物語中毒者の戯言 ～「物語」に触れ感じたことを書くだけ～

【小説】早川書房にて国内作家セール！ 自称アニメファンによる、アニメで見てみたいハヤカワSFをピックアップ

2018年12月22日

　現在早川書房では、国内作家セールが開催されています。えー……電子書籍で……通常よりかなり安くなっています！　期間は……えーと……多分来週までです！　いや詳しく書くと宣伝になってしまうし。詳細は各自で調べてください。

　まあそんなこんなで、今早川書房が熱いです。自分のTwitterのタイムラインも国内作家セールの話題と、あと今月発売になるSFマガジンの百合特集の話題で埋め尽くされています（SFマガジンも早川書房）。

　そこで今回は、自称アニメファンとして、アニメとして見てみたい早川書房のSFを選んでみました。

　……実は数日前、早川書房公式Twitterで「推しタイトルをツイートしてくれたら拡散に協力します」と言っていたので、便乗してアニメ押しタイトルをツイートしたらそこそこ拡散され、しかも作者さんにもリツイートされまして、調子に乗ってこちらでも書こうと思って今に至ります。ただ全部は書けないと思いますので、厳選して書いていきます。

　アニメ好きはもちろん、ラノベ好きや漫画好きの方でも楽しめるハヤカワSFをどうぞ。

　ピックアップその1

『星を墜とすボクに降る、ましろの雨』

　著者： 藍内　友紀

　あらすじ（Amazonより抜粋）

「ボクたちは、星を墜とす機械だ。人間にはなりたくない。でも……」人造の眼球と巨砲〈トニトゥルス〉で、地球圏に迫る星々を軌道庭園から撃ち墜とす役目を担う、造られた子どもたちが居た。その一人である霧原は、寡黙な担当整備工の神条に心惹かれる。しかし、彼の元妻を名乗るハヤトが突然現れ、空前の規模の流星群が飛来する中で、彼女は自身の無慈悲な宿命を知る――。強く儚い防人の少女がそれでも抗い叫ぶ、小さな恋の唄。

　地球に流星群が頻繁に降るようになった近未来で、落下寸前にて高出力レーザーで星を撃墜しまくるシーンは、スリリングさがあってとても映像映えしそうだと読んでいて感じたことを覚えています。またスナイパーとして作られた少女はその出自故に無感情系ヒロインで、無感情だからこそ理解できない謎の感情に翻弄されていくのはドラマとしても見応えあると思います。

　ただこの小説は、正直読む人によって合う合わないがあります。なにせ無感情系ヒロインの一人称小説であり、しかも割とヤバい方向に洗脳されているせいか、読んでいて共感することは非常に難しいかと思います。自分もこの作品は合わなかったです。ですがそのあたりのことも、アニメ映像として客観的なシーンとなればまた違った印象になるのでは、とも思っていたりいなかったり。あと最後の、オチのシーンを是非ともビジュアルとして見てみたい気持ちもあり、アニメの方が楽しめる題材だったのではと感じました。

　ピックアップその2

『スワロウテイル人工少女販売処』

　著者：籘真 千歳

　あらすじ（Amazonより抜粋）

　〈種のアポトーシス〉の蔓延により、関東湾の男女別自治区に隔離された感染者は、人を模して造られた人工妖精（フィギュア）と生活している。その一体である揚羽（あげは）は、死んだ人工妖精の心を読む力を使い、自警団（イエロー）の曽田陽介と共に連続殺人犯"傘持ち（アンブレラ）"を追っていた。被害者の全員が子宮を持つ男性という不可解な事件は、自治区の存亡を左右する謀略へと進展し、その渦中で揚羽は身に余る決断を迫られる――苛烈なるヒューマノイド共生ＳＦ

　要はかなりヤバい性病により男性と女性が完全隔離されて生活するようになった未来で、愛する異性の代替としてフィギュアと呼ばれる人造人間と共に暮らす街にて、主人公の少女型フィギュアが必殺仕事人として狂った奴らを始末する中で事件が……という感じです（ザックリし過ぎ！）

　この作品は主に男性地区を舞台に話が展開していきますので、登場するフィギュアが可愛い子ちゃんばっかりで華やかです。加えてヒロイックなアクションシーンが豊富でありつつも、本筋ではサスペンス的でありミステリー的でもあるので、ストーリーはとても濃厚です。さらに設定もかなり細かく考え込まれており、また十分に掘り下げられ、伏線も隙間なく回収していくので、物語としてかなり高度な内容だったということを覚えています。

