第12話 第一話は「面白い」よりも「◯◯」なことが大事なのだッ!


「おじゃましまー……あれ?師匠、仕事中っしたか」


 いつもの昼下がり。自宅で作業していると、ほむほむくんがやってきた。

 ちなみに親戚ゆえ、合鍵は普通に渡しているし、自由に入れと言っている。

 一々玄関まで迎えに行くのも面倒だからな。


 そんな感じで部屋にあがってきた彼の方を一瞥し、ふと思案する。

 ふむ、いいタイミングだ。休憩でもするか。


「いや、一段落したところだ。これから休憩だ。君こそどうした?」


 電子タバコ(イチゴ味)を取り出し、スイッチを入れ、煙を吐き出す。

 ふぃ〜……。

 仕事上がりの一息はとても美味しい。

 煙を吐き出すのと


「いやー特別用ってわけでもないんすけど、

 師匠のとこになんとなくお邪魔しようかと……」


 ……なんとなくで来るのか。別にいいが。


「ん?あれ?師匠。それって、今作ってたチラシっすか?」

「これか?まあそうだな。正確にはセールスレターと呼ぶがな」

「レターすか。了解っす。ところで、それって……一段落ってことは、大体完成してるすか?」

「いや、まだこれからだ。キャッチコピーを作り終えただけだな。

 だが、それ自体はもうほぼ完成だ」


 パソコン画面を眺めて、そう返す。


「え、それ完成してるんすか?それ、おかしくないっす?」


 おかしい?そんなことはないはずだがな。

 モニターに表示された、たった今完成したばかりの

 セールスレターを見やる。ふむ、いい出来なはずだ。


「……何がおかしいんだ?」


「だって……。そのレター、キャッチコピーが


 『詐欺師の裏道〜”一般的な善人”をあくびが出るほど楽にカモにできる方法、教えます』


 ってなってるっすよ!」

 

 ああ……なるほど。そういうことか。


「これ、前の法則通りだと、ターゲットって詐欺師とかっすか?

 何を期待させるかって、これだと初心者狩りの方法を教えるとしか読めないっすよね!?

 詐欺師に、初心者をカモにする方法教えるんすか!

 師匠は一体、何を売るつもりなんすか!?

 ハッ、もしかして師匠は実は売れてなくて、ついに悪の道へ……!

 ダメっすよ!お金なくても警察の厄介はダメっすよ!

 ごはん食べれなくなったら、うちにきていいっすからあぐぅ!」


 何やら意味不明な結論にたどり着き始めたほむほむくんに、

 ビシッと彼の頭に軽いチョップを叩き込む。

 何を言い出すのやら。


「心配は大変結構だが、もう少し考えたまえ。

 私がそんなもの売るわけがないだろう」 


 全く、前回教えたことをキッチリ覚えて身につけてるのは偉いが、

 しかしそれでももうちょっと考えてほしいものだ。

 それに金に困ってたら、とっくに家を売っている。持ち家だぞこれは。


「い、いやまあそうっすけど……。

 じゃあこれ、誰に何を売るやつなんすか?」


「セールスのまっとうなやり方を、セールス初心者に売るためのレターだ」


「えぇ……ッ!そ、それなのにこのキャッチコピー!?

 おかしくないすか?」

「何がだ?ん?」


 まあ、何言いたいかは大体予測がつくが、言わせてみよう。


「だって、師匠、前。タイトルに必要なものは『期待』って

 いってたじゃないすか。あと『選別』と『集客』だって」

「まあ言ってたな」

「他にも、誰向けかがすぐ分かるのが大事って言ってたっす!

 わかりやすさが最優先!とかも!」

「そうだな」


 ニヤニヤ。しっかり覚えてるようだし、

 この疑問が出るということは身についてるようだ。実に喜ばしい。


「だったらこれって、おかしくないすか?


 『詐欺師の裏道〜初心者をあくびが出るほど楽にカモにできる方法、教えます』っすよ?


