カオス戦争、勃発
シャナルア
1話完
ただ、戦っていた。
重い銃を両手で持ち、戦場を颯爽し、敵を撃ち抜き、叫び、避けて、そしてまた撃ち、戦場の女神様の微笑みをもらう妄想をして、駆け抜けた。
そんな中、アニメで見たことのある、巨大ロボットが空を飛び、敵の基地を破壊し尽くす光景を目の当たりにした。
「ガンダムじゃん」
そう、ガンダムが敵を虐殺しまくっていた。
何一つ夢のない現実だった
-----------------------------------------------------------------------------------------------
「ナイル軍曹、お前には新たな作戦についてもらう」
戦場を離れ、基地にいるオレは、すっかり戦場のことを忘れて、女遊びに明け暮れていた。
しかし、ブリーフィングに呼ばれて最初にそう告げられた。
「まあ、そろそろ戦場でどんぱちしてぇと思ってたんだ。内容は?」
「お前には中世にタイムスリップしてもらう。そこで殺せるだけ人を殺してもらう」
「は?」
作戦の内容はいかに訳された。
・目的:敵戦力の弱体化
・方法:時間遡行を行い、現代武力を持たない時代の敵民族を攻撃し、現時代の兵士の誕生を阻止する
そうして、オレはタイムマシンにのり、中世の敵国に向かった。
オレと仲間たちは近くの村に向かった。
そこで、老若男女残らず殺し尽くした。
無論、銃は使っていない。
オレが着込んだサイボーグスーツには、サムライブレードとホーミングボウガンと火炎放射器が装備されているため、戦で逃げ切れず、巻き添えを食った村にしか見えない。
近くで戦があるらしい。そこに向かうことになった。
すると、中世時代の敵兵を見ることができた。
「Oh、あれが噂のサムライか」
黒い甲冑と兜を被り、脇には刀を差すあのサムライだ。
仲間の一人は感嘆の声を上げて喜んでいた。
「殺すのは惜しい。持ち帰って博物館に飾りたい」
「ばかいえ、動物園だろ」
お互い無駄口を叩くが、任務を忘れてはいない。
戦場にいるサムライたちに向け、ホーミングボウガンを放ち、次々と殺していった。
「何もんじゃー!貴様ー!」
そう言って切りかかってくるやつもいた。
戯れにオレの体を切らせてみたが、サイボーグスーツに穴の一つも開けることはなかった。
手首をサムライブレードで切った。
ぎゃあと声を上げたが、なぜか逃げることなく、残った手で刀を握り、振ってきた。
そいつはオレの仲間たちから、殴られ、蹴られ、振り回され、おもちゃ同然の扱いをされ、惨殺された。
------------------------------------------------------------------------------------------------
俺たちはタイムスリップ先で大活躍した。
だがしかし、作戦は失敗だった。
元の時代では敵の戦力の減衰率は大したことがなかったらしい。
わざわざタイムスリップするエネルギーと予算のことを考えたら、むしろ非効率的だったことが証明された。
その報告を行った、今作戦の提案者である天才科学者ツヴァイ博士はこう述べたという。
「確かに作戦は失敗だった。が、これは次の発明につながる素晴らしい発見だ!
この成果を次に活かしたくて仕方がないくらいだ!
前に行った『ガンダム作戦』を覚えているかな?
あれは日本人が好んでいた国民的ロボットを用いることで士気低下を図ったあれは、見事に成功した。
そして、この失敗は、あれ以上の成功を秘めておる!はっは!任せてくれたまえ!
予算さえくれれば、いくらでも実現できるアイデアがある。
この戦争の完全勝利は、ワシにかかれば朝飯前だ」
その後すぐ、新しい作戦が行われた。
サムライたちは、数万単位で我が国に拉致されて、サイボーグ手術を受けた。
3ヶ月後に、サムライサイボーグたちが戦場に投入され、敵軍目掛けて特攻が行われた。
サイボーグ化されたサムライを殺せば、仲間か自分か身近な誰かが生まれなかったことになるため、敵は満足な反撃ができなかった。
この作戦は大きな成功を収めた。
------------------------------------------------------------------------------------------------
この戦争は、順風満帆。
風向きはこっち側。
ガンダムは地を薙ぎ、
サムライサイボーグは子孫を根絶やし、
優秀なドローンはどこに逃げようと人を感知し、逃がすことはなかった。
しかし、あるピンク色のひらひらした服を着た美少女がこの戦場のど真ん中に落ちてきた。
「みなさーん!こんにちわー!」
その手にはステッキが握られていて、まるでアニメに出てくる魔法少女のようだった。
「私はね!魔法少女あかりっていうんだー!よろしくね!」
キュピーンとポーズを決める。
その言葉を言っている間に、ガンダムも、サムライサイボーグも、ドローンも兵士たちも攻撃していた。
しかし、彼女に攻撃が通らない。
彼女は少し寂しそうな声でこういった。
「たくさん、人がしんで、私たちは考えました。
一体何を信じていいのかをいっぱい考えました。
あなた達が作ったSF兵器か…
夢と希望と愛と願いのどちらを信じるか」
「私達は!夢と希望と愛と願いを信じました!
だからわたしはみんなのために魔法少女になることができました!
みなさんも私達とともに夢と希望と愛と願いを分かち合ってもらいたい!
だから!
さようなら悲しい人達!」
ステッキは光を放ち、半円状にあたりが包まれた。
ガンダムは全身に花が包まれて動かなくなり、
サムライたちはもとの時代に帰り、
兵器は全て、おもちゃに変わっていた。
こうして戦争は終わった。
あまりに馬鹿げてありえない話だが、これが真実だ。
マッドサイエンティストの見た夢が現実になったように、
夢と希望と愛と願いってやつが現実になってもおかしくないだろ?
カオス戦争、勃発 シャナルア @syanarua
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます