月を頂く塔、鎮魂曲3

 ジウは、ぐずっと音をたてて鼻をすすってから、跪いた姿勢のまま、サヨをまっすぐに見て言った。


「なあ。俺たちと一緒に、地下の部屋に行ってくんないか? そこにいるヤツに、アンタを連れてくるよう頼まれてんだ」


 サヨは、ジウの「地下」という言葉に反応して、目元を覆い隠していた手を離した。

 目元が赤く腫れていた。


「地下……?」

「そう、この下だ」

「あなたたち、そこに、入れるの?」

「? ああ」


 サヨの表情がみるみる強張る。ジウには、それが怯えているのか、単に驚いているのか解らなかった。


「そこに……いる人?」

「ああ。カラスと言ってた」

「カラス?!」


 サヨの声が大きくなった。

 この反応は何だろう?

 ジウはサヨの反応が気になった。

 何か知っているのか聞こうとしたが、ユキがジウの肩に手を置いて止めた。


「とりあえず、カラスの所へ行こう。ジュナに追い付かれたら困る」

「お、おう」


 ジウは言われて、今、逃げている最中だったのだと思い出した。

 急いで地下への扉の前に立ち、魔法円を見つめて鍵を開ける。

 アヤがサヨの手を取り、シノが前に立って声をかけながら、ゆっくりと階段を下りていった。

 サヨはずいぶん緊張しているようだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る