 これで期待できるのって、カモにされる方法ぐらいだし。

 好んで読むのも詐欺師くらいだと思うんすけど……」


「ところが、おかしくはない。

 何故なら君に語ったのは、

 『タイトルの法則』だが、より正確にいうならば

 『タイトルしか無い時の法則』だからだ」


「えぇー……違いがわからないっす。それ一緒では?

 つーか、違うとなんか成功ルールも違うくなるんすか?」

 

「一緒ではない。

 『タイトルしか無い時のタイトル』と

 『タイトル以外もスペースが有る時のタイトル』の書き方は実は違う」


「ち、ちなみに前語った、小説のやつは?」

「どっちだと思う?」

「『タイトルしか無い時のタイトル』……だと思うっす」


「正解だ。では、今私が作ったセールスレターは?」

「『タイトル以外もスペースが有る時のタイトル』……っすよね。自動的に」


「そうだ。実際、レターやチラシというものは『本文ありき』だ。そうだろう?」

「その通りっすね。一行だけのチラシとか見たこと無いし、

 見ても意味がわからないすから」


「ここに差がある。本来、セールスレター全体に求められている役割……。

 さっきいった『期待』や、お客の『選別』『集客』『わかりやすさ』

 などは本来は、『本文全体』で行うものだ。

 文字数も数百、数千文字〜場合によっては1万文字以上使って行われる。

 これが本来の商品広告の文章量だ。君もネットでみたことあるだろう。

 1ページ、くっそ長い宣伝文句が上から下まで書き連ねてあるのを」


「あるっすあるっす!ダイエットサプリとか、

 食品とかでググるとそういうのたくさん出てくるっすよね!

 シークバーちっさ!何文字あるんだ!ってぐらい、ダーっと流れてるっす!」


「そうだな。まあ、あれが普段私が携わってる広告だ。

 1つの商品を売るために、何千文字も費やす。

 ちなみに、ああいう1ページだけの販売サイトを、ペラサイトとよぶぞ。

 どうでもいい知識だが」


「はーそうなんすねー」


 本当にどうでもよさそうな声で返事するなこいつ。


「だが、もしこれが『タイトル一行のみ』しか許されていない場合は

 タイトル『だけ』で、この全ての要素を補わねばならん。

 そして、小説とかは大抵こうだ……という話が前までの話だ」


「あれ?小説ってもしかしてハード?」

「そうだ。割りとハードだ」

「なんか、急に長文タイトルが、短文タイトルに見えてきたっす!」


「広告の観点からはそうなるな。

 で、話を戻すが……じゃあ、タイトルだけじゃない場合。

 本文に何百、何千文字も、文字数が使える場合は、

 キャッチコピーの一番大事な役割は『何になるか』?」


「あっ!ちょっと待ってっす!俺だって勉強したっすからね!

 当ててみるっすよ!」


「ほお、いい態度だ。是非当ててみたまえ。

 ちなみにこの答えは、なろう小説においてもかなり大事になってくる要素だぞ。

 なろう小説も実際は、タイトルだけで終わりじゃなく、あらすじ本文と続くからな。

 なんなら、当てたら焼肉をおごってあげよう」


「えっ、マジっすか!小説でも大事?

 しかも焼肉?よし……やるっすよ!

 『本文もある時のキャッチコピーの一番大事な役割』っすよね……。

 えーと。さっき師匠が出したキャッチコピーはこれっすよね……」


 ほむほむくんが、モニターを覗き込み、先程のキャッチコピーをまた眺める。


 『詐欺師の裏道〜”常識的な善人”をあくびが出るほど楽にカモにできる方法、教えます』

 

 というコピーだ。


「小説にも役立つってことすよね……」


 モニターを凝視し、じっと動かないほむほむくん。


「むう……。師匠から教えてもらったのは。

 『期待感』と『面白さ』と『新しさ』そして『わかりやすさ』。

 あとは『誰向けか』と『何なのか』……。一番はどれっすかね……」


 むむむ……と唸るほむほむくん


「誰向け……ってのは、違うっすね。

 これそのまま受け取ると詐欺師向けになるし。

 となるとわかりやすさも違うような。

 じゃあやっぱ、期待感?

