運命の小鳥たち

目覚める小鳥たち

 ジウは、通路で目を覚ました。

 自分は一体どうしたのか。

 確か、アヤが何かを言ったとき、ひどい頭痛に襲われて、倒れこんだのだ。

 アヤは、何の話をしていたのか。


 思い出せない。


 倒れていた間、見ていた夢はしっかり覚えているのに、倒れる少し前のことがよく思い出せない。


 ジウは、夢の中の自分が「ジュナ」と呼んだ女性騎士のことを思い出した。あの、女守護者にそっくりだった。

 ただ、瞳には光があり、表情もコロコロと変わっていた。

 虚ろな、人形のような顔などではなかった。

「ジュナ」

 ぼそりと声に出してみた。

 当然答える声はなかったが、あの女守護者のことが少しだけ「人」に思えた。

「守護者」ではなく、自分と同じ「人」だと。


 ふと、すぐ横で何かが動いた。

 ジウは我に返って振り返った。自分の周りには、シノ、ユキ、アヤが倒れこんでいた。

 動いたのは、シノだった。

 どうやら四人全員で気を失っていたらしい。


「シノ、大丈夫か?」

 とりあえずシノに声をかけると、シノが顔を上げた。


「お前……」

 シノの顔を見て、ジウは絶句した。

 シノは両目から、大粒の涙をぼろぼろと流していた。


「え? 何? 俺……」


 当人は気付いていなかったようで、ぼうっとした目つきのまま頬に触れて驚いていた。


「何だこれ……とまんない」


 そう言うと、しゃくりあげながら泣き出してしまった。


「お前、大丈夫かよ、ほんと」

 ジウがシノの方へ行こうと立ち上がろうとしたとき、ユキとアヤも目を覚ました。

 ジウは二人にも声をかけようとしたが、アヤは目を見開いてジウを見たかと思うと、素早く立ち上がり駆け出してしまった。


「あ、おい、アヤ君!」

 ジウが驚いて声を上げると、シノも我に返ったように泣き止んで、よろよろと立ち上がった。

「アヤ、待って」

 シノはそう言いながら、よたよたとアヤを追いかけた。

 ジウがユキの方を振り向くと、ユキは呆然と自分の両手を見つめていた。

 何だかユキらしくない。


「ユキ、お前も大丈夫か?」

 ジウが声をかけると、ハッとして顔を上げた。

「ああ、ジウ。ごめん。大丈夫」

 ユキはまだ少しぼうっとした様子で言った。


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