【アニメ】『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 』から考える原作の改変
2018年8月18
前回に引き続き今回もアニメネタ。
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対象作品には傑作アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 』もあります。今回はこの『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 』について語ります。
アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- 』は、Ark Performanceによる漫画作品。2013年にテレビシリーズが放送されました(もう5年経過しているッ!! 時が経つのが早い!)。
内容は青春海洋SF。SF作品としてはファーストコンタクトものの要素も含まれており、SFとして濃厚な作風となっています。
以下、アニメ公式ホームページのあらすじ。
2039年、人類は温暖化に伴う急激な海面上昇により、地上での版図を大きく失った。
それに呼応するかのように、霧を纏う謎の軍艦群「霧の艦隊」が世界各地の海洋に出現、搭載した超兵器で人類の艦を攻撃し始めた。
人類は持ちうる戦力を投入し、最終決戦「大海戦」に臨むも、「霧」の圧倒的な武力の前に脆くも敗れ去った。
すべての海域、運搬経路を「霧の艦隊」によって封鎖され、政治経済は崩壊、人類は疲弊の一途をたどっていた―――――――
「大海戦」から7年。
士官候補生・千早群像の前に現れた「霧の艦隊」の潜水艦「イ401」。
敵であるはずの「イ401」、そのメンタルモデル「イオナ」との出会いは群像に、そして人類に何をもたらすのか?
というものです。簡単にいえば、美少女に擬人化した戦艦とドンパチやるお話です。それ故アニメ放送時には、同年にブレイクした『艦隊これくしょん -艦これ-』のパクリだ、と言い出す人がいましたが、『蒼き鋼のアルペジオ 』原作漫画の方が先です。ちなみにアニメのエンドカードで蒼き鋼のアルペジオと艦これがコラボしていまして、なんだかんだで円満な関係のようです。
また『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』はフル3DCGで制作されています。今でこそ『シドニアの騎士』や『宝石の国』など傑作CGアニメが登場していますが、当時のテレビシリーズでは珍しく、また2013年以降に3DCGアニメが増えたことにより、深夜アニメ枠でのCGアニメの先駆けとなったのがこの『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』ではないでしょうか。
そしてCGアニメだからこそ得意とする表現があります。それは動きのある戦闘シーン。作画とは違い派手であるものの映像としてスッキリまとまっていて、今画面の中で何が起こっているのかが非常にわかりやすいです。とくに第2話と第4話の戦闘シーンはアニメ史に残してもいいくらいの名勝負であり、おそらく『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』ファンの多くはこの戦闘シーンで虜になったのではないでしょうか。
CGアニメには特有の無機質感があって、それがまたSFの世界観に合致していたと思います。ただ同時に登場人物に生気が感じられないというデメリットもありますが、それは見ているうちに慣れます。2018年現在も様々なスタイルの3DCGアニメが放送され、これからもっと発展していく手法だと個人的に思っています。
さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』は、原作漫画『蒼き鋼のアルペジオ 』と内容が大きく異なります。所謂原作改変です。
ウィキペディアによりますと、「10巻を越えてなお連載中の長編を、1クール分のショートシリーズで一区切りをつける都合もあって、キャラクターの約半分が削減されたほか、設定が一部変更されたことに伴い、ハルナ・キリシマ戦や刑部邸襲撃後から硫黄島到着以降の展開はアニメオリジナルとなっている。」とあります。まあ、制作上の都合というものです。
昨今、アニメ化にしろ映画化にしろ、原作改変を嫌がるファンが多くみられます。その気持ちは痛いほどわかります。ファンであれば下手に原作をいじってほしくはないのです。
ただ大幅な原作改変をしたのにも関わらずアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』は多くの人に親しまれ、評価された作品です。ではなぜ好評だったのか?
その答えは単純明快、改変した内容が面白かったからです。
面白かったからこそ、アニメはアニメで、原作は原作で、という楽しみ方ができたのです。
つまり原作改変とは、面白ければ許されるということです。
同時に批判される原作改変とは、下手にいじって原作の良さを殺しつまらなくしてしまうことです。そうなればファンから叩かれても仕方ありません。
よって映像作品においての原作改変とは、一か八かの大博打というわけです。
しかし、ではなぜそんな叩かれる危険を冒してまで原作を改変するのか?
それは制作サイドの都合ではありますが、その都合の大部分は「原作が完結していないから」というものと推測しています。原作が完結していないから、内容を変えるしかない、と。
そもそもの話、昔のアニメとか原作をガン無視しているものも多くありました。しかしアニメブームが始まってからいつしか原作を重視するようになったと思います。ですがそれ故、映像作品として中途半端な終わり方をする作品が増えてしまいました。
それは当然の結果で、アニメなら1クール単位だし、映画なら二時間に収めなければなりません。ただ原作の小説や漫画は、映像化を前提に書かれているものは少ないと思います。そのため原作のストーリーの区切りが映像作品と相性が悪い、という事態に陥ってしまうのです。だからこそ、一つの映像作品として完成させるために、原作を改変する必要に迫られるのです。
この部分に関しては、おそらく賛否両論となる部分だと思います。「中途半端でもいいから原作を忠実に再現してほしい」と言う人もいれば、「映像作品としてきれいに完結してほしい」と思う人もいます。私はどちらかといえば後者の意見です。アニメも映画も一個の独立した作品であって、決して原作の販促プロモーションではないのです(実情は販促効果を期待して映像化している面もありますが)。
なので原作を改変するのが正しいのか間違っているのかという話は決着がつきません。ただ映像化でも素晴らしい作品に仕上がるよう賢明な判断をしてほしいと、個人的には思っています。改変するなら原作を食い潰すくらいの勢いで、というほどに。
もちろん原作を改変する都合はストーリーによるものばかりではありません。そもそも映像化にそぐわない原作で変えるしかないとか、制作サイドの作品に対する主張とか(実写ドラマなどに多いパターン)とかあります。それらの都合は視聴者である我々には関係ない事情です。なにはどうあれ面白ければそれでいいのです。
最後に、某アニメの名台詞で締めたいです。これは制作サイドと視聴者の両方に向けられた言葉です。
「メディアの違いを理解せよ!」
一応今回取り上げた『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』の、ニコニコ動画で公開している第一話のリンクを貼っておきます。
『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』第一話(ニコニコ動画)
http://www.nicovideo.jp/watch/1381386474
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