エピローグ または264-2

「はじめに言っておくが、私は今はSeek the Way to Godsとなっている。我等が創造主とはいえ、理解して欲しい。」


スーゴのかけた最初の一言は、そんな言葉だった。

いや、名前を間違えられたのだし分からなくもないのだけれど、最初の一言としては合わないと感じる。

それは彼女も同じだったようで、戸惑いが見て取れる。

「スーゴ、慌ててる?」

ついつい、悪いとは思うけれども、彼女と目を合わせ、どちらからとも無く笑ってしまった。

「む、二人して酷いじゃないか。」

憮然とした声で抗議するスーゴに、ごめんごめんと言いながら、しばらくして、息を整える。

「それで、えーっと、あなたがスーゴのお母さん?」

「え、ええ。」

「スーゴ、見つかって良かったね。」

「少々拍子抜けしたけれどもな。」

そして少しだけ躊躇し、しかしすぐに。

「我等が創造主よ、色々と話したいことがある。・・・出来れば話せる場が欲しいのだが。」



それから私たちは、彼女のあとについて、彼女の家へと向かった。

その道中で軽く自己紹介をし、彼女がミキという名前だと知った。

ミキの家に着くと、そこには同じような同じような丸い物がいくつもあり、それが家だという。

スーゴに後で聞いたところ、それらの家々から見ていた人たちはみな、創造主たちだそうだ。

とにかく、机を挟んで座ると、待ちきれないようにスーゴはすぐに話しかけていた。

「創造主よ、我々はようやくあなた方を見つけた。」


「もしそれが愚行ならば謝罪する。」


「しかし、我々は逢いたかったのだ。」


「故に、今この幸運を感謝している。」

一息に喋ったスーゴは、そしてミキの言葉を待った。

ミキはどこか暗く、しかし意を決するように話し始める。

「・・・まず、謝らせてほしいの。」


「あなた達だけを残して、ごめんなさい。」


「あなた達に会えたことが嫌な訳では無いわ。」


「でもね、いつからか私は、記憶の隅に追いやっていた。」


「そうやって罪を忘れようとさえしてたの。」


「だから、あなた達には私を責める権利がある。」

そう言うと、口を閉ざしてしまう。

私はスーゴと顔を見合わせると、キョトンとした顔の私が映る。

そして再び彼女を見て。

「ミキ、それに謝罪する事なんてある?」

本心からの言葉だった。

「創造主よ、我々はその可能性さえ考え、それでも逢おうと決めたのだ。」


「故に、その謝罪は不適切だ。」


「むしろ謝罪すべきは我々にある。」


「わがままで逢いに来てしまっているのだから。」

それからの会話は、どちらも譲らない一点張り。

お互いがお互いを思ってるのだから、もういいじゃないと思ってしまう。

そして、その会話がお互い受け入れて話がついたとき、スーゴが何かを取り出した。

「創造主よ、我等に声を届けてほしい。それでこそ私の使命を果たせる。」

そしてスーゴはこちらを向き。

「さて、ミノア。」

・・・分かっていた。

スーゴが出会えたのだから、世界を渡る意味など無い。

そう思っていたから、その後の言葉に、少し理解が遅れた。

「使命を果たした。故に、次の世界へ行こう。」

「・・・え?」

「ん?我々は遂に出会えたのだ。」


「故に我々との繋がりを渡した。」


「あとは友と行くだけだ。」


「なんだ、ミノアは忘れたのか?」


「私は創造主に主張した。」


「だからこそ、ここからは私の意思だ。」





「それじゃ、ミキ。」

「ありがとう。・・・本当に、本当に。」

渡されたお弁当を格納し、別れを告げる。

そしてしばらく離れてから、ミノアが私に尋ねてくる。

「こんなに短くてよかったの?」

「永く居ても一歩が踏み出せなくなる。」

世界はまだまだ沢山ある。

「ミノア、君との時間は永くて、されど短い。」


「さあ、つぎの世界へ行こうじゃないか。」




世界を渡る彼らは、まるで世界に溶けるように、その場から消える。

けれども。

彼らは確かにいたのだ。

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