5-5 失楽園の物語
A:愛や結婚と密接に関係するのがセックス(性行為)だよね。
よむ子:愛は磁石だものね。
A:そう。愛は磁石のように、向き合う男女を1つにする。その肉体的な交わりをセックスという。
『神との対話』には、セックスについても書いてあるんだ。
よむ子:セックスも……。
A:よむ子さんはクリスチャンだったね。
よむ子:そう。
A:じゃあ、聖書の「失楽園の物語」は知ってるよね。
よむ子:聖書の勉強で習ったわ。
A:どんなふうに習ったの?
よむ子:アダムとエバは、神から「取って食べてはならない」と言われた木の実を食べて罪を犯し、エデンの園を追放された、とおそわった。
A:そうだね。
旧約聖書の『創世記第2章』には、人間始祖の堕落の話しが書かれているね。キリスト教(特にカトリック)の「セックス観」は、この話しをもとにしているんだ。
それをまとめてみるからね。
よむ子:はい。
A:キリスト教では、セックスは邪悪な行為とみなしている。その根拠は、旧約聖書『創世記第2章』に書いてある人間始祖の堕落にあるんだ。
その話しを箇条書きにしてみるよ。
その1 人間始祖の男性アダムと女性エバは、エデンの園で、神から「取って食べてはならない」と言われた善悪を知る木の実を、ヘビにそそのかされてエバが食べ、その後アダムに与えてアダムも食べた。
その2 「取って食べてはならない」という神の戒めを守らないという罪を、アダムとエバが犯し、それが人間の罪のもと(原罪)となった。
その3 人間堕落の首謀者は、女性エバだ。
その4 アダムとエバから生まれた人類すべては、生まれながらにして人間始祖の原罪を受け継いでいる。
その5 その原罪を贖う(あがなう)ために、神から遣わされたイエスキリストを信ずることによって、人間の原罪は許され、天国に入ることができる。
ここまではいいかな?
よむ子:うん。これは教会で習ったから知ってる。
A:この失楽園の話しを根拠にして、キリスト教のセックス観がなりたっている。
つまり、セックスは原罪を持った人間を産み増やす邪悪な行為で、生殖を目的とする以外には、セックスは避けなければならない、としているんだ。
話しはそれだけではないよ。
よむ子:まだあるの。
A:セックスは邪悪な行為だから、カトリックの司祭つまり指導者は、独身でなければならないんだ。
さらに女性のエバが、堕落の張本人で最も罪深い。だから女性の司祭は認められない。女性は聖職者にはなれないんだ。
よむ子:だからカトリックの偉い人たちは、みんな男性なのね。
A:そういうことだね。性に対する偏見、つまり女性蔑視がここから生まれたともいえるよ。
もっと驚くことがある。
キリスト教指導者のうちで、「神の国が築かれるのは、すべての者が独身生活を送って人類が滅亡したあとだ」という極端な主張をした者も、歴史上にはいたんだ。
よむ子:人類滅亡のあとに神の国?
A:もちろんこれは、色々ある見解のうちの1つだけどね。極端なものは、こんなものまであるということだね。
このように、キリスト教では、「セックス」を邪悪な行為ととらえているんだ。
〈つづく〉
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