魂の供養
@hushimero
炎の台座
その部屋の中央には青白く燃えさかる炎が置かれた台座があった。部屋の広さは皆目見当がつかず、部屋の端の方は炎の明かりが届かず黒に染まっていた。
青炎の台座より少し離れたところにうごめく人影が二つあった、一人は兎のかぶり物をしたスーツ姿の男で、もう一つの影は兎の男によって担架のようなモノに縛り付けられるジーパンにTシャツを着た男だった。
担架の男が言った。
「お前本当にこんなことして良いと思っているのか、今までこの体を動かしてきたのは俺で、お前を生んだのも俺だお前は自分の生みの親を殺そうとしているんだ、どういうつもりかは知らんが今すぐこの縄をほどけ」
兎の男は言った。
「生んでくれたことは感謝している。今まで体を動かしてくれていた事もな。だが、お前は気持ち悪すぎる。行動も精神構造もお前が存在しお前が行動するたびにこの体は悲鳴を上げ心を病ませ人から愛されなくなっている。お前はもう矯正不可能なほどに拗れてしまっている、気持ち悪さが骨の髄まで染みついてしまっている。もう無理だ俺はお前を殺しこの体は俺が運用する」
「俺は誰にも愛されなかった。俺を愛してくれと願って何が悪い。俺を見てくれと願って何が悪い俺は誰からも愛されたいと思って行動しているし、この心もそう願っている」
「その通りだこの心はそう願っているし、俺もそう願っている。だがケンイチお前は渇望しすぎた。それは気持ち悪いんだ。このままでは誰からも愛想を尽かされる事になるお前は自分を変えるチャンスがあった。今までふしめろとしてずっと行動してきてお前は頭の片隅で泣いていたな? ふしめろばかり愛されて本当の自分は愛されないんだと。それを哀れに思って俺はお前のために居場所を与えて行動範囲を大きくしたその結果がこれだ。すべてがすべてお前が悪い訳ではないが、少なくとも今の精神状態の原因は完全にお前だそして今までに取ってきた行動は大切に思っていた友人を減らす事へと繋がった。お前はこの体と心に害をなす存在だ。大事に至る前にここで消えて貰う」
ケンイチと呼ばれた担架の男はなおもわめきもがき続けたが兎の男は何も言わず担架ごと炎の台座にケンイチをくべた。炎はくべられたモノを燃やし尽くそうと火勢を増して踊った。
「俺を消しても亡霊のように俺はお前の頭に居座るぞ。こんなことをしても無意味だと思わないのか」
「いつか俺に恋人が出来て、愛されるようになったらお前を供養してやる。それまで二度と姿を現すな。亡霊が出たらそのたびに焼いてやる今までご苦労だった。もう休めもう眠れ」
そう言われた後ケンイチは叫びももがきもしなかった、ただ兎の男を恨めしそうに憎らしそうににらみつけたまま灰になり消えた。
兎の男はケンイチが消えたのを確認すると、どこからか現れた扉に向かいそして振り返らずに部屋を出た。
炎は落ち着きを取り戻したかのようにまた青白く燃えさかっていた。
魂の供養 @hushimero
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