第1話 または302-2

しばらくしてから階段を上った俺たちは、絵本なんかによく出てくる城みたいなこの建物の一室で、話をしていた。

「なあ、あれはやっぱり・・・」

「死んでる。」

「疑う余地もなく、即死だろうな。」

はぁっと息を吐く。

「なあ、お前らは、何でそんなに余裕なんだ?」

「慣れてるから。」

は?

「慣れてるって・・・」

「今はそれより、これからどうするの?」

「えぇ・・・、ま、まあ話したくないか。」

そうだな、さっき言っていた祝福。

「まずは祝福って奴を確認してみよう。」

心で祈ると、すぐに思い浮かんだ。

「育つ力・・・」

えーっと・・・最初なんもできなくね?

「ミノア、なにか貰っていたか?」

「うん、他者を強める力だって。」

「それで、スーゴは?」

「まさか私まで貰えるとは思ってなかったな。導く力だそうだ。」

これは、まるで俺たちが組むことを狙ったみたいだ。

「さて、カズヤ、私達のことが気になっているのだろう?」

「あ、あぁ。」

「すべてを語ると長くなる。故に、簡潔に答えよう。」


「私達は異世界人だ。」


「君たちにとっても。」

まったく、今日はとんでもない日だ。

けれど、不思議と納得はする。

そもそも人型のロボットができたなんてきいたことないし!

「まあ、そのへんはいいや。」

そんなことより。

「まずここになにか残ってないか探そう。」





結局見つけられたのは、剣だけだった。

「なあ、本当に帰る手段があると思うか?」

「私はないと思う。」

「恐らくないだろう。」

「・・・理由を聞いていいか?」

ミノアは少し悩み、こちらを向いて。

「私は世界をいくつも渡ってきた。」


「渡ってきた世界は、選べたことなんて、一回しかない。」


「無作為に渡るのは、そう難しいことじゃない。」


「だけど。」


「選ぶには、そこの物が必要で、すごく大変な事なの。」


「だから。」


「きっと嘘。」

あの時の言葉。

提示する。

戻すとかじゃなかった。

たくさん読んできたテンプレにも、よくある設定。

けれど。

「じゃあ、俺たちはどうしたら・・・」

いざその状況になった時、何も思いつかない。

「ならさ。」

彼女達はもしかしたら、俺が思うよりも大人なのかもしれない。

「まずは目先の、この世界を救おう?」

見た目通りじゃ無いだけかもしれないけど。

「その中でも後でも、それから考えればいいよ。」

それでも、信じられるだけのなにかがあったんだ。

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数多の世界を渡って フレイクス @fraiks

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