読書感想文のこと

来条 恵夢

読書感想文

 嫌いだった課題の筆頭。

 読み直しもせずに書いて出して、戻ってきたら即ごみ箱行きだった案件。


 …いやだって、感想って?

 極論、「面白かった」「面白くなかった」の一文で終わっちゃうけど?

 という、本を読むのは好きだし作文も苦にならないけど読書簡素文が嫌い、という、一部では不思議そうな顔をされる事態が発生していました。

 …不思議じゃないよ全然ー。

(そして後々知るけど、案外似たような人は多かった)


 何を書けばいいのやらわからず、とりあえずあらすじ要るの? だってこの本読んでる人ばかりじゃないよね?

 と思っていたら、感想文にあらすじを書くのはNGとか見かけて、いよいよ泥沼へ(我ながら真面目)。

 そして冒頭の、書くだけ書いて抹殺、へと至るのですが。


 ある時(多分中三の夏休み以後)、学校の図書室で「全国読書感想文コンクール入賞者」とかなんとか書いてあった冊子を発見。

 一緒にいた友人が同じクラスになったことのない子だった気がするから授業中じゃないはずだけど、いつどうして図書室に居たんだろう(謎)。

 閑話休題それはおいて

 

 へー入賞するような人って一体何書いてんの? 感想って何書くの?


 と、開いた一編。『ぼくらの七日間戦争』を読んでのものでした。

(また話は逸れるけど、この小説、私が中学生当時すでに「過去の作品だけど十分面白い」扱いだったのに、今もその地位を継続中と知って吃驚)

 

 読んで、驚いたというか…カルチャーショック?

 あまり小説の中身そのものには触れていないし、挙句にオリジナル(多分)の詩まで出て来たんだけど何これ?!

 一読したきりだからもうはっきりとは覚えていないけど、詩があったことだけは確実。


 で。

 え…読書感想文って、感想って、なんでもいいの?


 …いやまあ考えてみれば、例えば『桃太郎』で。


 ◎「きびだんごって食べたことないけど美味しいのかなあ」

 ◎「鬼の側の主張も聞かず桃太郎自身はおそらく被害も受けてないのに勝手に退治とは何様だ」


 とかいうのも感想だし。

 そこから広げて、


 →「きびだんごの作り方調べました! 結構手間暇かかる!(以下作り方)」

 →「岡山銘菓のきびだんご食べました。由来は(以下説明)」

 →「実は桃太郎やお爺さんお婆さんには鬼絡みの壮絶な過去があってこれは復讐の旅だったんだ。(以下その過去話創作)」

 →「桃太郎の絶対に己が正義であるという思い込みは、村人たちやお爺さんお婆さんからの情報が全てであり他の視点や知識が得られなかったが故の無知によるものである。これは、現代社会にも言えることであり~」


 という風に、いくらでも膨らませられるしなんだったら大本の文章全否定だってできるわけで。


 だって、感想だから。思ったことだから。

 何を読んで、何を見て、どう思うか、そこから更に発展してどこまで広がるかなんて、誰にもわからないことだから。

 それらを引き起こした触媒、きっかけが「読書」だから「読書感想文」というだけのことで。


 …っていうかこれ、日常生活での「発想の飛躍」とか、そこまでいかなくても無軌道な雑談とか、そのものだよね?

(女子の会話は話が逸れていく、どころか主題がない、と言われるのがこれで、ラリーというよりはピンポンゲーム? だからまあ、人によってはそんな日常ないよ、と思うかもしれませんが)


 ということに気付いて。

 なんだよー、自分のフィールドに持って来ればいいだけだったのかよー、と、今まで悩んでたのは何だったんだ状態。

 どこでもいいから糸口掴んで、自分の話題を膨らませやすいところに持って行って持論展開すれば、原稿用紙なんていくらでも埋められる。

 推理小説読んで犯人の虐げられていただろう幼少期を想像してもっと社会福祉の充実が必要だよ、とか書いたっていいわけで。


 ええーそれめっちゃ簡単。(*意見には個人差があります)

 

 残念ながら(?)、入学した高校では読書感想文の課題は一年時に二回ほどあった程度で(忘れてるだけかもですが)、この気づきを活用する機会はそれほどなかったのですが。

 『蜘蛛の糸』で、本分より長い読書感想文提出したのは覚えてる。


 …まあ、小学中学でこれに気付いていたら。

 それこそ感想文っていうか二次創作、とか、なんだお前ひとおちょくってんの?と言われそうな持論展開とか、うっかり自由にやりすぎて先生に何か言われるとか面倒事になっていた気もしないでもないですが。   


付記:よくよく考えたら、この方法、小論文を書く時にがっちり活用していました。

   大学の受験対策でいろいろ書いたあれ。小論文対策の選択授業も取ったものだ  から、そこそこの数書き散らしたような…。

   与えられたテーマや文章から、いかに自分が論を展開しやすい切り口を見つけ  るか。それって、ここから見つけてきていた手法なのだろうなあと。


付記2:『米澤穂信と古典部』に収録の「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」が、   正に「行間読みまくって深堀して本文ひっくり返した」読書感想文の出てくる   短編で面白いです。

    同じシリーズの『いまさら翼といわれても』の短編の中にも、『走れメロ    ス』の深堀感想文に言及があったような。

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