇うちわは武器じゃないと思う。


「じゃあ、その後ろから向かって来ている2人組は?」


「あー、彼氏さんが茶髪ですので……」


「なら、更に後ろの人たちは?」


「彼女さんのメイクが濃すぎてどっちがオバケだか……」



 スルーし続けること数時間、もうそろそろ夜明けが近づいて来ようかとしている頃、急にMちゃんが遠くを指差しながら大声を上げた。


「あっ!アレは○カシ!あの向こうに居るカップルの男の子がタ○シなんですっ!」


 タカ○?って誰だろう?


「ひょっとして、キミが昔付き合っていた人とか?」


 僕がそう聞くと、Mちゃんは慌てて胸の前で両手を振った。


 あっ、ちなみに僕たちオバケは足は無いけど、手はちゃんとあるんだよね。


「違います、違います!!ええと、タカ○は私の弟なんです。私の生前の頃は『お姉ちゃん、お姉ちゃん』ってずっと私の後ろをくっついてくる泣き虫な子だったんですよっ」


 Mちゃん以上に気弱ってよっぽどだね。


「それじゃあ、流石に無理そうだね。身内を驚かすってのも何だし、今日は諦めて明日頑張ろうか?」


「いえ、行きます」


 行くのかいっ!


「弟の彼女さんがビックリして弟を置いて逃げるような子だったら、ここで別れさせてあげるのが姉としてのせめてもの務めですっ!!」


 死して尚、弟さんを想う姉の気持ちには感動するけど……逃げるのは逆じゃないかなぁ?


「私、行きます」


 いってらっしゃい。






「ばぁ」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」




 おっと、タカ○くんが尻もちついた。


「ひぃぃ……おっ、オバケめっ!あっちいけッ!この子は僕が絶対に守るんだっ!!」



 意外にも尻もちつきながら両手を広げて彼女を守るタカ○くんの勇姿を見たMちゃんはスゥーッっと姿を消して空に身を隠した。



「うううっ……タカ○っ!……立派になったねぇ……お姉ちゃん誇らしいよっ」



 

 Mちゃんが感極まっているところへ水を差すようなんだけど、タカ○くんが終始無反応だった彼女さんにおんぶされながら去っていく姿をみると何とも言えない気持ちになった。

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キモダメシ あさかん @asakan

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