第2部

プロローグ または302-1

始まりは、誰かによばれた事だった。

気づくとそこは見慣れた電車じゃなくて、見知らぬ部屋で。

窓がなく、階段が見える。

どうやら俺以外にもここに連れてこられた奴がいるらしい。

周りにはサラリーマンと女子高生、それから子供もいる。

あとは、ローブ姿の数人と、機械。

えっ・・・人型の・・・機械・・・!?

その機械に驚いていると、ローブの一人が声をかけてきた。

「異世界の方々、どうか、我々の世界をお救いください。・・・身勝手なのは重々承知です。しかし、我々に残された道はこれしかないのです。」

その事を聞いた女子高生の一人が、声を荒らげる。

「はぁ!?ウチらにはかんけーないじゃん!っていうかー、なにこれ、ドッキリ?早く帰して欲しいんですけどー」

うわぁ、と思いつつも、俺はもしかしてという思いに、胸を高鳴らせる。

「てかー、早く帰らせてくんない?今日これからデートなんですけどー」

「本当に申し訳ない。君たちを今返すことは出来ない。だが、返す手段の提示はできる。そのために、魔王を倒して欲しい。」

「テンプレキタコレ、これはつまり異世界召喚!やった、コレで俺もあんな世界とおさらば出来る!」

サラリーマンの男の一言に、言うのかよと思う。

まったく、一言も喋らない子供を見習えっての。

その子供はどこかの外国人みたいだけど、あいにくその隣の機械が気になってしかたねえ。

「あなた方には神の加護が与えられています。」


「それは願えば分かると伝えられています。」


「お願いします。我等に救いを・・・」

それを言うと、ローブ姿のやつらの姿が消えていった。

喚き立てる女子高生と、多分願ってるサラリーマンをよそに、子供に話しかける。

「なあ、どう思った?」

「・・・正直、変。」

「ふむ、君はなかなか理性的だな。」

その声が機械から発せられてることに気付くのに、少しかかった。

「ああ、すまない、君たちには馴染みがない姿だったか。」

・・・機械に気を使われた!?

「私はスーゴ、よろしく」

・・・えっと・・・

「お、俺は和也、大東和也だ。よろしく。」

「私はミノア、よろしく。」

「そ、それでえーっと・・・」

「ふむ、ふむふむふむ!なるほど、これが力なのか!」

サラリーマンが叫ぶ。

そちらを見ると、サラリーマンは幅の広い剣を持って、女子高生の傍にいた。

そして、気付く。

”それ”は既に振り下ろされ、女子高生が二つに分けられていること。

”それ”をニヤニヤと見るサラリーマンの姿に。

「・・・は?」

何をしてるんだ?あいつは・・・

「ふ、ふふ、ふはひははははははははひはは!」

その光景をどこか場違いに見ていて、 けれどもまったく理解出来なくて。

嗤うサラリーマンの口が、ただただ目に焼き付く。

ふと、気付いたように赤いサラリーマンがこちらを見る。

「なあ、君たち。」

それはどこか、まるでいつもの教師が生徒に尋ねるように、あるいはその辺で道を尋ねるように。

「君たちも帰ろうなんて思っているのかい?」

「・・・いいえ、帰る意味など無いもの。」

「そっかぁ・・・じゃあ、いいや。」


「俺は帰るつもりなんて、ないから。邪魔するなら、どかすよ。」

そう言って、階段を上っていくサラリーマン。

俺はその間、動けなかった。


あとから聞いたんだが、この時俺はただただ頷いていたらしい。

・・・いきなりハードすぎるだろ。

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