【映画】『リズと青い鳥』Blu-ray&DVD発売! 文学的な傑作映画! 今年一番の衝撃作!
2018年12月10日
12月5日に『リズと青い鳥』のBlu-ray&DVDが発売となりましたー! もちろん買いました。というか買って改めて見ました。映画館で見たときも思いましたが、いやこれがまた素晴らしいの一言です!
というわけで今回は映画『リズと青い鳥』に関して。
映画『リズと青い鳥』公式ページ
http://liz-bluebird.com/
あらすじ(Amazon商品ページ)
あの子は青い鳥。広い空を自由に飛びまわることがあの子にとっての幸せ。だけど、私はひとり置いていかれるのが怖くて、あの子を鳥籠に閉じ込め、何も気づいていないふりをした。
北宇治高等学校吹奏楽部でオーボエを担当する鎧塚みぞれと、フルートを担当する傘木希美。高校三年生、二人の最後のコンクール。その自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」にはオーボエとフルートが掛け合うソロがあった。「なんだかこの曲、わたしたちみたい」屈託もなくそう言ってソロを嬉しそうに吹く希美と、希美と過ごす日々に幸せを感じつつも終わりが近づくことを恐れるみぞれ。「親友」のはずの二人。しかし、オーボエとフルートのソロは上手くかみ合わず、距離を感じさせるものだった。
一部界隈では「百合の衝撃作」と呼ばれている作品。確かに、露骨なガールズラブに仕上げているわけではありませんが、しかし近いようで遠い女の子同士の繊細な距離を芸術的なまでに表現しているこの作品は、紛れもなく百合であると思います。いやもう、百合好きとしては悶絶級の傑作です!
さて、この『リズと青い鳥』を「百合の衝撃作」とまで言わしめた要因が、映像作品としての表現方法でしょう。美術、音楽、演出、そして役者の演技など、それらが合わさった映像はまさに呼吸している空間でした。画面から生きている息遣いを感じられるほどの映像破壊力が、この『リズと青い鳥』という映画にはあります。
というかですね、この『リズと青い鳥』は、映像から発せられる情報量が凄まじいです。そしてそれらをうまくコントロールしているのが演出です。
その特徴的な演出は冒頭から始まります。冒頭ではオープニングとしてメインスタッフのクレジットが表示されますが、この約7分間の映像では、主要登場人物であるみぞれと希美が二人で校内を歩いているだけです。
ただ歩いているだけの映像が7分間続きます。ですが歩き方や歩くスピード、さらには下駄箱から上履きを出すシーンまでを使って、人物の関係や性格といったキャラクター性を全部表現しているのです。つまり冒頭7分間の歩いているだけのシーンで、メインのみぞれと希美の人物としての説明を済ませているのです。もう初っ端から、映像から読み取れる情報量が膨大です。
この『リズと青い鳥』という作品は、そうした映像の演出によって情報を伝えるシーンがとにかく多いです。とりわけ人物の感情については、台詞から伝わる情報以上のことが仕草などによって表現されています。
とくにこの映画では、足元にカメラを向けるシーンが多い。冒頭7分間のこともありますがそれ以降のシーンでも、足の向き、足の止め方、歩き出し方、足の仕草などなど、足を使っての感情の演出が見て取れます。これもまた直接的な表現ではない、受け手側が見て感じる印象からアプローチされた演出方法だと思います。
あとあえて顔を映さないカメラワークも多用されていますね。これもまた表情を見せないことで受け手側に人物の感情を想像させるといった幅を持たせているのだと感じました。
あえて直接的な表現を用いらず、比喩的な表現によってシーンを作っていく。こうした言外の演出がこの『リズと青い鳥』の映像作品としての特徴だと考えます。
劇中でも滝先生の台詞で「音楽には楽譜に書ききれない間合いがあります」というものがあります。これは吹奏楽の指導としての台詞でもありますが、同時にこの映画そのものにも当てはまる言葉でもあるのです。映像だけでは完結せず、映像から受け手側が読み取ることによって初めて完結する作品。それが『リズと青い鳥』です。
