夢と現実1
ジウが、ユキの様子を心配して、ユキの方へ近づこうとした時、アヤの苛立った声がした。
「ジウ! 来てくれ、早く!」
「は? 何、どうしたよ」
ジウはもう何が何だか解らなくなり、投げやりな気分になって立ち上がった。ユキもゆるゆると立ち上がる。
「いいから、早く! ここに立ってくれ!」
アヤは通路の奥にある扉の前に立って、必死の形相で声を荒らげている。隣でシノがオロオロしている。
「ジウ、行こう」
ユキに促されアヤの元へ行くと、アヤは「早く早く」と苛立った声で言い、扉の真正面にジウを立たせた。
扉には魔法円が描かれていた。ジウは、この扉をどこかで見たような気がした。
ジウが魔法円を見つめると、魔法円が眩しく光り、扉からガチャリと音がした。ジウは、記録書がなくとも自分が鍵として機能することに、少し驚いた。
直後、アヤがものすごい勢いで扉を開き、中に入った。
シノが慌てて後を追う。
ジウも、自分の鼓動に急かされるように恐る恐る中に入る。
中は暗かったが、すぐにシノの胸元の飾りが光って、中の照明がぼんやりと灯った。
アヤが、まるで中に入ったことがあるかのように、迷いなく部屋の奥へと進んで行く。
ジウは、部屋の中央にある丸いテーブルを見て、息を呑んだ。
テーブルには見覚えのある布が置いてあった。
魔術が施された、重みのある赤い布。
先ほど、夢で見たものと同じだった。
ただ、夢で見たときは、天球儀の上にかけられていたが、今は下に天球儀はなく、天球儀が置かれていた場所に、きれいにたたまれていた。
そっと近づいて、手を触れてみた。
布の魔術が解かれたのか、それとも自分がアータの子孫だからか、攻撃魔法は発動しなかった。
ユキがいつの間にか追いついてきて、隣に立った。
「見覚え、あるの?」
ハッとしてユキを見た時、奥でガタンと大きな音がした。
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