クロノスサイドー3
刻也は夫妻を抱きかかえ、守るように倒れこむ。生き残ることが絶望的で、刻也はただ祈ろうとした。都合よく神を、いったいどこにいるともわからない神に頼ろうとした。
しかし、ユニは崩落の中でも凛々しく立ち続けていた。服従など、膝を折ることなど、断じてないと。世界に屈したりはしないと。
両の懐に手を差し込む。引き抜かれたその手には二丁の大型拳銃が握られていた。
「頭引っ込めてなさい!」
ユニは落下物に向かって引き金を絞る。銃口からは赤く輝く弾が放たれ、刻也に襲い掛かる塊を次々に粉砕していく。自身に降りかかる小さな破片は舞うように避け、その間にもユニは手を休めることはない。暗闇の中、ユニの放つ弾丸の赤い軌跡が宙に無数の線を描き続ける。舞が終幕を迎えた時、少女の頭上には真っ暗な空が広がっていた。
「もう大丈夫よ」
乱れ一つないユニの声に刻也は頭を上げ、周囲の光景に唖然とした。濛々と粉塵が漂い、建物は完全に崩壊している。幾本の柱が、痕跡として辛うじて残っていた。
「これ全部ユニが……? いやそれよりも、どうして建物が?」
「単に古くなっていたから、と考えるのは悠長ね。間違いなく、『世界の修復力』の妨害でしょう。運命を変えられそうになって、抵抗しようとしてる。早くここを離れましょう。音を聞きつけたロンドンの兵士がすぐにやってくるわ」
「……なあ、さっき気絶させた兵士たちはどうなったんだ? 俺みたいに助けたのか?」
「兵士? ……ああ、ごめん。そこまで気が回らなかったわ。私としては夫妻とあなたが無事なら何の問題もない。次のループではこんなことは起きないはずだから、今回は運がなかったと思って諦めてもらいましょ」
「……そういうもんか」
「気にいらない? でも、受け入れて。私たちが味方しているのは、この世界の主人公だけ。全ての人間が幸福になれる未来なんて、存在しないわ」
ユニは懐に拳銃をしまう。刻也を見る視線は冷酷な執行者のそれで、迷いなどは微塵もない。彼女が今までにこなしてきた仕事の数々とそこから得た答えの重さは、刻也の疑問をねじ伏せるに十分なものだった。
『ユニ姉さん。三名ほどが崩落の音を聞きつけ、そちらに近づいています』
オクタは二人の会話には触れることなく、淡々と情報を伝える。崩落での怪我の有無について聞かないのは、ユニの力を信じていたのと、わざわざ蒸し返さないように気を遣ったからだった。
「了解。さっさとここを出ましょう。余計な戦闘はできるだけ避けないと」
来た時と同じく、身を影に潜め慎重に、しかし迅速に動く。刻也は二人の大人を担いで動きづらそうにしていたが文句一つ言うこともなく、先を進み安全を確かめるユニを追った。
結局のところ、基地を出るまでの間は拍子抜けするほど何も起きず、あっという間に出口へとたどり着く。しかし。
「入り口が閉ざされてる……レミニアル博士たちの騒動のせいね」
付近を四人の衛兵がうろついている。侵入者を逃がした直後というだけあって、兵の間に流れる空気には張り詰めたものがあった。ほんの少しの物音でも気が付かれてしまいそうで、刻也は自然と身体を強張らせる。
「また気絶させるのか?」
「そうしたいのはやまやまだけど、流石に無理。二人くらいなら不意打ちで対処できても、四人同時は厳しいわ。気が付かれて増援を呼ばれたら、もっと大変でしょうね」
「じゃあどうするんだ? いつまでもここにいるってわけにはいかないぞ」
「そうねぇ……」
ユニは腕を組んで天を仰ぎ、うーんと唸る。刻也もそれにつられるようにして、空を見上げた。
