光輝症
安良巻祐介
有翼家具を買ったはいいが思っていたより管理が面倒な上に様々な弊害が出て来たので、返品したくなって大揃えの網籠車に乗せて往来に出た。
一週間前、夕暮れ時にこの辺りに露店を出していた天津坊主から一式を購入したのだ。
その時には、これらの家具が大型鳥類に近い世話を必要とすることは説明されていなかったから、十分に返品要件を満たすはずだ、と私は考えていた。
家に入れてみるとそれらは、特定時代のメダイユや象牙の印と言った厄介な餌を要求したり、大鋸屑状の糞をそこらでしたりすることがわかった。
それだけならばまだいい。それらは、鸚鵡類の特徴をも兼ね備えていたのだ。つまり、人語を発するのである。さらに、普通の鸚鵡よりも性質の悪いことには、何も教えなくても勝手にあれこれと喋るのである。その内容がまた、気の触れた宗教家の辻説法に似た大層不気味なもので、毎日毎日その話を聞いていた私は、すっかり不眠症になってしまった。
そればかりか、頭の中に何かの信仰的な偶像の形状欠落が発生しているようで、三日ほど前から特定の言葉が上手く喋れなくなり、かつまた視界にエアア・シップ様の輪が幾つも回転するようになってしまった。これではとても日常生活が送れない。甘ったるく軽々しい謳い文句で、これらの忌まわしい品々を私に売りつけたあの天津坊主を、私は決して許さない。
特殊物品の返却に際して定められた爾後報復法に従って、私はあの坊主に有翼家具と一つかみの呪詛を返すであろう。
あの憎たらしい疑似宣教師が、家具たちそっくりの翼を生やされてどんな顔をするのか、今から楽しみでならない。
光輝症 安良巻祐介 @aramaki88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます