鈴の音

 いやまあ、大した話じゃないんですけどね。


 先月、祖父母の家に行ったときの話です。

 暗い廊下の向こうからですね、チリンチリンって小さな鈴の音が聞こえたんです。高いとこじゃなくて、膝下くらいの低い位置でなってる音だったと思います。ずっとなってるわけじゃなくて、何秒かおきになるんです。特に規則性もなかったと思います。

 聞いたことのあるような音だな、としばらく考えていたら、いつの間にか遠くに行ってしまうように聞こえなくなってしまってしまいました。


 あの鈴の音はうちの家にいる猫の鈴だったんです。少しへこんでいるせいでちょっと勢いのない音、あの首輪についてる銀色の鈴の音と全く同じだったんです。


 もちろん、祖父母の家には連れてきていませんから、おかしなことだと思いました。ただ、こういうことが起こるときって何かよくないことが起きる前兆だという話がよくあるじゃないですか。それで心配になって、留守番をしている弟に電話したんですけども、猫になにか起こるなんてこともなく、身内になにか起こるということもなく。ホッとはしましたけど、なんとなく心にあのことは残っていますね。あの鈴の音の主は本当にうちの猫だったんでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢現虚実伝聞異聞録 黒いもふもふ @kuroimohumohu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