第118話 母が倒れた3
実は家を出る前に一度、病院の宿直の先生から電話で母の状態の説明が軽くあったのだ。
義父に説明しても、良く分かってないようだから娘である私に説明したいのだと言う。
義父は耄碌じじいでは無い。
それなりに頭もいいので、医者の専門的な話にも付いていけるだろうし、分からなければ臆せず質問をする人なのだ。
どうやら、義父は母が倒れた事で取り乱し過ぎて、その姿が他人からは話しても理解できないだろう人と認定されたようだ。
先生からの説明はこうだった……母はもう眼を覚ます事は無く、数時間以内には亡くなるだろうと。
なので、今後命の危険が起きた時に延命処置をしますか?と問われた。
正直、私がどうしたいというより義父の意向を優先してほしかったので、その旨を伝えると義父はもう延命処置はしなくていいと言う。
これ以上、管だらけになったり喉に穴を開けるなんて可哀想だと。
私もそれでよかった。
そういうやり取りがあったので、余計に私の到着前に母が亡くなっている可能性はあるだろうと思っていた。
なので『亡くなった』という言葉を聞く覚悟をしながら、病院に着いたと義父に電話するとあの言葉は言われず、入り口まで迎えにきてくれると言う。
すぐに合流し、説明は殆ど無いままに病室に向かった。
病室に入ると、呼吸も安定している様子の母が寝ていた。
けれど義父は病室の入り口付近から入ろうとしない。
一緒に付いてきた看護師さんが
「どう?娘さんが一緒でも無理?」
と義父に話しかける。
どうやら義父は母の姿を見るのが辛くて病室に入れないらしい。
まぁ感受性の強過ぎる義父の事だ、そういう状態になっているのはすぐに理解出来た。
状態は落ち着いて見えるようだが、やはり後数時間なのだろうか。
その時がくるまで、病室で過ごすのかと思っていたら、居た堪れない義父が
「こんなところにおっても仕方が無い、こっち行こう」
と私を待合所に連れて行った。
まぁ私も正直、ずっと病室にいるにしてもどうしていいか分からないし、徹夜で長旅をしてきたのだから少し落ち着きたいのもあった。
待合所はソファーとテレビがあったが、義父は一晩中そこで一人で過ごしたと言う。
とにかく最新情報を聞かねばと、ソファーに落ち着いたのちに義父に尋ねると私が電話で当直医に受けた説明と同じだった。
じゃあここでいつどうなるか分からないのを待たないといけないのだなと思っていたところに母の友達がやってきた。
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