【歌】痛みは知恵によく似ている

田中ビリー

【歌】痛みは知恵によく似ている

砂漠の絵柄の切手を照らす、ランプのオレンジ、

揺れる夜明けの白い波、懐中時計が指す午前、

目覚めた鳥が泣き声の、色づき落ちて踏まれた葉、

裸の森は眠ったふりを続けてた、褪せた印字のテグジュペリ、


肌を切る風、昨日よりも深い蒼、錆びたブリキのおもちゃの兵が、

夢のなかで吹いていた、鼓笛にも似た一縷の想い、


水面に弾ける光はまるで、コルクを抜いたばかりのボトル、

シャンパーニュの金のブドウ酒、

凍りついた湖は、やがてひび割れ分かれるだろう、

逆さにした世界地図のパズルみたいに、


雲のなかに紛れてく、セスナの腹が金色に、

惑う星をかすめてく、鳥のように飛べなくなる日、

そこまでをも真似た鉄、


焚き火にくべる痩せた薪、頬張る焦げたウインナー、

過ぎゆく時と忘れたはずの、日々がかすめる午前か午後か、

38時の音もない雨、棄てられた銃火器は、

それに打たれていても泣かない、


吸い殻、ボトル、そのなかには船の模型、

瓶詰め、オリーヴ、狙う嘴、ノートの切れ端、走り書くのは、

「痛みは知恵によく似てた」

「痛みをせめて知恵とできれば」

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