　こちらシリーズで4巻ほど出版されていますが、多分1巻で1クール作れるくらいの情報量かと。というか文庫本が分厚く、しかも1ページの文字密度がとんでもないので、これ読むのに時間がかかるタイプの作品です。でも面白いので夢中で読めてしまいます。おそらくアニメになれば華やかな美少女アニメでありつつもシリアスな質アニメになると思います。というか個人的に是非アニメ化してほしい作品です。

　……そういえば、二年くらい前に3巻まで読んで止まっていた気がします。最終巻を買って読まなければ……。

　ピックアップその3

『南極点のピアピア動画』

　著者：野尻 抱介

　あらすじ（Amazonより抜粋）

　日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え、恋人の奈美までが彼のもとを去った。省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による“宇宙男プロジェクト”が開始される・・・・・・ネットと宇宙開発の未来を描く４篇収録の連作集

　ニコニコ動画では「尻P」としてお馴染みの方の作品。「初音ミクはSFである」という名言を残したのはこの方です。いやこの作者さんは何度も星雲賞を受賞しているすごいSF作家さんなんですけどね（ちなみにこの作品でも星雲賞を受賞しています）。

　そんなこんなで、ニコニコ動画と初音ミクをモチーフにした小説です。俗にいうボカロ小説に分類されるかもしれませんが、内容はかなり本格的な宇宙SFなので、表紙につられて読むと驚くかもしれません（というか表紙が完全に初音ミク）。

　ニコニコ動画全盛期を知る人ならば面白く読めてしまう内容で、ニコ動ネタをSFに取り込んでいるのでメタ的やパロディ的な楽しみがあります。結構昔に読んだので細部までは覚えていませんが、確か昔ニコニコ動画で流行ったファミマネタも扱っていたような気がします。

　今現在読めば、深夜アニメが爆発的なブームとなった影響でニコニコ動画もよりサブカルチャーとしてのオタクのたまり場と化したあの空気感を堪能できるかと。……というか最早アニメで見たいというよりは、懐古的なオタク文化を映像で楽しみたいという欲求でピックアップしました。

　ピックアップその4

『裏世界ピクニック 　ふたりの怪異探検ファイル 』

　著者：宮澤 伊織

　あらすじ（Amazonより抜粋）

　ネット怪談×異世界探険「検索してはいけないもの」を探しにいこう。仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で〝あれ"を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!

　以前このエッセイで少しだけ触れた『裏世界ピクニック』。結構最近の作品ですので、アニメ化の可能性としては一番高いのではないでしょうか。最近流行りの百合を題材にし、メインではネットロアを用いたホラーとなっております。女の子二人ですがその関係はバディものといってもいいでしょう。そういう親密な百合でありつつも危険な探索をしていき、そして未知の存在との邂逅はとても映像向きかと思います。というか小説を読んでいてまさに「これアニメ化しないかなー」と感じましたし、またコミカライズ版では明確なビジュアルがついたことによってより面白さが増した印象を受けました。ならばアニメにしても面白いのでは⁉　と思った次第です。

　と、こんな感じでセール対象作品の中からアニメで見てみたい作品をピックアップしてみました。本当は、アニメ化もされたライトノベル『銃皇無尽のファフニール』の作者さんが書いた青春百合ポストアポカリプス作品の『ノノノ・ワールドエンド』も強く推したかったのですが、国内作家セールなのになぜかセール対象外だったので省きました。

　あと今年出版した、表紙が萌え系の可愛い女の子の作品『ウェイプスウィード ヨルの惑星』も気になっていますが、まだ読めていません。ら、来年にでも……。あ、スワロウテイルの最終巻も読まなければ……。まだ購入していないのに脳内積読状態に……なんとかしなければ。

　自分思うのですが、ハヤカワSFってアニメ原作の宝庫だと思うのですが全くアニメ化しませんよね。今のSFってライトノベル出身作家さんが多く流れてきて、とても読みやすくより映像的なものが増えている印象です。ライトでも良質なSF作品が多いので、是非とも積極的にメディアミックスをしてほしいですね。