【小説】『ループ・ループ・ループ』を読みました。ありそうで意外となかった視点が新しい
2021年1月22日
ここ小説投稿サイト「カクヨム」のプロフィールに書いていますし、ツイッターのプロフィールにも「青春と百合とSF」と書いているくらいですから、まあつまりはそういうジャンルの作品が好みです。「青春と百合とSF」と三つの要素が並べられていますけど、大抵の場合このうち二つくらい組み合わさっているとなんだかんだで楽しめてしまうのですが(もちろん三つすべて揃っている方がいい)、それ故に結構ホイホイ釣られていろんな作品に手を出してしまう傾向があります。
そんなこんなで今回もAmazonを徘徊しているときにオススメされた一作に見事ホイホイ釣られて買ったのがループ系ミステリー小説『ループ・ループ・ループ』でした。
書籍情報
著者:桐山 徹也
『ループ・ループ・ループ』
宝島社 宝島社文庫より出版
刊行日:2020/4/7
あらすじ(Amazonより転載)
昨日と同じ光景が繰り返される学校で、俺は時間がループしていることに気づく。しかし、俺にはループを引き起こすような出来事に心当たりがない。きっと俺は、この“物語”の主人公ではなく、“モブキャラ”として誰かのループに巻き込まれているのだ。そう考えた俺は、このループの原因となっている人物を探しはじめた。すると、他にもこのループに気づいた生徒たちが俺の前に現れて―。
ループものはもう昔からある定番ジャンルでもあり、それこそサイエンス・フィクションからファンタジー的な不思議系まで、様々な作品で溢れています。それだけに過去の名作との差別化が案外難しかったり、また意外なところから攻めて奇抜なことをしたりする作品が、定期的に生まれてきている印象ですかね。
そういった定番ジャンルであるループ系に新たに登場したのがこの作品『ループ・ループ・ループ』。あらすじを読んでいただければわかるかと思いますが、一見なんてことない普通なループものとみせつつ、主人公がループとは関係ない人物であるというのが一つのポイントとなる部分です。
ループ系作品といえば大抵の場合主人公が延々とループしているイメージがあります。それこそ名作小説『時をかける少女』も主人公がループしていますし、ゲームであれば『STEINS;GATE』とか、ライトノベルであれば『Re:ゼロから始める異世界生活』とかも、主人公が主体となってループしている作品ですね。なんなら自分も過去にループ系SFを執筆したことありますけど、それも同じく主人公がループするお話でした。
この『ループ・ループ・ループ』という作品は、主人公は同じ一日がループしていることに気がつきますが、そのループを引き起こしている存在が自分ではない、というところから物語が始まります。そしてそのループがなぜ発生しているのかを一つひとつ手探りで解明していくという謎解きが、この作品のメインとなります。
主人公が主体ではないループというと、記憶にあるのは『涼宮ハルヒ』シリーズの短編作品『エンドレスエイト』ですが、こちらはあくまでシリーズの中での一つのエピソードに過ぎず、独立した話ではありません。という意味も込めて、単体の作品で主人公以外の人物がループして主人公が巻き込まれているという作品は、これまでありそうで実は案外なかったのではないかと個人的には思っています。まあただ単に自分が知らないだけか、知っていても忘れているだけかもしれませんが、自分としてはまずこの「主人公以外がループしている」という設定にひかれるものがありましたね。
内容としては、ループの謎を解き明かす過程で主人公の暮らす街の現実問題も関係してくる、という二重三重のミステリーといったところ。ループの検証によって事象が変化したことにより、その事象に関係していた人物がまた新たにループに気がついていき、段々と行動人数が増えていく様は、ある種の仲間集め的な面白さがありますね。このあたりはたとえばアニメとかでも新設した部活動のメンバー集めのような感覚かもしれません。もとより登場人物が高校生ですので、そういったアニメ的なポップさもあるのかも。
また主人公たちのコミカルなやりとりや、全体としても馴染みやすい文体などなど、結構ライトに読み進められる作品だと感じました。なんとなくライト文芸系作品に通ずるものがあるような気がします。
あとそうそう、ループものとしてもそうですけど、ミステリーとしても純粋に面白かったです。繰り返される一日の間で発見するピースがパズルのように段々と形になっていくのは、やはりこういうミステリーものとしての醍醐味でもありますしね。作中の青春劇も相まってライトミステリーとして面白い一作でした。
まあループの原因が科学的ではなくどちらかといえばオカルト的なものであり、狭義のSFには該当しない設定ではありますが、そこはご愛敬ということで。別にSFとして売り出されているわけでもなく、あくまでミステリーがメインの作品ですので、むしろSF設定を凝ってしまうとそれはそれで作品にとってのノイズになりかねないですしね。これはこれでとてもいいバランスになっていると思います。
という感じで、ループ系青春ミステリー『ループ・ループ・ループ』の感想でした。
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