大きな雲がいくつかある以外は、よく晴れている。だが、星の光はよく見えない。月の光と夜も絶えず吐き出される煤混じりの蒸気が雲のようにうねり、弱々しい星の輝きを消してしまっていた。まるで空が濁り、かき混ぜられているようで、刻也はそれに胸騒ぎを覚える。
「ああ、閃いたわ」
「……何を?」
「ここから脱出する方法よ。それ以外ないでしょ?」
「え? ……ああ、そうだった」
胸の騒めきに意識を取られて、自分が生返事していたことに気が付いていなかった。
「しっかりしてよ。今回は刻也にも働いてもらうから」
「俺も?」
刻也は自分を指さし、少し意外な選択肢の確認を取る。
「そうよ。でも安心なさい。難しいことは何もないわ。大船に乗ったつもりでいなさいな」
刻也の声色から不安を感じ取り、ユニはどんと胸を叩いた。
「それで、具体的にはどうするんだ?」
「簡単なことなんだけどね。四人相手するのが無理なら、二人に減らしちゃえばいいのよ」
「うん」
ユニは滑るように刻也の背後に回り込み、その背中に両手を添えた。
「だから、刻也は兵隊に捕まって、両腕抱えてもらってね?」
「うん。……うん?」
「グッドラック!」
「ちょっと待っ——!」
ユニは優しい笑みとともに刻也の背中を勢いよく押しだした。門を守る兵士の前にごろごろと転がり出る、黒ローブの少年。
「……大丈夫か?」
「あ……はい、どうもです」
差し出された手をぐっと掴み、立ち上がる。しかし立ち上がっても、男は刻也の手を離さない。
「あの」
「侵入していたスパイの協力者を確保したぞ!」
「なんだと⁈」
門の周囲を警戒していた兵が声に気付き、二人の下にやってきた。刻也はその短い間に手を後ろに回され、再び地面に顔を擦り付けている。
「どこにいたんだ?」
「知らん、自分で転がり出てきたんだ。それにしても、やけにおとなしく捕まったもんだ」
押さえつけられている腕の下でギクリと身を固まらせる刻也だったが、兵士は不審には思わなかったようで、刻也を起こすと一人は縄で両手を拘束し、一人は頭に銃を突きつけた。
「さあ、牢の中でしっかり絞られてくれよ。うちのお偉いさんをどこへ連れていくのか、とかな」
兵士はギラギラとした目で刻也を睨みつけ、銃口で頭をコツコツと叩く。叩かれている刻也は、ユニの隠れている場所を恨めしやと言わんばかりに見つめていた。
恨みの視線の原因は、連行される刻也の様子をこっそりと伺っている。
「あらら、すっごい睨んでる。さあ、刻也の死を無駄にしないように、さくっと扉を開けちゃいましょう」
ユニは銀に輝く二丁の拳銃を抜きだし、いつでも飛び出せるように身構えた。
『入り口の上の見張り台に二人、狙撃銃を持った兵士がいます。門付近の地上の兵士はユニ姉さんの視界にすべて収まっています。あと、刻也さんはまだ死んでません』
「冗談だってば。じゃあまず……あの人から!」
ユニは脱兎のごとく飛び出して、最も近くにいた兵士を精神干渉系粒子銃の射程内に収める。引き金を引くと同時に、兵士は糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
もう一人の兵士がそれに気が付き銃を構えるが、ユニの姿はすぐに消え、夜闇に溶け込んでいる。兵士は息を呑み、銃口は落ち着きなく四方を行き来する。どこから襲われるかわからない恐怖から助けを呼ぼうとした刹那、後頭部に何か、冷たいものが当たるのを感じた。
「おやすみ」
二人目を悪夢へと誘うと、ユニは門の脇に設置されたをレバーを下に押し下げる。金属の軋み、擦れる甲高い音が喧しく鳴り響き、門がゆっくりと開き始めた。
それを見届けてほっとしたのも束の間、ユニは危機を感じ、倒れるようにして身を捩った。身体の擦れ擦れを弾が掠めていく。見張り台の狙撃手は空になった薬莢を弾き出し、次の弾を装填した。