 カモにさせる方法を期待させてる?これはありそう。

 でも、ストレートな期待感じゃないっすよね。ひねってある……。

 面白さ……面白くはありそうっすね。

 新しさ……新しさも感じるっす。いや、こっちのほうが上っぽい!

 そうか、わかったっすよ!師匠!

 本文が長い場合の、キャッチコピーに一番!大事なのは、新しさ!

 いかがっすか、師匠!」


 うむ。いい勢いだ。悪くもない。が。

 

「ボツ」


 残念ながら違う。


「えぇー。じゃあ、やっぱ期待感?」

「それもボツ。あ、面白さでもないぞ。わかりやすさでも、誰向けとかでもない」

「全部違うじゃないすか!」

「そうだ。君が今いった役割の中にはない」


「最初からなかった!!!酷ゥイ!それは酷いっす師匠!

 俺の焼肉が!!」


「別にこの中にあるなんて、私は一言も言ってないぞ。誘導もしてない」


「うぅ……それは今思えばそうっすけどぉ……。

 じゃあ、答えはなんなんすか」


「そうだな。答えを言おう。

 さくっといってしまえば、これは簡単だ。

 答えは……


 『第一段落を読ませること』


 これだけだ」


 もっと広い言い方をすると、続きを読ませることだな。

 これでも正解にし、焼肉にはつれていってあげただろう。


「えっ……第一段落を読ませる事……?

 そ、それだけ?期待とか、新しさとか、内容説明とか……」


「言いたいことは分かる。だが、それらはサブとして持つものであって、

 第一の目的そのものではない。

 いいかい。レッスン10だ。覚えておきたまえ。

 『タイトル一文のみ』の時のタイトルの付け方とは大いに異なるその役割を。


 本文を前提とする広告における、キャッチコピーの役割。それは

 『キャッチコピーの役割は、第一段落を読ませるためだけに存在する』のだ。


 これがキャッチコピーの奥義であり本質だ」


「レッスン10は、

 『キャッチコピーは、第一段落を読ませるためだけにある』……まじすか?

 えぇ……。なんか、すっごいことを聞いたような……」


「衝撃をうけてるようだが、続いて質問だ。では、第一段落の目的は?」


「だ、第一段落!?えっと、えっと……。しょ、商品の説明?」


「ちがうな。そんなもんこの段階でしてどうする?

 第一段落の目的は、これもただ1つだ。


『第一段落の役割は、第二段落を読ませること』だ」


「えっ……マジ?じゃ、じゃあ、第二段落は……」

「なんだとおもうね?」

「だ、第三段落を読ませること……」

「その通り!素晴らしい!ほむほむくんは実に見どころがあるな!」

「え、えへへ……マジすか?マジすか?」

「大マジだ」


 その単純さに見どころがある。

 ここまで誘導すれば誰でも分かるというのは黙っておこう。

 犬もおだてりゃ空をとぶのである。


「で、でもそれなら、いつ商品とか本題とかにはいるんすか?

 これ、第三は、第四を読ませるため……とか続くんすよね?

