第十六話「天上の遊戯3」
馬鹿一人はもはや放置して、続いての問題児。
もとい参加キャラクターは……。
「俺の名はビリー・ダークホーム。フリーの傭兵だ」
低めの声を出しつつ渋い語り口調で紹介しているのはなんと……。
紅一点のはずの相田麻耶その人であった。
先にも延べた通り、女性プレイヤーが男性キャラクターを使用してはならない、なんてルールは存在しない。
存在しないんだけどさ。
――何このガチムチ兄貴。
キャラクターシートを覗き込む。
つなぎの様な僧服を身にまとった、笑顔の素敵な益荒男が描かれていた。
なんというか、尻からエナジーをチャージして叩き起こしてくれそうな感じの。
「良かったのかい? ホイホイ俺を仲間になんて入れちまって。俺は出家してたって構わねぇで喰っちまうような破戒僧なんだぜ?」
「ウホッ……良い男」
隣でノリノリで返してるけどリョウ、お前良いのか? 彼女がこんなんで。
「ふっ、麻耶ちゃんの趣味なら、ボクは全てを受け入れるよ……」
「涼きゅん……!」
両手を握り締めつつ見つめあう二人(バカップル)。
出禁にすんぞマジで……。
というか、これでまだ二人目とか。
BLだとか腐女子だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気がするよ……。
で、そんなネタキャラめいた何かを前にしたアキラはと言うと。
「ふむ。耐久性と防御力、抵抗性を高めた半タンク型のプリーストか。スキル構成的には問題ないな。よしとしよう」
以外にもあっさりスルーしていた。
「俺とパーティ……く・ま・な・い・か?」
というかもう、諦めの境地とも言えるのだろう。
合唱。
続いて、リョウのキャラクターシートを覗いてみる。
「どれどれ……」
名前:ジルベール・D・クラウン・アンドリュウス・サンダイン・アドウェルサス・トルトニス・グラキアーレス・カトルフィーユ・フォン・マクガーベル三世。
「……」
長ぁぁぁい!! 説明不要!!
名前の段階で厨二病をわずらっていた。
「あだ名はジルだよ! 隠されし身分で高貴な家柄だから、最高級品の魔法鎧装備しておくねっ♪」
さる高貴な身分でありながら陰謀により実家を捨てざるを得なかった竜と魔族と天使の血を引く闇の王と光の王に祝福されて選ばれし勇者にして魔王……。
……設定もかなりのお手前だった。
イラスト欄には、麻耶嬢に書いてもらったのだろう。
銀髪の、全体的に恐ろしくキラキラした厨二病的美男子が描かれていた。
しかも色鉛筆でカラーだ。
うわぁ、お目々の色が左右違ぁう……。
「
それでも、タケシのウサ耳娘より威力が高いのはもう、見なかった事にしておこう。
「殴られて大喜び……ということはまさか、ドMな受け専系美男子!?」
「……さすがにそれはちょっと」
最低限の尊厳だけは守るべく、必死なようだ。
合唱……。
で、僕の番。
「カルミナ・ブラーナ。人族16歳の盗賊だよ」
とりあえず、目立ちたがりのメンバーがそろっているため、ダンジョン探索スキルが足りない。
という事で、無い部分を補っていたらこうなった。
「流派奥義の
回避系に特化させる事も考えたのだが、サポート系の充実を試みてみた。
「うわ……
「相変わらずカッツカツだな~」
「うむ、これくらいでなければ俺のシナリオでは死ぬだけだからな」
実際、アキラのシナリオは結構な確率でへヴィな難易度であるため、慣れるとこうなってくるのだ。
……しかし。
前まではこの役割。リョウのポジションだったんだけどなぁ。
かつて、カツカツ。つまり
それが……。
「麻耶にゃん麻耶にゃん♪ 麻耶にゃんにゃんにゃ~ん♪」
「涼きゅん涼きゅん☆ 涼きゅんきゅ~ん☆」
こういった関係になってしまって以来、リョウはガチ盛り系カバーリングナイト一択だ。
ちなみに、リョウのキャラクターの取っている身代わりとはその名の通り。
周囲の人物が受ける攻撃のダメージを身代わりになって受け止める特殊行動だ。
つまり……。
「麻耶にゃんは僕が守るよっ!」
「涼きゅん……素敵……」
せめて空想の世界内では男らしくありたいのだろう。
愛する人を守る一途なキャラ付けが多いのだった。
もっとも、今回の世界内では男同士なんですけどねっ!
こんな風に、TRPGの世界では『ゲームの中だけでも……』と言った、本人の理想や願望が投影される事が結構多い。
筋肉質で大柄なタケシは可愛らしい美少女を。
BL大好き隠れ腐女子な麻耶嬢はイケメン同士のカップリングを。
ちなみに僕は――。
ファンタジーというありえない世界で、本来なら一生味わえないであろうスリルと大冒険を。
感動の物語と共に、登場人物として体験できるのなら、何でもいいんだけどね。
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