護ると心に決めた

 アヤは焦っていた。

 だが、隣にいるか弱い雛鳥のようなサヨと、なんでも背負い込んで息が詰まりそうなジウに、それを悟られたくはなかった。


 シノが、エトランゼを殺す。

 そうしないと天球儀は止まらない。


 アヤはそれが納得いかなかった。

 アータ博士も、マウナも、皆、時間がない中でも、どうにかして人々を護ろうと、あらゆる手段を残していた。

 今だって、その手段のどれかで、どうにかならないのかと思う。

 出来ることなら、机にかじりついて、この記録書を隅々まで調べたい。今すぐにでも、だれも苦しまない方法を見つけ出したい。


 同時に、無理だと、冷静な自分が言う。


 ものすごくイライラした。

 そのイライラをぶつけるように、アヤは前進していた。


 憎たらしいほど無力なこの頭が必死に考えた結果、見出した希望は「自分達が扉を開けて外へ出れば、カゴミヤ計画は終了とみなされ、女王の椅子が自動で機能停止するのじゃないか」という、淡い淡いものだった。

 そんな機能があるのかどうかも解らない。

 だが、エトランゼが「カゴミヤ計画の遂行」という原理で、無機質に動いているのだとすれば、可能性はあると思う。


 ――無機質じゃないか。


 エトランゼは泣いていたし、叫んでいたし、サヨを案じていたし、どう考えたってそんな単純な状況じゃない。


 だが、もう自分はこの一点に賭ける以外にない。

 ジュナが現れたら、自分が盾になってでも、ジウとサヨを護ろうと、そう心に決めた。


 眼前に階段が見えた。

「この階段を上った先が、外への扉だ」

 アヤがそう言うと、前を歩くジウの背中がびくりと震えた。


「わかった」

 ジウはいつもと変わらないように、努力している声で答えた。

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