探索

 よほど幸運なのか、ジウ達は硝子森の奥、砂嵐の前まで来たが、守護者には全く出会わなかった。

 そもそも、好んで硝子森に向かう者など、そうそういないが。

「この辺だと思う」

 少し先を歩いていたシノが振り向いて、ブンブンと手を振った。

 硝子森など子供の頃以来だったジウは、少しだけワクワクしていたが、悟られないように仏頂面を心掛けていた。

 色を失い、真っ白になった木々達、枝が落ちて砕ける儚げな音。歩を進める度に、足にすがり付いてくるような砂達。

 綺麗な景色だと思った。

 綺麗だけれど、どこか寂しい。


 ――以前はこんな姿ではなかったろうに。


 自分の思考にビクリとして、ジウは一瞬立ち止まった。

 ――今、何かおかしなことを考えなかったか? 何を…… 何を思った?

「ジウ、どうかした?」

 ユキに声をかけられ、ジウは我に返った。

「ああいや、ぼーっとしてた」

 ユキの顔が心配そうに歪んだ。ジウは慌てて取り繕う。

「いや、マジ、何でもねーから。早く行かねーと、シノ達待ってるだろ」

 ユキは少し悩んだ様子を見せた後「おーい!」と叫ぶシノの方へと向き直った。

 早く来いと叫ぶシノの横では、眼鏡をかけたアヤが険しい顔付きで記録書を読んでいる。

 ユキが「ここ?」と聞くと、シノが「たぶんね」と答えた。

 アヤは何やらブツブツ口の中で呟きながら、記録書と周囲を見比べるように、顔を上下させている。

「なーんも見えねえけどな」

 ジウは、砂嵐を間近で見て言った。

 サアサアと僅かに音を立てながら、粒を見分けられないほど小さく細かく砕けた硝子の枝達が、砂となって流れている。

 上を見上げると、ジウ達の頭上の遥か上、文字通り天に届くほど高く、砂が巻き上げられている。

 足下を見ると、嵐に向かって少しだけ下り坂になっている。ぐるぐると街を取り囲む砂嵐が、地面を削ったのだろう。

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