第117話 母が倒れた2
当面の必要な物を準備して2時過ぎになったものの、始発で出るならばもう2時間ぐらいしか無い。
しかもこういう時なので、眠れる気もしない。
というわけでリビングで、最終的な忘れ物が無いかの準備と今後の事を考えて過ごした。
もうこんな事をしていないで、すぐにでも出かけたいのに始発が出るまではどうにも出来ない。悶々としながら、もちろん一睡も出来なかった。
始発に乗って、新幹線に乗るために東京駅に行く。
始発で行ったので、まだ新幹線の改札も、当日券の販売所は閉まっていた。
また足止めを食らったような気分になりながら、しばらくの間開くのを待った。
当日券売場が開いて、注文すると通路側しか空いていないという。
名古屋で降りるので元から通路側にしようと思ってはいたが、窓際は空いていないほど始発の新幹線は混んでいた。
名古屋までの2時間弱を眠ろうと思ったが、寝過ごしたらいけないと思うと眠れない。
もう、とにかく母が運ばれた病院まで行くまで休む事は考えなくてもいいとそのまま過ごした。
名古屋に着いたのが8時頃だったのだが、そこから病院までは名鉄電車で移動して、更にバスかタクシーに乗らなければいけない。
名古屋駅をご存知の方なら想像つくだろうが、あそこは新幹線が発着するJRの名古屋駅と私鉄である名鉄名古屋駅までは少々距離がある。
当面の荷物を抱えて、その距離を通勤ラッシュの人並みを抜けるようにして移動して、もうその時点でかなり体力を消耗してしまった。
名鉄には特急列車があり、JRでいうところのグリーン車のような別料金を払えば座れる車両に乗れる。しかもグリーン車と違い、指定席制なので特別券を買えば必ず座れるのだ。
駅の数で言うなら、3駅ほどだったがあまりに疲れていたので360円払って指定席で向かった。
S兄ちゃんが救急車で運ばれた時は、すでに無くなっていたのに義父は私が到着するまで亡くなったとの知らせ入れてこなかった。
義父いわく、知らせたところで帰省の足を早められるわけでもないし、むしろ早めて事故に遭うような事があってはいけないし、向かっている最中に伝える必要は無いと思った、との事だった。
確かに今回も、知らせがあったからと言って、電車が早くなるわけではない。
その時の経験があるので、母がこの移動中に亡くなっていたとしても、私が到着するまで知らせはこないのでは無いかと思っていた。
なので世に言う、死に目には会えない可能性はあるなと思っていた。
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