 ま、まさか全部それ?」


「そうだ……と言いたいが、流石にそうではないな。

 半分ぐらいにいったら、本題に入るさ。

 逆に言うと、そこぐらいまでは入らない。

 ひたすら『続きが気になるだけの話』で繋ぐ」


「そ、それでいいんすか……」


「良い。何故ならそこまで読むと、人間には『滑り台効果』あるいは

 『コンコルド効果』というものが発生する。

 これは

 『なんとなく流れで読んじゃったから、流れで次も読もう』

 『せっかくここまで読んだし、最後まで読もう』

 という心理効果だ。

 この『せっかくだから』という心理は非常に強い。

 人は無駄を嫌う生き物だからな。

 自分が無駄なことをしたと、自分で思わないためにも、続きを読む。

 ゆえに、ここまでたどり着かせることが、キャッチコピーからの一連の流れの役割だ」

「うっ!た、たしかにそこまで読んだら、最後まで読むかも……」


「構成としてはこうなる。

 まず『読む流れ』に引き込むためのキャッチコピーや、続きが気になる話が前半。

 『流れに乗った』あとの、商品の信頼を高めるための記事が後半。ざっくりいえばな。

 なんせ、商品説明や本題というのはつまらないのが多いし、いきなり売り込むなんて論外。

 そんなことしたら、お客が逃げてしまうよ。

 そこをなんとかクリアするために、前半はあるんだ」


「なんか色々考えてるんすね……」


「まあな。

 とにかく、広告で一番最初の壁で、一番むずかしい壁は。

 『最後まで読んでもらうこと』なんだ。

 買ってもらうだの、信頼してもらうだの、面白がってもらうだの、

 全部そのあとだよあと。

 ターゲットに最後まで読んでもらうことが出来れば、もはや勝負は貰ったも同然さ」


「ええ……買ってもらうことより大事なんすか」


「そんなもんは、最後まで読んでもらえれば何割かは自動的にファンになるし、買うからね。

 我々コピーライターは『続きを読んでもらうこと』や『最後まで読んでもらう事』が

 如何に難しいかをよーく知っている。

 序盤に意識することと、中盤以降に意識することは違う。

 序盤ではとにもかくにも『なんとなく読んでもらう』流れに乗せることが最優先される。

 物語のテーマ回収なんかは、そのあとだ」

「はえ〜……」


「そういうわけで、キャッチコピーに求められるのは、ただ1つ。

 『第一段落を読ませる力』さ。


 なろう小説ももし、全員が、タイトル→あらすじ→第一話

 という流れで必ず読むという前提であれば、


 『タイトルはあらすじを読ませるためだけにあり、

  あらすじは、第一話を読ませるためだけにある。

  そして第一話は、第二話を読ませるためだけにある』

 という主張にもなるだろうな」


「むむ……。でもそれ、前とけっこー違う結論になってないすか?」


「別に違わない。

 『続きを読ませる』を分解していくと

 『新しさ』『期待感』『わかりやすさ』になるというだけの話だ」


「あ、そっか……。なるほどっす」


「それらをひとまとめにすると、『続きを読ませる力』になる。


 これがレッスン8。

 『冒頭は続きを読ませるためだけに存在する』だ」


「なるほど……なんとなくわかったす」


 なんとなくか……まあ、いいが。


「ま、そういうわけだ。

 あれは、さっきもいったが『タイトルだけ』に役割集中した場合の要素だからな。

 本来は、レターなら本文全体を使って、やんわりと

 期待感を出したり、選別したり、面白く語ったり、新しさを感じさせていくんだ。

 ま、これは集客の順番を考えると分かる」


「集客の順番……すか?」


「そうだ。私は『選別』と『集客』が両方大事だといったな?

 では、行う順番としては、どっちが先だ?」


 どちらも大事だが、実行順は同時ではない。

 さて、どう答えるかな?


「え、ええっ?えーと。えーと。あれっすよね。

 確か師匠は『選別出来る中で最大集客を行う』とか言ってたから……。

 選別っす!選別が先!」


「おお、あんな一言を覚えているとは素晴らしいじゃないかほむほむくん。

 実に嬉しくなってくるぞ。焼肉やっぱり連れてってあげようか」

「ま、マジっすか!焼肉!やったぜ!」


「だが、答えとしては間違いだ。

 もっとも、そう思ってるんじゃないかなーと思ったから、

 今回改めて説明したんだが」


 ニヤリと笑いながら、ほむほむくんにつげる。


「ええっ!違うんすか!なぜ!」


 うむ。ショックに満ちたいい顔をしている。

 選別が先と考える……それも無理はない。だが。


「選別が先だと、絞りすぎる。例えば

『最後主人公達は次々と死にますが、感動的なラストになります』

 といわれて読む奴がいるか?

