物語中毒者の戯言 ~「物語」に触れ感じたことを書くだけ~

杉浦 遊季

物語中毒者の戯言

2018年 夏

【アニメ】アニメ版『はねバド!』はスポ根ではなく本格スポーツ作品かもしれない。

2018年8月17日





 テレビアニメ『はねバド!』の最新話、第7話を見ました(18年8月16日現在)。


 相変わらずの超作画による試合シーンは迫力があっていいですね~。視聴者として手に汗握る戦いに釘付けです!


 さて、これまでの話で、主人公の羽咲 綾乃が闇堕ちフラグが立ち、そして今回、スポーツアニメにふさわしくない鬼畜モードで覚醒。大会のトーナメントを軽快に勝ち進んでいます。強キャラが無敵状態になるのは見ていて気持ちがいい面もありますが、しかし、これホントにスポーツアニメの主人公なのかよ!?


 ですが、個人的にはこういう展開大好きです!


 というわけで、私が個人的に思っているスポーツ作品のことを語ります。




 一般的にスポーツを題材にした作品は「スポ根」と称されることが多いと思います。言葉通り、「スポーツ」と「根性」を合わせたものです。


 スポ根にはこれまで数多くの名作が誕生しました。遡れば……それはもう何十年前からたくさんあります。


 スポ根といえば、仲間との友情や絆、追い込まれたときに気合や声援で乗り切る、みたいな要素があると思います。ジャ〇プマンガみたい。でもだからこそ少年漫画と相性がいいのでしょう。




 しかし待ってください! それってですか?


 だって、仲間の声援が力になるなら、そりゃ頭数揃えて応援団引き連れたもの勝ちじゃん。ピンチになって気合入れ直すとか、じゃあ最初からしっかり気合入れればいいじゃん。……などなと、冷静になるとツッコミどころ満載だと思います。



 私はですね、「スポ根」というジャンルが嫌いとまでは言いませんが、しかし全くもって共感できないのです。



 私は中学高校で卓球部に所属していました。「えー卓球部って陰キャの集まりでしょ(笑)」と言われれば、その通りと答えるしかないです。


 他の運動部のことは知りませんが、しかし私が所属していた卓球部は、かなりギスギスした空気でした。


 よく運動部は上下関係に厳しいというイメージがあります。それに関してはその通りです。しかし上下関係の本質は、実力の影響です。


 だって部員たちの中から強い人を選んでレギュラーを決め、学校の看板を背負って戦うわけです。どうやったって部内はになってしまいます。上級生より下級生の方が強ければ、当然試合に出場するのは下級生の方です。なぜならその方が試合に勝つ確率が上がるから。


 上級生を敬うのは、自分たちよりも経験者でありそれ故実力も高いからであって、ただ単に年上だから敬うというものではありません。そして自分が上級生の立場になったとき、後輩に尊敬されるような先輩像を維持しなければなりません。


 実力のない上級生がいくら威張っても説得力がありません。むしろ同じ上級生や先生からは「そんなこと言ってないで練習しろ!」と怒られます。そして実力のある下級生は上級生や先生からも期待され、その人の発言力は増します。



 上下関係とは結果的にそうなるのであって、実力主義である以上覆すことのできない関係ではないのです。



 つまり、部内では常にマウントを取り合っている状態です。切磋琢磨といえば聞こえはいいですがね。基本自分以外はすべてライバルになります。



 そんな状態だと、



 冗談を言い合い笑い合うこともある。ただそれはあくまで実力からくる説得力がそのままその人の人間力となっているだけで、雑魚は相手にされません。下のものが取り繕っても、それは上のものからしたらただの腰巾着であって対等ではありません。


 とりわけ個人競技は、このギスギスした部内カーストの関係は顕著です。



 だからこそ、スポ根作品で仲間との絆とかやられると、リアリティがなさすぎて、ある種ファンタジーを見ている気分になるのです。



 そして仲間の絆がないからこそ、声援もあるわけがない。



 声援を生かすなら、部活とは無関係の応援団を連れてくるしかないですが、それはそれで現実的ではありません。甲子園とかインターハイとかの規模の大きい大会ならわかりますが、しかし県大会レベルとかであれば、よほど有力選手でない限り毎試合応援に来てくれないでしょう。