ユニはすぐに身体を起こし、物資の入った木箱の山で身を隠す。狙撃手の死角から周りの様子を確認しながら、イヤホンの回線を開く。
『ユニ姉さん、急いでください! 騒ぎに気が付いた兵士が次々とこちらに集まってきています! 時間が経つほど刻也さんの救出も難しくなってしまいます!』
「わかってるわ! 狙撃手たちには気付かれないようにしたつもりだったのに……甘かったわね」
オクタの報告を受けながら、ユニは自らの失態に唇を軽く噛み締めた。通信している間にも狙撃手は木箱ごと侵入者を打ち抜こうと次々と弾を撃ち込み、それは次第にユニの隠れている位置へと近づいていく。
「狙撃手を倒すのは諦めるわ。これじゃ見張り台まで届かないし、何より時間がかかる」
ユニは左手の精神干渉系粒子銃をホルスターに収めると、代わりに小さな球を懐からいくつも取り出した。
「煙で視界を潰して、混乱に乗じて刻也を奪取。せっかく開けた門が閉じられる前に、そのまま逃げるとしましょう。煙の中だと私の視界も阻害されてしまうから、あなたは私の目になって頂戴」
『任せてください!』
通信を繋げたまま、ユニは発煙弾のスイッチを次々と押し込み、木箱越しにそれを放り投げる。それらはばらばらな方向に放射線を描きながら飛んでいき、地面の上を転がってく。停止すると同時に弾に多くの亀裂が入り、そこから白煙が濛々と立ち込め、兵を惑わす夜の霧となった。
「出る!」
ユニは合図とともに木箱の影を飛び出し、オクタが伝える物体や狙撃手の情報と片眼鏡にサーマルカメラのように映る人影の映像を頼りに、騒ぐ兵士たちの間を抜けて刻也の下へと走る。
「クソがっ! まだ仲間が居やがったのか!」
捕縛者を連行していた二人自分の身優先とばかりに刻也を乱暴に地面に転がし、武器を取った。刻也は痛みに鈍い声を上げる。強く顔面を打ったせいか、刻也の鼻からは一筋の血が垂れていた。
「ユニ、あとで覚えておけよ……」
「ごめんなさい。でも、すぐに助けるわ」
四人目の声の出現に、兵士は武器を握る手にさらに力を籠める。
「どこだ! 今すぐに出て——」
続きは言葉にならなかった。武器を取り落とし地面を打つ音と、兵士の倒れる音だけが続き、残る一人は小さな悲鳴を上げた。恐怖に武器を振り回すが、それは虚しく空を切るばかり。ユニはそんな兵士の背後に忍び寄り、銃口を後頭部に押し付け躊躇うことなく打ち放つ。
刻也の瞳に映るのは、力なく倒れいく人影と銃を構えながら悠然と歩く少女の姿。その額には汗の一つも浮かんではいなかった。
ユニは懐からナイフを取り出して、刻也の両手を縛っていた縄を切り落とした。
「大丈夫?」
少し申し訳なさそうに伸ばされた手を、刻也は強く握って立ち上がる。
「おかげさまでね。でも、次からはちゃんと予告してくれ」
一言言ってやろうと思っていた刻也は、ユニのほっとしている表情を見て毒気を抜かれてしまった。そんな心を苦笑で誤魔化す。それでも足りずに、コートについた土埃を払ったり、袖で鼻血を拭ったりしていたが、何かに気付いたようにその血の跡をじっと見つめていた。
「どうしたの? やっぱりどこか調子が……」
「あいや、本当に体調は問題ないんだ。ただ、ちょっと拍子抜けというか……」
「というと?」
ユニは首を傾げ、刻也に続きを促す。
「俺たちのしてることって、基本的に命の危険があるだろ? となれば、怪我の一つや二つするのは当たり前だと思う。だから、何かあっても受け止める覚悟をしてたんだよ。自分なりに。パニックになって、迷惑をかけたくなかったし」
「いい心がけじゃない。迷惑どころか、十分役に立ってくれてるわよ?」