 それを全面に出して集客しても限界がある。

 正直であればいいというものではない」

「うっ、確かに読む気しないっす……。

 なんか、そこまでネタバレしてほしくないし……」


「ゆえに、正しいのはこうだ。選別が先ではない。

 

 『集めてから、切る』


 これが集客の順番だ。切るとは切り捨てるという意味だ」

 

「集めてから切る!」


「そうだ。まずは集める。これができないと話にならん。

 それをおこなってから、選別をするんだ。

 でないと誰も集まらん。

 タイトル1つだけだと短すぎて、ほぼ同時に行うことになるが、

 広告的な意味でいえば、集めてから切るが完全に正しい。

 キャッチコピーで大きく集め、本文で徐々に切り捨てていく」


「はぇ〜……。あ、だからあれすか!さっきの


 『詐欺師の裏道〜”常識的な善人”をあくびが出るほど楽にカモにできる方法、教えます』


 のやつ。あれは、あのあとの本文で、フォローしてくってことなんすね?

 あれは、集めるために特化した文章なんですね?

 俺、ようやくわかりました!」


「おお!やるじゃないか。

 そうだな。まだ書いていないが、流れとしてはそういう感じだ。


 例えばこのあとはこういう流れになる……。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 『詐欺師の裏道〜”常識的な善人”をあくびが出るほど楽にカモにできる方法、教えます』

 

 常識的な善人……そう、貴方のような方のことです。

 この方法を知れば、貴方はあっという間に私のように、

 呼吸するように億を稼げるようになるでしょう。

 なにせ、この世の大半は常識的であり、かつ善人であるので。


 ですが、この方法を貴方に教える前に、

 ”あっという間に人生を失うほどの破滅”を経験するところだった、愚かな男……

 私のことですが……の話をせねばなりません。

 私も、常識的であり、かつ自分でいうのもなんですが、

 良心的な、真面目な人間だったと思います。


 そんな私が、一瞬で破滅しそうになった手法。

 逃れられたのは純粋に幸運でした。


 そしてその経験をもとに、新しい販売手法を確立し、

 大金を稼ぐことができた”必殺の”販売方法。

 詐欺師が如何にして、一瞬で、常識的で、疑り深く……

 でも知識のない善人の信頼を勝ち取るのか、

 決して一般に出回ることのない、その驚きの方法を教えましょう。


 隠さずいいましょう。

 私はそもそも、それが詐欺だということには気づいていませんでした。

 それほど巧妙だったのです。


 しかし、とんでもない偶然から、破産寸前で、

 詐欺に巻き込まれている……ということに気づきます。

 そして、そこから末恐ろしい詐欺の手法を知り、最後には私は逆襲に転じました。

 それどころか、その手法を”表”のビジネスに持ち込むことにより、大成功することができました。

 そして、私は今では週に1度か2度しか働きませんが、年収は1000万を超えています。

 

 しかし、その全ての始まりは、些細なこと。たった一本の電話からでした……

 『貴方に、窃盗の嫌疑がかけられています』という電話の。


 (中略)


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 こんな感じか」


「中略!?ここで切る!先を知りたいんすが!」


「……これは例題なのだが。

 まあ、そう思ってくれれば成功だ。

 それより、引っ張ることを重視して文章が作られてるのが分かるかい?

 もっというと、中身が実は余りないことがわかるかい?」


「えっ?そうでしたっけ?

 いや……確かに改めてみると……そうっすね。

 中身……言うほどないんすか。驚愕かも」


「うむ。これが、序盤は引っ張ることのほうが大事という意味だ。

 面白そう、だけしか詰め込んでいない」

「むむむ……」


「そしてここからは、さっき行ったとおり、

 実は詐欺師の販売術を研究した真っ当なセールス術の商品でした!

