内緒話
学院の正門から、真正面の時計台を見る。始業までまだ一時間以上もある。
ジウは教室ではなく、まっすぐに図書室へ向かった。アヤはいつもこの時間には既に図書館にいると、シノから聞いたことがある。
全く病気だとジウは思う。アヤは自他共に認める本の虫なのだ。
図書室に入ると、入り口の受付は空席だった。図書委員だってこんなに早くは登校していないのだ。
それでも本を読みたい学徒達の為に、鍵は教師が開けてくれる。ただし、図書委員不在時は図書の貸し出しは禁止となっている。
図書室の奥の壁際に、壁に向かう形で自習机が一列に並んでいる。その一番奥にアヤは座っていた。
他にも数人、生徒の姿が見えるが、皆くすんだ水色のシャツを着ている。チラチラとこちらを窺う視線をジウは感じた。
こんな時間に来る白シャツはいないのだろう。中にはあからさまに嫌悪のこもった目で睨み付けてくる者もいる。
ジウはおかまいなしにズカズカと入り込み、アヤの隣に座った。
「よう、オハヨ」
小声でアヤに声をかけると、アヤはこちらを見るなり目を見開いて硬直した。本を読むためだろうか、眼鏡をかけている。
「フン、驚いたかよ?」
ジウが勝ち誇って笑うと、アヤはみるみる嫌そうな顔になった。
「アンタ、それ言う為に来たワケ?」
軽い怒りを込めてアヤが言うと、ジウは鞄から、ジウには似つかわしくない厚い本を取り出した。
「まあそれもいいんだけど、これ、アヤ君に見せようと思ってよ」
アヤは眉間に皺を寄せて、ジウから本を受け取った。
手元におき、表紙を書かれたタイトルを指でなぞりながら読み、目を見開いた。
そして、慌てた様子で表紙を開き、一項目の文章を読み、さらに目を大きく開いて、直後、困ったような顔をした。
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