逃走の理由
ジウは、何から説明したらいいいのか、少し迷った。その隙にユキが口を開く。
「いや、何となく窓の外を見たら、もう戒厳時刻が迫ってるってのに、ジウが走ってるのが見えてさ。しかも、何か変な、武器を持った守護者っぽいのも見えたし」
「はあ?!」
事も無げにユキが言うと、シノとアヤが同時に叫んだ。
「自分の家の前でトモダチが危なそうなことになってたら、助けるだろ? 誰だって」
ユキが眩いばかりににっこり笑ってジウを見た。ジウはあそこがユキの家の前だったことを今知った。
「アンタ、一体何があったんだ!」
アヤが真剣な声で詰め寄ってきた。ジウは少し引きながら、鞄からあの本と絵本を取り出した。
「俺にもよくわかんねぇって。家に帰ってから、何となく、この絵本を読んでたんだよ。この絵本、この、分厚い本が出てきた棚に一緒に置かれてて、うっかり持ってきちまってたんだ。どんな話だっけなと思って、読み返してたら、ふと思ったんだよ。この絵本の中でさ、満月の塔が『お城』って名前で出てくるだろ。ってぇことはさ、満月の塔には、今もこの『お姫様』と『カラス』がいんのかなって、そう思ったんだ。そしたら、その時、家に守護者が来たんだ」
ジウは我ながら支離滅裂だと思ったが、自分でも事態を理解できていないのだから、どうしようもなかった。それでも何とか皆に伝わるよう意識して説明した。
守護者が来て、どうしてか逃げなくてはいけない気がして、逃げ出してしまったこと。
女守護者に襲われたこと。
ユキと走って逃げてきたこと。
できる限りを語り終わって、ジウはカップの中の飲み物を一口飲んで、我知らず大きな溜め息をついた。
必死に話しすぎて、呼吸がうまく出来なかったのだ。
一息着いてみると、シノはぽかんとしていて、ユキとアヤは難しい顔をしていた。
「ジウさ、そもそも家に来た守護者は、ジウに用があって来たの? 何かされたとか、言われたとか……」
ユキが聞いてきた。
「いや、玄関に立ってんのを見たってだけで、何だかもう逃げなきゃいけない気がしてよ。それで、どうしてもじっとしてらんなくて……」
ジウは話していて、気が滅入ってきた。まるで自分はアタマがおかしくなたようじゃないか。
「え、じゃあ、ジウがその女の守護者に襲われたのって、何でなの? 戒厳時刻破ったからってこと?」
シノが言うと、すぐさまユキが反論した。
「いや、ジウが俺の家の前に来たとき、まだ戒厳時刻にはなってなかったはずだ」
「じゃあなんで?」
「――決まってる」
アヤが鋭い声で割って入った。ユキもシノもジウも、驚いて、弾かれたようにアヤに振り返った。
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