これは小説にも使われていることでもあります。つまりは「行間を読む」ということ。実際に小説の文章として書かれている以上のことを読み取るということは、読書家であれば馴染みのあることだと思います。この映画は、映像作品として「行間を読む」という手法を取り入れており、そういった意味では、映画だけどとても文学的な作品だったという印象を抱くかと思います。
ただこうした演出は、受け手側、視聴者の演出を読み取る力が試される非常にリテラシーが求められるものだと思います。今画面に映っているシーンの意味を正しく理解することができなければ、作品の物語性を掴むことができず最後まで退屈な映画となってしまうでしょう。反面、シーンの演出を読み取る力があったり、また人の行動から感情を察することができたりする人にとっては、共感や感動などといった心を突き動かされるかと。
そういうこともあり、演出的な面から『リズと青い鳥』という映画は、素晴らしい作品であると同時にハードルの高い作品でもあると感じました。一瞬でも目を離すと致命的です。終始画面に釘付けになってシーンを解釈し続ける必要があります。一見とても疲れることかと思いますが、しかしそれだけに作品自体の引き込む力が強く、体感の時間はあっという間ですね。
さて、この映画では劇中に登場する童話「リズと青い鳥」をモチーフにしてストーリーが進みます。劇中でもみぞれと希美の二人が、童話に登場するリズと鳥の関係に似ているといった部分に触れています。しかし映画を見た方ならわかるかと思いますが、実はこの童話とみぞれ&希美の関係性はリンクしているようで全くリンクしていないのです。
ただこの不一致具合が、この物語のギミックにもなっている部分なのです。
作中の登場人物たちも童話を自分たちに重ね合わせて解釈しており、またそのシーンを印象付けることで視聴者にもミスリードさせています。しかしストーリーの途中で思い悩み噛み合わず苦しんでいるところで、童話の解釈が逆転するのです。それによって噛み合っていなかったものが噛み合い、話として綺麗に収束していきます。クライマックスのシーンでも、この童話の解釈の逆転がロジックとして機能しているのも興味深いですね。
この解釈の逆転というギミックも、実は序盤の方で巧妙な伏線があったりします。そこに気がつくと、「解釈の逆転」というよりは「間違った解釈から正しい解釈に直った」という印象になるかもしれません。私も今回ブルーレイで見返したとき初めて気がつきました。これもまた演出による妙技かと思います。
ストーリーは一見すると派手さはありませんが、だがしかしストーリーの構成的な面ではとんでもなく大それたことをやっています。青春の機敏で繊細な感情を扱いつつも、ストーリーはある種計算しつくされたものを感じました。感情としての共感や感動だけではなく、ストーリー展開としても見応えがある映画だったと思います。
このように、音楽や美術や演技なども含めた総合的な演出と、絶妙なバランスで構成された高度なストーリーラインにより、「これまでのアニメや映画とは一線を画す作品だったのでは⁉」と思わずにいられない内容だと感じました。
総括すると、
『リズと青い鳥』はヤベェ映画だぞコレ……。
といった具合になるかと。
「百合の衝撃作」とかなんとかと一部界隈では騒ぎ(?)になりましたけど、個人的には百合どうこう以前に物語として衝撃作だったという感想を持ちました。春頃劇場で『リズと青い鳥』を見たときとても満足して帰った記憶がありますし、今ブルーレイで見返したこのときもため息が出るくらい打ちのめされて満足しています。
正直な話、あらゆるジャンルを含めても2018年で触れるべき傑作だと思っています。そしてこれを年越す前にもう一回見られたことはとても幸運だったかと。というかコレ見ずして年を越そうとしている輩が許せないくらいだ!
というわけで、『リズと青い鳥』は見るべき映画です。そのためにブルーレイディスクを購入しなさい。配信は……よくわからないので各自調べてください。
ホント、京アニってやっぱヤベェところだったわ……。
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