 と言う流れになる。

 だから、キャッチコピーで、一見詐欺師向け!と見えてもかまわない。

 本文で修正するからな。

 ただしそのためには、本文を全部読んでもらわなくてはいけない。

 それがゆえに、本文を読んでもらう努力は怠らない。

 そしてこれが、集めて切る……小説風にいうなら

 『まずは読ませて、その後に絞っていく』ということだ」


「ほえーなるほど。

 確かに、詐欺師の手法教えます!という、ひと目は詐欺師視点の見出しすけど、

 被害者の視点にいきなりうつってるっすね。

 これが『売り方教えます!』だと、まず集める、ができないから、

 集めてから、実は『売り方教えます』だったのだよ!と静かにシフトしていくと……。

 本文を全部読む前提の作り……。むむむむ。段々パンクしてきたっす!」


「……」


「ああっ、悲しそうな顔をしないで!」


「いや、まあ別にいい。実際、馴染みない情報だろうしな。

 まあ、まとめて言うなら。

 『最後まで読んでもらう』ことを如何にコピーライターが重視し

 そのために『続きを読んでもらうこと』を序盤に特に割いてるか、

 それを理解してくれればいい。

 それは必死に勝ち取るものであり、なんとなく書いていたらまず得ることはできない。

 そして、最後までよんでくれれば、ほぼほぼ勝ったようなものだ。

 私は、小説も大体そういう感じで書いていた」


「そういう感じ……。

 『続きを気にさせること』に特化して書いたということっすか?」


「そうだ。何度もいうが、特に序盤はな。

 具体的にいうと、序盤で世界観や人物説明をダラダラ書いたりはしない。

 大雑把に、こんな話になるぜ、と示したり、煽ったりしていくふうに書いた。

 細かい説明は全部あとだ」


 あー懐かしい。あの頃は第一話全力主義だったなあ……。

 とはいえ、完璧主義になりすぎると投稿できないから、

 今はある程度ノリで投稿するようになったが。


「あー……。確かに、イマイチな作品って、序盤から細かい説明ばっかかも……」


「読者が絶対に最後まで読む前提、ならそれもいいが、現実はそうじゃない。

 読者は基本的に、最後まで読まないからな。

 逆にいうと、最後まで読んでもらえれば、何割かは自動的にファンになる」


「え、そうなんすか?」


「そうだ。そもそも本当につまらんものは最後まで『読めない』。

 ゆえに、最後まで読んでもらえればとりあえず何かしらの相性が良いということになる」

 だから、なろうの評価ポイントは私はかなり重視しているぞ。

 ポイントの高い低いではなく、『最後まで読まれる話になっているか』という意味でな。

 計測ができないものは、改良もできない」


「ひょ、評価ゼロだったら……?」


「PVがあってそれなら、最後まで読まれていない可能性が高い。

 そしてその原因は、恐らく序盤にあるだろう。

 セールスレターが最後まで読まれない時、その理由はまず終盤ではない。

 大概キャッチコピーや序盤が悪い。

 『滑り台効果』が起きる場所……『なんとなく読むライン』まで行ってないのだ」


「うっ、俺、最後まで読まれない時って、最後に問題があるのかと思ったっす……」


「それは大半、間違いだな……。

 最後まで読まれないのは、最後の話が問題なのではない。

 最後までの話が問題で、それは大抵序盤だ。

 『最後の話がつまらないから読まれない』のではない……。

 『最後にいっても面白そうに思われてない』から、読まれてないのだ!」


「うぐぅ!なぜか心にダメージが!まさに今の俺っす!

 え、エスパー!師匠はやはりエスぐふっ」


 チョップを叩き込む。

 なぜもクソもあるか。

 それが失敗する作品のメジャーな理由だからそう語ってるだけだ。

 ピンポイントにほむほむくんを当ててるわけではない。 


「前もちょっといったな?