「ああ、まあその覚悟のことなんだけどな? まさか初めての流血が鼻血だなんてなあって……おやおやユニさん、もしや笑っておられます?」
ユニは顔を伏せて、身体を九の字に曲げてぷるぷると震えていた。
「いや、全然、笑ってないわ」
「人が真面目な話をしてるのに、それを笑うとは何事ですかね。というか諸々全部ユニのせいだと思うんだけれど」
「そう、そうね。ほんとごめんなさい。でもやっぱり——ふふっ」
「もう隠しもしなくなりましたか……」
小さい咳払いが二人の耳に届く。オクタの姿が、腕時計から浮かび上がった。
『ご歓談に水を差すようで心苦しいのですが、一刻も早い脱出をお勧めします』
「ああ、うん、そうね。煙が散ってしまう前にここを出ましょう。あまり時間をかけるわけにはいかないもの」
そう言って、ユニは刻也の手を取った。
「離さないようにね?」
返事の代わりに、刻也はユニの手を強く握る。ユニは満足げに微笑むと煙の中を走り出した。
ドアは既に閉じられていたが、煙はまだ残っていたので新たにドアの前に立っていた兵士を難なく倒し、ドアのレバーを下ろす。
煙の中を目掛けて撃つと同士討ちになる可能性があると、狙撃手も監視台を降りていた。
ドアの開く音を聞きつけ、次々と兵士たちが集まってくる。煙も既に晴れ始めていた。
「探せ! まだ遠くには行っていないはずだ!」
基地から数十人の兵士が飛び出し、二人一組となって散っていく。暗い森の中にライトの光が走り、交差し、前を行く兵士の背中を照らす。枯れ葉を踏みしめる音が遠ざかっていった。基地の入り口が鈍い金属音を上げながら締まりいくと、基地の入り口は再び静寂に包まれた。
『付近に兵士が数名いますが、既に門から意識は外れています。脱出可能です』
「わかったわ。さっさとここから出ちゃいましょう」
「はいよ。……ほんと、危ないところだった……」
ユニと刻也は見張り台から顔を覗かせる。二人の足元には気絶したマキシード夫妻が横たわっていた。
少し時を戻して、ドアのレバーを下げ、脱出しようとした時のこと。刻也の一言でユニとオクタは肝を冷やした。
「博士の両親はどうした?」
慌てて夫妻を寝かせた場所に戻り、刻也が二人を担いだ時には既に見つからずに脱出することは不可能になっていた。
「これ以上兵士たちを相手する暇はないわよ……。私がおとりになるから、あなたたちだけでうまく逃げなさい。私一人なら十分生き残れるわ。刻也は外に出たらオクタの指示に従うこと——」
『いえ、もっと良い方法があります』
時を惜しみ、不敬と知りながらも、オクタはユニの声を遮った。
『そこの見張り台に隠れましょう。ここからでも霧が晴れる前に隠れきれますし、ドアが閉まっても壁を上から乗り越えられます。急いで!』
有無を言わさぬと言った口調で、オクタがまくし立てる。ユニも刻也も即座に指示に従った。一番状況見えているのがオクタだという、二人の瞬間的な判断だった。
状況をやり過ごして二人がそろりと立ち上がっても、気づく者はいない。ユニは壁を音もなく乗り越え、受け身を取りつつすんなりと着地した。ユニはあなたの番よ、と壁から覗いている刻也の顔を見上げた。
『刻也さん、急いでください』
オクタの声にも焦りが滲んでいて、刻也は事態の余裕のなさをひしと感じるが、それでも、一歩が踏み出せない。
「飛べって言われてもな……」
ユニは軽々と飛んだが、基地の壁は四メートル近くあり、普通の人間ならば間違いなく大怪我、死ぬ高さだった。両脇に夫妻を抱えたまま受け身を取ることなど叶わず、そもそも受け身の技などただの高校生ができるはずもなかった。
「いいから飛びなさい! なんなら受け止めてあげるから!」
ユニは両腕を大きく広げた。