 つまり、スポーツにおいて絆や声援は、いうほど効果的ではないのです。(ただし全く効果がないといえばそうでもないですが)



 ましてはそれで勝敗が決することなど、それこそフィクションの世界です。



 勝敗は、事前の努力と、持って生まれた才能センスと、実際の試合中での体と頭の柔軟性で決まります。




 だからこそ、「仲間の力が~」「声援の力が~」「気合が~」などといった要素で勝ってしまうのは、悪い言い方をしますとでしかないのです。





 さて、長々と語ってしまいましたが、ここでようやく『はねバド!』の話に戻ります。



 主人公の羽咲 綾乃が闇堕ちする展開ですが、ここまでの流れを簡単に説明します。(ただしアニメだけを視聴して理解できたことをネタバレにならない程度にザックリとした説明)



・母親が天才的なバトミントン選手で、幼少の頃からバトミントンをしていた。

・才能開花。無敵状態。

・ライバル(ピンク髪)に故意に風邪をうつされ、体調不良によりライバル(ピンク髪)に負ける。

・試合後、母親が姿を消す。

・ある日、いなくなった母親が海外で自分と同年代の選手を育成していることを知ってしまい、それが理由でバトミントンを辞めてしまう。

・高校でバトミントン部の部員たちに支えられながら復帰。仲間意識が芽生える。

・合宿先で、母親が育成していた選手(金髪)と遭遇。煽られ、接戦の末負ける。

・仲良しごっこしてたら強くなれない! 仲間なんていらない! 闇堕ちフラグ。

・県予選。闇堕ち鬼畜モードで無双。ライバル(ピンク髪)を下す。←今ここ。




 実際にアニメを見てもらった方がわかりやすいですが、このアニメ、スポーツものでありながらシリアスで終始ギスギスしています。それはもう第一話から胃が痛くなるほどのギスギスっぷりです。そしてこのシリアス具合が、最新話で磨きがかかった印象をもちました。


 そして能力のある選手が、自身の能力を発揮して試合に勝つのです。決して仲間に応援されて気合で覚醒して一発逆転で勝つわけではないのです。



 このとき、「求めていたスポーツ作品とはこれだった!?」と思いました。



 ファンタジーな「スポ根」ではなく、リアルな「スポーツ」を描いているのが、まさにアニメ版『はねバド!』なんです。



 以前ハマったスポーツ作品をあげるとしたら『黒子のバスケ』とかでしょうか。ただしどちらかというと私はキセキの世代側の方に共感していました。ただ原作が少年漫画ということもあり、少年漫画らしい展開もありましたが、それでもまあ十分面白かったです。


 他にも様々なスポーツ作品に触れてきましたが、しかしどの作品もやはりスポ根要素があって、心から楽しめませんでした。


 ですが今回、本当に求めていたスポーツ作品とは、お友達パワーで勝負するのではなく、高い能力と才能で本気の勝負をすることだと気づきました。


 どんな競技でも、戦うのは本人です。本人が自分の力で立ち向かうのが挑むということではないでしょうか。仲間の絆とか支えてくれている人たちの応援などは、あくまでも副次効果、スパイスとして機能するべきであって、本質ではないはず。


 正直、『はねバド!』のような本格スポーツ作品は媒体関係なくもっと増えてほしいです。



 最後になりますが、私は別にスポ根を否定したいわけではありません。スポ根でも面白いものは面白いです。そこは変わりありません。


 しかしミステリージャンルに本格ミステリーがあるように、SFジャンルにハードSFがあるように、スポーツ作品にも「本格スポーツ」や「リアルスポーツ」などといったサブジャンルが発展してもいいのでは?と思います。そしてその可能性を生み出したのが、まさにアニメ版『はねバド!』なんです。



 アニメ版『はねバド!』は原作『はねバド!』とは違う物語となっています。現在放送中のアニメ版『はねバド!』が今後どのような展開になり、どのような結末を迎えるのかを楽しみにしています。



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