第7話

 セカンを受け入れてあれから、いくつの試作品が出来ていた。

 その中でもこれは、相当なことができると予感できるものがある。


 最初にテストをした名刺入れにナンバーを振ってある。

 デザイン的にしているので、そうそう気になるものでもないが、これが二つで一つのペアになっている。


 いくつかの制限機能をかけることに成功して、特定の紙片以外は利用できないようになっている。


 そう、紙片だ。

 これはいわゆる、通信道具の類になるのだろう。

 紙片が入ることで、魔力の吸い取りが多くなるから、そこそこ鋭い人間ならすぐに気づくだろう。

 睡眠中などの問題もあるが、その場合は一時間程度で共有をやめるようにタイマー設定されているそうだ。

 もしそのまま利用していても魔力の消費も、最低限の魔力一回分以下に抑えることに成功したしな。


 これらを、この国の商隊達に持たせることで、指示を出したり情報をその場にして仕入れることができる。

 このアドバンテージは計り知れんなぁ。

 "地図"スキルで誰がどこにいるかわかるからというのも大きいだろう。


「ご指導ありがとうございました。

 おかげ様で、僕の"空間"スキルの可能性が見えてきました。

 攻撃魔法にこそならないものの、色々便利なものができそうです。

 人の迷惑になるようなものを作らないように気を付けたいので、僕が流通させてもいいと思ったものに対して、最終的は判断を下してもらえますか?」


「ま、それは私の仕事でもあるけど、その前に勘違いしてはいかんよ。

 今のままでも、色々な利用法が考えらえる。

 個人ではなく、軍に、組織に、国にだ。

 物がもっていかれなくても人が使うのだから、何かしらの問題は出てくるさ。

 だからこそ、まずは管理できる体制で使ってみる。

 問題があれば解消する。

 根本的に問題があれば、破棄をできるようにする。

 こうして管理すればいい。

 無作為に、無意識にばらまくことさえしなければ、迷惑は最小限に抑えられるさ。」


「王様、ありがとうございます。

 それでは、失礼します。

 取り急ぎ、勇者に料理を届けてきます。

 そろそろ、作り置きのものが無くなっているとおもうので。」


 なるほど、やっぱり料理当番も兼ねていたのか。

 あいつ、狩りの後の下処理はできるけど、料理自体は大雑把だったからな。


 しかし、届けるのか。


「おい、ちょっとまってくれ。

 それなら、手紙を一緒に入れておいてくれるか?

 食料と一緒なら、気づくと思うからな。

 ……あと、王様ではない、大将と呼べ!」

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勇者の仲間の解雇録 せいじゅうろう @Seizyuuro

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