胸を張ったことで、ユニの胸の膨らんだラインが強調される。状況に見合わぬ雑念を、刻也は慌てて振り払う。
「ああ! わかったから! そこどいてくれ!」
夫妻を抱え直し、膝にぐっと力を入れる。目を閉じて、深呼吸を繰り返す。気が付いたら下に降りているんじゃないだろうか。そんな都合のいい夢想を断ち切って、刻也は目を開けた。
「おらああ!」
刻也は敵陣だということも忘れて、恐怖を誤魔化すために大声を挙げた。壁を蹴り、重力に身を任せる。気合の声は途中から叫びに変わり、声が尾を引いていく。みるみる迫る地面。着地の瞬間、刻也は思わず目を閉じた。
人生で最も大きな衝撃が、つま先から頭を駆け抜ける。ずんっとした痛みが膝にきたが、他に痛む箇所もない。刻也は恐る恐る目を開けた。
刻也はしっかりと両足で着地していた。足が土にめり込んではいたが、それも大したことはない。知らず止まっていた息を、大きく吐き出した。
「はい、お疲れ様。休んでいる暇はないわよ? 刻也の声のおかげで、みんな集まってくるわ」
ユニは一声かけただけで、車の隠し場所へと走り始める。刻也は自分とのテンションの差に脱力しながらも後を追う。兵士が集まり始める音を背中で聞きながら、どうして怪我一つなかったのかを考えたが、刻也には「運が良かった」以外の結論を導くことはできなかった。
刻也がユニに追いついた時には、既に監視塔の近くだった。
「街の中に戻りましょ。そこで夫妻を中立国のシーベルに密輸してくれる人間を探すわ」
「は? 密輸?」
「要するに亡命ね。このままロンドンの中にいたら、すぐに連れ戻されてしまうのは目に見えてる。だから、二人は帝国でもロンドンでもない国に行ってもらわなくちゃならないの」
隠しておいた車に乗り込み、四人乗りの後部座席に夫妻を寝かせ、二人は街への道を急ぐ。基地が視界の中で小さくなっていくのを見て、刻也はようやく安堵の息を吐きだした。
刻也は頬杖をついて、ぼうっと景色を眺める。刻也にとっては生まれて初めて見る、異国の景色。国どころか世界まで違うのだが、刻也にはその実感が湧かなかった。基地での喧騒とは打って変わって街への道は静謐そのもので、畑を突っ切る土手の上や森の中を走り抜ける。耳に届く音といえば、車の機構の蒸気機関が立てる空気の抜けるような音と、タイヤが蹴り飛ばした石ころの転がる音だけだった。
「なんか、生き物の気配がないな。不気味な感じだ」
夜の田舎道、明かりといえば月明りと車のライト、点滅する腕時計くらいのものだ。
「刻也はお化けとか信じるタイプ?」
刻也が怖がっていると思ったのか、運転するユニの表情は少し楽し気である。
「いや、そういうわけじゃないけど。でももしかしたらいるかもしれない、とは思ってる」
「私は見たことあるわよ?」
「……マジでか」
刻也の表情が驚愕に変わったのを見て、ユニはクスクスと笑った。
「仕事先の世界がお化け、ゴーストの世界だったこともあるから。といっても、結局彼らは超高密度のエネルギー体で、それに意思が宿っているって感じだったの。あまりホラー映画みたいな印象はなかったわね。そんなに気にするほどのものでもないわよ?」
「そうは言ってもなあ……」
ぽりぽりと頭を掻いて、また景色に顔を戻す。口を閉ざせば再び二人の間に沈黙が流れるのは当たり前のことで、刻也は少しばかり気まずさを覚える。横目でちらりとユニの様子を伺うが、二人とも同じ思いだったようで目が合ってしまい、慌てて目を逸らす。そんなことを繰り返しているうち、刻也は気が付いた。
「ユニ、何かおかしいぞ」
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