【小説】『言鯨【イサナ】16号』を読みました。SFだと思ったらファンタジーだったけどやっぱりSFだった。な…何を言っているのか(ry
2019年3月28日
3月下旬です。いかがお過ごしでしょうか? 自分は年度末で忙しいです。年度末ということは3月の終わりでして、3月が終わるということはつまり冬アニメが終わるということです。3月最終週の現在、絶賛最終回ラッシュですね。
あ、今期も恒例の個人的ベスト5と感想まとめをやります。まとめるにあたって『私に天使が舞い降りた!』(わたてん)最終話の感想を書いたら二千字くらいになり、単体の記事として公開できてしまえる事態になってしまいました。他の作品の兼ね合いの都合上、今半分以下になるよう削っており、そのせいで他の作品の最終話が見れていない状況です。ただでさえ忙しいのに余計な手間が……。
そんないろいろな意味で忙しい時期に、仕事場への行き帰りの電車の中で読み進めていた小説が『言鯨【イサナ】16号』です。
書籍情報
著者:九岡 望
『言鯨【イサナ】16号』
早川書房、ハヤカワ文庫JAより出版
刊行日:2019/01/22
あらすじ
神"言鯨(イサナ)"によって造られた砂の時代。全土は砂漠化し、人々は言鯨の遺骸周辺に鯨骨街(げいこつがい)を造って暮らしていた。街々を渡る骨摘みのキャラバンで働く旗魚(かじき)は、旅の途中で裏の運び屋・鯱(しゃち)と憧れの歴史学者・浅蜊(あさり)に出会う。執政機関ヨナクニには内密で、十五番鯨骨街へ奇病の調査に行く――そう語る浅蜊に同行を許され、心躍る旗魚。だが浅蜊が遺骸に近づきある言葉を口にした瞬間、黒い影が現れ、圧倒的な力で世界を破壊し始めた
作者は
『エスケヱプ・スピヰド』は昔気になってはいた作品でしたが、なんだかんだで読むタイミングを逃しました。というわけで『言鯨【イサナ】16号』が初読みになります。
物語としては、ザックリと砂漠を舞台にした冒険SFです。世界観としては、去年か一昨年くらいにテレビアニメシリーズとして放送された『クジラの子らは砂上に歌う』を彷彿とさせるイメージですかね。いやただ果てしなく続く砂漠が海の役割となっているという部分が似ているだけですけど。
タイトルからイメージできるように、この作品は「言葉」がキーワードとなる内容です。「言葉」をめぐって怒涛のストーリーが展開され、エンタメノベルとしてとても読み応えのある作品だった印象です。
で、この作品、早川書房のキャッチコピーに「デビュー作『エスケヱプ・スピヰド』で 一躍注目を集めた新鋭が放つSF長篇」と書かれていたので、こちらとしても普通にSF作品だと思って手に取ってみたのですが……。
冒頭からかなり独特な世界が展開され、さらに読み進めていくにつれ、
「これ、SF? ファンタジーじゃないのか?」
と思うようになりました。
というのも現実と繋がりのない、ある種異世界的な世界観であり、登場する人物が死ぬシーンも人間のそれとは異なるものでしたので、ストレートにファンタジー作品と認識した方がしっくりくる内容だったのです。序盤でそのことに気がつき、以降ファンタジー作品として読みました。
ただ、ではなぜSFと銘打っているのかといえば、終盤に世界の真相が明かされるシーンにて、そこでガッツリと現実の延長線上の世界であることが示されるのです。登場人物はそもそも○○(ネタバレのため伏字)じゃなかった!
でもこの世界の真相が明かされる場面は、そこまで大袈裟に描かれているわけではなく、ページ数としても10ページ未満です。この作品は大体350ページですので、その割合はかなり少ないです。
つまりほぼファンタジー作品であるものの、たった10ページによってSF化されているのです。
SFかな?→ファンタジーじゃん!→やっぱSFでした!
という流れ。
な……何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった……(ポルナレフ風)
サイエンス・フィクションとして科学的な技術が語られるわけでもなく、物語の本筋としては現実世界との繋がりが希薄ではあるものの、この作品にはSFとしての主張が確かにあったような気がします。
ファンタジーな作風でも、やり方次第でSFにすることが可能である。
そういった省エネな(?)インスタントな(?)方法で物語をSFとしてしまう作品はなかなか読む機会がなかったので、今回読んでみてとても新鮮な気分を味わえました。
先程も述べましたが、エンタメノベルとしてとても読み応えのある作品です。スピーディに物語が進んでいき、一つひとつのシーンで引き込まれるほどの描写力があって最後まで飽きることなく読むことができる内容となっております。
そんなファンタジー風SFな作品でした。
次回、2019年冬アニメ個人的ベスト5!(多分……)
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22年5月10日公開
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