 大事なのは『期待させること』と『期待に応える事』だと」


「覚えてるっす!」


「じゃあ、序盤に必要なのはどちらか分かるか?」


「今の話からすると勿論、期待させること……すよね?」


「そうだ。これはレターも変わらない。面白いことそのものよりも。

 『面白そうな話をするんだな』と思わせることが上位にくる。

 そもそも、面白い話というのは伏線バラマキ回収とか

 色々ストーリーのかみ合わせが必要になってくるから

 第一話で、いきなり面白い話なんか早々作れるわけ無いだろ」


「第一話で面白い話なんか作れない!ええ……それいっちゃっていいんすか」


「そりゃあ、面白ければそれにこしたことはないさ。

 だが、難しい。読者は何も前提知識ないわけだし。

 それよりは『面白そうな話になりそう!』っていうのを

 与えてるかどうかに、気を払うほうが遥かにスムーズだ。

 何故ならそれで十分人は読むからだ。

 そして、これこそが、第一話の役割だ。

 「面白い」を伝えるのではなく「面白そう」を伝える。

 さっきの、詐欺師のレターを思い出してみたまえ。

 別に具体的な話は何一つない」


「た、確かに……!あのレターは煽りだけで出来てた感が!

 でも、確かに先が気になったっす。電話の先がちょっと知りたい」


「とうわけで、そうだな。レターと小説は違うが……あえていうなら。

 小説ならタイトルあらすじをふくめた冒頭3話。

 あるいは1万文字ぐらいが勝負じゃないか?

 もっと厳し目にみるなら、私自身は『滑り台』にのるには3万文字ぐらいかかるな。

 そこ超えると、あまり切らなくなる」


「そこらまでが、逆にいうと勝負っすか!」

「アニメで言うと3話だな。もちろん1話でかますのが理想だが」


「ジャンプでいうと5週ぐらいっすね!7週目ぐらいで打ち切り決まるって聞いたっすから。

 それが、なろう小説でいうと1〜3万文字近くと!」

「まあそういうことだ。中々わかってるじゃないか。

 詳細な人物や世界観説明、重大な伏線はったりなんたりとかは

 それが終わってからでも十分だ」

「なるほど……」


「まとめるぞ。

 タイトルの役目は、本質を言うなら『続きを読ませるため』だけにある。

 そして、それ以降のあらすじも、第一話も、第二話も全てそのためにある。

 それらは『なんとなく面白くなりそう』を伝えるためにあるのであり、

 『面白い』そのものを与えるためにあるのではない。

 『中身のある話』は、読者が滑り台にのったあとで、構わない」


「うーむ。なるほどっす!

 タイトルやあらすじの書き方は前も教わったっすけど、

 第一話とかも、どうしたらいいか悩んでたんすよね!

 なんか、今回の話で、それが全部繋がった気がするっす!

 そっかー。だから面白い話って、序盤軽く始まるのが多いんスね!」


「そういうことだな。まあ、分かったなら何よりだ。

 存分に取り入れてくれ」


「ういっす!頑張るっす!200%でやるっす!

 是非、成果をたのしみにしてくださいっす!」


「返事だけは頼もしいな、君」


「いやあ、それが取り柄っすから!」

「まあ、確かに君の取り柄だな」


「あと焼肉おごってくれるっていったし!」


「……」


 やっぱ撤回しよっかな。


「あ、いや。焼肉がなくても頑張るっすよ!うん!

 そう、師匠もやはり認めてくれるならッ!

 期待させることだけでも、俺は極めて見せるっす!」


「そこ『だけ』極めるようなら詐欺だがな」



 一点でもいいから誰にも負けないといえば聞こえはいいんだがな。


 単一で極めてはいけないものも世の中にはあるのである。


 やれやれ。

 





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あ、でも、そういう、引っ張るのだけメッチャ得意で

 回収を全くしない作

「それ以上いけない」


 彼らには悪気はないのだ。多分。

 ただ、大人の世界は『見切り発車』という単語が満ち溢れているだけなのだ……。


 創作の世界において、約束は、守るものではなく

 守れたらいいな!というものなのである。

 

 悲しいなあ。





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