集合

 ジウは、家の中の暖かさと、ぼんやりとした穏やかな灯りに少しほっとした。

「悪いな、いきなり」

「いーよ、いつものことじゃん?」

 ケラケラ笑いながらシノが隣の部屋へと歩いて行く。

「ジウとユキだったよ、アヤ」

 シノの言葉に、ジウは耳を疑った。

「あれ、アヤ、泊まりに来てたんだ」

 先に隣室へ入ったユキが言った。

「今日は休寮なんだ。忘れてたけど」

 アヤの声がした。

 アヤの言う休寮とは、王立研究所の寮に月に一度ある休みの日で、研究員たちの息抜きと、寮で働く職員を一斉に休ませる為にある。この日ばかりは、研究員も各々実家へ帰る等しなくてはならないのだ。

 アヤは両親も既に亡くなり、兄弟もおらず、一人で実家を管理維持していくのは難しく、家を手放してしまった為、休寮の日はシノの家に泊めて貰っていた。

「アヤもいんのか?」

 信じられない幸運に出会ったような驚きで、ジウは思わず室内に駆け込んだ。

 室内はジウの家の玄関より狭かった。天井に、小さいがとてもキレイな硝子製の色とりどりのランプが、いくつもぶら下がっている。部屋の中央にジウの勉強机ほどの大きさの食卓があり、椅子が四つあった。

 そのうちの二つに、シノとアヤが座っていて、三つ目にユキが座ろうとしたところで止まっていた。

「ジウ、どうしたの?」

 ユキが中腰のまま言った。

 ジウは、そこでようやく自分が必死になっていたことに気付き、顔が熱くなって、慌てて俯くと、残りの一つの椅子に乱暴に座った。

「ジウ、アンタ、こんなトコに来るなんて、何かあったのか?」

 アヤが、いつもよりさらに深い皺を眉間に寄せて言った。ジウはまだ顔が赤い気がして、俯いたまま動揺丸出しの手付きで、鞄を食卓の上に乗せた。

 シノが席を立って、色とりどりの硝子を組み合わせた、ステンドグラスのようなカップに、飲み物を入れて持ってきた。ユキとジウの前に一つずつ置く。見ると、アヤとシノの席にも同じものが置いてあった。

 カップの中には、果物の輪切りが沈んでいて、温かく甘い香りがした。

「前から思ってたけど、キレイなカップだよね。シノが作ったの?」

 ユキがカップを持ち上げて、光に透かして見つめながら言った。無数のランプの灯りが、半透明のカップを通って、中の液体の影をユキの顔に映し、色のついた影がゆらゆら揺れた。

 キレイだった。

「ううん、それは母さんが作ったやつ。俺はまだまだ、食器は上手に作れないんだよね」

 シノはニコニコして答えた。

 ジウは、カップの中の小さな波に、ランプの光が反射して輝いているのを見て、素直に感動しながら、一口、飲み物を飲んだ。

 少し気持ちが落ち着いた。

「なあ、アンタたち、一体何があったんだ。もう戒厳時刻だぞ」

 アヤが落ち着かない様子で聞いてきた。

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