第115話 先進的な母親
母は文化的に進んでいる人だった。
そして綺麗だった。
母は私を産んだのは遅めだったので、周りのお母さんたちより年上だったが、授業参観では一番美人に見えた。
昔の母は岡田奈々(女優の方)似だったのだ。
幼稚園の頃は愛知県の尾張旭市(名古屋の西隣辺り)に住んでいたのだが、ちょくちょくと栄(名古屋の繁華街)に連れていってくれては、グラタンを食べさせてくれた。
まだグラタンが一般的では無い頃だ。
今のロコモコぐらいの立ち位置だろうか、名前は知られているがあまりみんな頻繁には食べないというような感覚の昭和50年代初期だ。
最寄駅の側にサンリオ系のファンシーショップがあったため、流行り始めたキティちゃんや、その他のサンリオ商品も私によく買い与えた。
そんな母が特に先進的だなと感じたのは、タンポンを使っていた事だった。
タンポンは昭和初期からあるらしいが、逆に昭和中期にナプキンの良いものが出回りだしてからはあまり使われないものだったように思う。
当時はコンパクトなのがウリで、マスカラ容器のようなものに二個入れて持ち運べるのがウケて、その当時の母のような先進的な女性たちが使っていたようなのだ。
そんな母だったので、私の初潮前にはそのタンポンの事も教えてくれた。
私が使うぐらいの時代から、アプリケーション付きが発売されたので、より私は抵抗無く学生時代から使っていた。
だけど周りの子たちは『タンポン=進んでいる子が使う物』と見ていたようで、スクールカースト最下層の私が持っていた事で上位の子たちの態度が変わり、私に教わりに来る子まで現れた。
そして母は、リキッドファンデを使うのも早かった。
だけど使い方や管理方法が雑だったのだろう、母のファンデーションスポンジはいつも生乾き臭がしていた。
バブル期の前髪のトカサも、すでにおばさんだったにも関わらすやっていた。
そんな母に育てられたからだろうか、私も歳はとっても新しいものには興味があるし手を出したくなる。
ちなみに今でも母は、私よりも文化面で先をいっている事がある。
その好奇心は嫌いじゃない。
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